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2024/06/24 天売島診療所

このたびの北海道旅行は、そもそも天売島行きが目的であった。

私たち夫婦が研修医だった頃、お世話になった外科の先生が、2年ほど前に天売島診療所の所長として赴任した。旅行がてら、そのO先生に20年ぶりに会いに行くことにした。

この春に、O先生に訪れたいと連絡した。私たちが行きたい6/22、23の土日、彼は同窓会で島外に出かけてしまうとのこと。残念がっていたら、彼は、私に土曜〜月曜日の3日間、診療所の医療を担当してくれないかという。
相変わらずの強引さだなあと笑ってしまった。

3日間も島で代診していたら、旅を楽しめなくなってしまうので、さすがに断ったが、月曜日だけ代診してねと言われたので、まあ1日ならと引き受けた。
O先生は月曜日午後に、診療所に帰ってくるとのこと。

天売島へ

昨晩、羽幌に泊まり、朝8:00発の高速船で天売島に向かう。

写真はフェリー。
高速船はフェリーよりも早くて、島まで1時間。

今日も天気は雨。高速船は結構揺れて、酔いやすい私は船内で読書できなかった。トラベルミンを飲んでおいてよかった。
隣の夫はまったく平気そうでうらやましい。


島に着くと土砂降りの雨。診療所の看護師さんが待っており、車で島唯一の診療所へ。


天売島診療所


島の診療所


診療所について9:00過ぎ、二人の患者さんが待っていた。
事務の女性と挨拶してすぐ、診察室へ。お二人ともいつもの薬が欲しくて来院。

60歳代の漁師の男性と、やはり60歳代の女性。女性はいつもより体重が2kg減っていた。この季節は漁に使う網作りが大変で毎年痩せるのだそう。


患者さんはポツリ、ポツリと来るので、合間に診療所について、島の医療•福祉介護についてなど、看護師さんに教えてもらう。


島の医療•福祉介護


島の人口は最も多い時は2,300人、今は270人
•島の子供 高校生 15名  中学生以下 5名
高校は定時制のみ。14名は島外から来ている。ほとんどの島の子は、高校から本土へに通う。
•高校生まで医療費無料になった。

•島に老人介護施設なし。入所が必要な人は本土の施設に行くので、この島には寝たきりの高齢者はいない。
•地域包括支援センターもないので必要な時は羽幌のセンターに相談。

•薬は院内処方で済まなければ、院外処方になる。島には薬局がない。
処方箋を羽幌の薬局にFAXで送り、処方薬は翌日船便で届けてもらう。

診療所でできる自前検査は心電図、レントゲン、尿検査のみ。血液検査は島外に外注、結果は翌日FAXで来る。欠航日には提出できない。

•心エコー、腹部エコー、血管エコーは月に数回、東京から所長の知り合いの検査技師に来てもらい検査する。

•緊急搬送が必要な場合
 ヘリコプター(旭川日赤病院ドクターヘリ、道防災ヘリ、自衛隊ヘリ)
 (海上保安庁巡視船、漁船)
  ドクターヘリが来てくれると所長が同乗しなくていいので助かる。
  嵐の時や日没後はヘリは飛べない。

•主な連携病院
道立羽幌病院、留萌市立病院

遠隔診療システム
連携先
船で15分離れた焼尻島には医師がいないので、このシステムで遠隔診療することもある



島を1周

患者さんが5名来て帰り、11時30分。
患者さんが来たら、電話で呼んでもらうことにして、診療所の車を借り、
島を一周することにした。


診療所の車。パワーウィンドウでなく、ノブを回して開閉。
懐かしい。


天売島マップ
1周10km、徒歩でも3時間で回れる


ウミネコがたくさん
ニャアニャアという鳴き声で賑やか


奥まで行くと、鳥版サファリパーク状態
徒歩や自転車で行く時はフンをもらうことにも多いらしい


ウミネコのヒナ
車の前をよちよち歩いていて危ない。
珍しいウトウやウミガラスは
夕方にならないと見られない


雨、風で写真を撮るのも大変。見晴らしも良くなく残念。

診療所付近に戻って来て散策。


天売海鳥研究室
道立 天売高校。定時制で授業は夕方から。昼は皆アルバイトしている。
漁師の手伝い、給食センター、旅館、郵便局など


島の食料品店
川口商店


カフェ&バー B-port
これでも営業中

こちらのお店で、お昼ごはんをいただく。

チキンカツカレー900円、ウニの生パスタ1,800円。両方とも美味しかった。

漁師の男性が一人、もう一人地元の男性が入ってきて、ランチのチキンカツカレー食べていた。

天候が悪くてウニ漁に出られない話をしていた。
天売のウニは、6月下旬から、2か月しか獲れないらしい。

玉ねぎみじん切りがたくさん入っていて、
少し酸味があり、おいしい。

おなかいっぱいになって診療所に帰った。今まで同行していた夫は、海の宇宙館に行った。

「海の宇宙館」
天売島の海鳥はもちろん、季節の花々や島の暮らしなどの写真が館内に並ぶ。施設の設置者、自然写真家・寺沢孝毅が撮影したものだ。世界有数の海鳥繁殖地であるにもかかわらず、島にはかつて、それを紹介する場所がなかった。それで寺沢が、私費を投じて会社を設立してつくったのが海の宇宙館だ。

海の宇宙館HPより

http://naturelive.jp/museum.html


私の方は、午後は患者さんが二人受診され、終了。

15:00に所長のO先生が帰ってきて、島外の病院に紹介入院していた患者さんを診察していた。
退院して島に帰ってくる船に、たまたま所長夫妻も乗っていて出会ったらしい。

今日受診された7名の患者さんのうち、症状があっての受診は3名、薬の処方希望は4名。症状は、喉の痛みや鼻水といった軽いもの。外傷や重症の方はいなくてほっとした。

たまたま、診療所のトイレが壊れてしまって、修理の方が来た。尿検査もできないと困っていたが、なんとか使えるようになった。

お疲れさまでしたと言い合っていたら、海の宇宙観に行っていた夫が帰ってきたので、一緒に今夜の宿に送ってもらった。


泊めていただいた萬谷旅館からの眺め
すぐ前が海


宿にて所長夫妻と夕ごはん。

魚づくし、どれも新鮮で幸せ。
右上:こんなに美味しいナマコは初めて食べた。

19:00になったら、鳥を見に行こうと思っていたが、会食が盛り上がって気づいたら暗くなっていた。


結婚して38年のご夫婦と、23年の夫婦でおいしい食事をしながら、いろいろな話が出て、夫婦って興味深いなあと感じた。(中頓別でも3組のご夫婦に出会ったし)

珍しい鳥たちは、また別の機会に見にくることにしよう。
こちらの方の記事をならって、リターンしたい。


天売島を出発 北海道ありがとう


翌朝の宿ごはん 
中央:何か白身魚の粕漬け、左上:ニシンの煮付け、 初めてのおいしさ


家でも海草のお味噌汁を作ろうっと


朝10:40の船で羽幌へ
港のウミネコ
また来るよ


4日間の北海道旅はあっという間だった。

大きくて平らな土地をたくさん移動して、壮大な自然を楽しみ、おいしいものを味わって、非日常を満喫した。代診して、少しは役に立てただろうか。地元の方たちと交流できたのもよかった。


まだ北海道には行くところがたくさん残っている。思ったより行きやすかったので、またちょくちょくお邪魔したい。



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