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息子の挑戦、周囲の支え、そして感謝
高校2年の息子は自転車競技をしている。
この2月、トラック競技アジア選手権大会に出場することになった。
家ではゲームばかりしていて、自転車のことを訊いても「別に」
とそっけない返事。しかし、そんな彼も外ではがんばっているようだ。
高校1年生の頃はロードレースでタイムアウトばかり。
完走すら難しい状態だったが、経験を積むうちに少しずつ成長し、
レースでも上位に食い込めるようになってきた。
親には縁のなかった世界へ
親である私たち夫婦は、スポーツとは無縁の人生だった。
けれど、息子が競技を続けるなかで、
「アスリートってこういうものなのか」と
と少しずつ理解できるようになってきた。
そして、レース観戦のために全国各地を訪れるようになり、思いがけず
旅を楽しむ機会も増えた。
「この土地の名物は?」
「どのあたりが観戦に最適?」
そんなことを考えるのも、今ではすっかり習慣になっている。
「居場所」が生んだ変化
そもそも息子が自転車を始めたのは、家や学校以外の「居場所」が
必要だったからかもしれない。
兄が通っていた宇陀サイクルレーシング(宇陀サイ)に顔を出したことが
きっかけで、彼もチームに入れてもらうことになった。
家では親とぶつかることが多かった。
器用でスマートな姉や兄の存在に、どこか圧迫感を覚えていたのかもしれない。
そんな彼であるが、宇陀サイでは監督の人柄や、地元の人たちとのつながりに
よって、のびのびと自転車に親しみ、遊んでいたようだ。
チームの雰囲気や自転車競技そのものが息子の気質に合っていたのだろう。
競技は続けるほどに面白くなり、やがて彼にとって欠かせない
「居場所」になっていった。
支えてくれた人たち
宇陀サイは中学生までのチーム。その後、息子は自転車部のある高校に進学し、監督の先生やチームメイトにも恵まれ、練習を続けている。
さらにこれからは、全国のトップレベルの選手たちと切磋琢磨していくの
だろう。
昨年10月、四日市でのロードレースの後、宇陀サイの監督とお話しする機会があった。そのとき改めて感じたのは、息子は本当によい環境で育ててもらったのだということだった。
監督の指導方針は、成績重視の厳しいトレーニングではなく、
「まずは自転車を楽しむこと」
「小中学生の間は自転車をコントロールするためのトレーニングに集中する」
ということ。
そのおかげで、息子は今、「伸びる時期」を迎えているのかもしれない。
感謝の気持ち
彼がひとつのことに打ち込んで手応えを感じていることは喜ばしい。
私たちでは持て余してしまうエネルギーを持った息子。
これまでたくさんの方々が支えてくれた。本当にありがたい。
子どもを育てるのは、親だけではない。
関わってくれたすべての方々に、心から感謝します。