23.日本が独立・自尊の国になるために―カナリアを見よ!
小説家は時代の触覚です。自分では意識せずとも、いつの間にか世間に感化されてしまっている。
本日(令和6年10月27日)は衆議院議員選挙の投開票日だ。
時代の変わり目に、どんな小説が書かれるか、興味がありますね。
現代を映す小説を上げます。
カナリアとは、そう、鳥のカナリアである。ガス探知機なんかなかった頃、鳥かごにカナリアを入れて炭坑に入ったらしい。有毒ガスがたまっていれば、カナリアはそれを吸って死んでしまう。
学歴社会が行き過ぎれば、社会がストレスやプレッシャーに押しつぶされてしまうかもしれない。それらの圧力に耐えられない社員もでてくる。引きこもりになってしまう人も出てくるのである。
両親は10歳の時に離婚し和也は母親と暮らしてきた。大学受験に失敗、入社試験に失敗と自信を喪失してしまった。今は32才だが「引きこもり」になってしまっている。
どこにでもある話である。その母が息子を21年前に離婚した父のもとにと追い出す。
親父は息子に説教をしない。ここからが作家の腕の見せ所である。
「目に見えない圧力を炭坑のガスにたとえれば、ひきこもりっていうのはそのガスにやられたカナリアみたいなものだなって気がするんだ、父さんは」と意見を述べる。
「だけどね、和也。社会は百万羽のカナリアの警告なんかじゃ変わりっこないんだよ。働きもしないで文句たれて、親なんかに食わせてもらって、ひきこもってうつになったりしたって、世間じゃそんなの自己責任だって言われるだけだ。まずは自分の力で食っていくというのが、それこそ人生の基本なんだからな。
来年の父さんの定年まではここにいてもいいけど、その先は自活してくれ。……おまえはまだ三十二なんだから。父さんだって母さんだって年を取っていく。病気になったりもするかもしれない。
現実問題として、いつまでもおまえをくわせていくことなんかできないんだからな。背水の陣の覚悟で立ち直ることを考えるんだ……」(勝目梓・カナリア オール読物2020年2月号124頁以下)。
会社には、社長のお眼鏡にかなわない社員もいることだろう。会社の実情や世間の変わりようを嘆いても始まりません。
社長は、「カナリア」を観察して自己の行く末を自分で決することが大切なのです。
たまには、小説を読むのもよいものだ。
(つづく)