
2025年版 賃貸か分譲どちらが良いか?
これまでに友人から最も受けた不動産に関する相談は、「賃貸と分譲どちらが得か?」というものだろう。
2000年ごろが一番よく聞かれただろうか?みんながそろそろ住宅購入を検討し始める年頃だったからかも知れない。当時の自分の回答はもっぱら「賃貸」、というものだった。
なぜなら自分で分譲を買って大きく損をしていたからだ。
27歳で最初のマンションを田園都市線沿線に購入、その後売却し2回目は東横線の急行停車駅からバスアクセスの立地で新築マンションを購入した。2005年までに引っ越してしまったので計2回の新築マンション購入、売却を繰り返したが、その間の経済的な結果は燦燦たるものだった…
その頃はまだ新築マンションの供給が豊富にあった頃で、新築マンションを買っても住んだ瞬間に市場取引価格は購入価格から10%以上は下がる世界だった。さらに住宅ローンの金利は2.5-3.0%。その前提だと約10年後に売却した場合、売却損とそれまでに支払った利子、管理費、購入時諸経費などを合計すると賃貸と比べ3500万円以上の損失を出す計算になった(当然立地や物件によるが、今でも痛い思い出)。

この額はその間月の家賃30万円近くの部屋を借りていたことと同じである。しがない20〜30代のサラリーマンが30万円の家賃を払ったら、今のマーケットでもかなり良い部屋が借りられるはずだ。
ところが現在は状況が一変した。昨今の急激なマンションの価格上昇を前提にするのは危険だけれども、欧米と同等の年1.5%程度のインフレがコンスタントに続くとして、それと同じくマンションの価格も中古になってからも値上がりしていくと仮定してみる。(現時点では買った瞬間に1.5〜2倍になっているものもあるのだが、、、)
そして金利も上がっても1〜1.5%だろう。そのような少しモデレートな想定でも10年後売却した場合は諸々の支出を勘案しても10年間トータルでプラスになる。更に居住用だから税金の特例も充実してる。つまりタダどころかお金を少しもらいながら10年間暮らすこともできる。
最近はこのようにマンション市況が活況を呈しているためか、分譲しか選択肢にない方が多く、めっきり「賃貸とどちらが良いか?」という問い合わせが減ってはいるが、ここでもう一度整理をしておきたい。
2025年時点での分譲・賃貸論争の答えは「都心や再開発地域なら分譲、都心以外、またはライフスタイルにフレキシビリティを持たせたいなら賃貸」となるだろう。
分譲は良い物件さえ選ぶことができれば資産形成、インフレヘッジなどの資産防衛、老後の住まい確保という意味では有効であり、一方でライフスタイル変化によって住み替えする場合のハードルは上がる(売却などの取引ごとに取引価格の3%が取られる仕組みもどうかと思う)。また、当然ではあるが立地や物件選びは非常に重要だ。昨今の新築マンションは原価上昇に伴いより好立地、且つ意匠性の高いものへとシフトしているが、私がこれから新築マンションを買うとしたらそのような資産性の高い物件、またはHARUMI FLAGや幕張ベイパークのような特殊事情により市場価格と乖離がある新築物件を選ぶだろう(どちらも難易度が高いが...)。また、新築以外だと再開発地域の中古マンションも検討になりうる。この場合は物件探しやリノベーションに対する考えなどが異なってくるので別途投稿したい。個人的にも昨年品川区でリノベーションを行ったばかりである。

最初は五輪延期や交通などで不安を感じたが最近は晴海埠頭公園やららテラスなど休日に賑わいを見せている
一方、賃貸は居住期間などフレキシブルに選択ができる点がメリットだろう。ただし物件によっては分譲物件と比べスペックが低い(特に断熱性能は大きな問題と思う)、また高齢者になると入居審査のハードルが一気に上がることも懸念である。また、これまでは大きな懸念とならなかったが最近では定期借家契約の物件が多く、数年置きの賃料改定リスクも(分譲における金利上昇リスクと同じく)見込んでおくべきだろう。
以上の特徴を踏まえつつ、この緩やかなインフレ+低金利という前提で自分のライフスタイルに賃貸と分譲をどう組み合わせるのが良いかを選択するのが重要だ。
まずは個別のマンションが良いかどうか?などミクロな話ではなく、ご自身のライフプランを俯瞰的に見つめてみて、住宅に対してどのような考え方をしていくか判断するのが良いと思っている。不動産事業経験者かつCFP資格者という立場で今後色々とアドバイスできる機会を作れたらと考えている。
(なお居住用以外の不動産への投資を検討している場合は、考え方が少し違ってくることもあるので、それは別の機会に投稿してみたい)