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息子から届いた、思いがけない金メダル
雪景色の北大を散策し、宿に戻ると、ホテルの前が騒然としていた。消防車、パトカー、救急車が並び、交通規制がかかっている。
近くにいた消防士の方に聞くと、ホテルの別館1階にある居酒屋でボヤがあったらしい。幸い大事には至らなかったとのこと。とはいえ、ロビーに入ると焦げ臭い匂いが立ち込めていて、改めて「こんなこともあるんだなあ」と思う。
しかし、その驚きはまだ序章にすぎなかった。
部屋に戻ると、夫からの電話があった。
「X見た? ⚪︎⚪︎(息子)が金メダルとったよ」
遠征先のトラックアジア選手権で、息子が個人種目の優勝を果たしたというのだ。急いでXを開くと、表彰台の中央に立ち、チャンピオンジャージを身につけた息子が、金メダルを手に微笑んでいた。
その顔は、最近見たことがないほどリラックスしていて、満ち足りていた。
なんだか、泣けてきた。
全国大会での表彰台経験も少ないなか、いきなりナショナルチームに加わり、アジア選手権という大舞台に立つことになった。どれほどのプレッシャーがあっただろう。それでも、彼は勝った。
高校の監督からは「雑草魂」という言葉をもらっていた。どんな環境でもたくましく根を張る、その強さ。息子はプレッシャーさえも力に変えて、乗り越えたのかもしれない。
そんな彼を、現地で見守ってくれた人がいた。
親も応援に行けないなか、その監督の先生が、いつの間にか現地を訪れていたのだ。息子自身も知らず、会場で突然先生に出会い、驚いたという。
先生が自撮りしてくれたと思われるツーショット写真。そこには、感動ひとしおの表情を浮かべる先生と、晴れ晴れとした顔で笑う息子が写っていた。
本当に、息子は周囲の人たちや環境に恵まれてきた。
そして、今も。
改めて、感謝の気持ちが湧いてくる。
翌日以降も、ジャパンチームは連日レースに出場する。
ジュニア選手の息子の周りには、大学生以上のエリート選手、
コーチ陣、チームドクターや理学療法士、メカニックの方々などがいる。
今まで関わることのなかった世界の人たちに囲まれ、彼はどんな時間を過ごしているのだろう。
想像もつかない。
でも、だからこそ——
どんな顔になって帰ってくるのか、心から楽しみだ。