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じっとしている時間が世界の解像度をぐっと上げてくれる
誕生日を迎えて、35歳になった。
今日は仕事帰りの夫がケーキを持って私の実家まで来てくれたので、珍しく両親と私たち夫婦(+赤ちゃん)で夕食を食べた。
昨年の誕生日の時期はライブとうつわ屋さんめぐりで一人旅をして、一昨年の誕生日は10年以上追いかけていたバンドの活動休止のお知らせを見て凹んでいたことは遠い過去のことのように思われる。
出産をしてからのこの一ヶ月は生活が一変した。
会う人に「フットワーク軽いね」「行動力あるね」と言われるくらい出掛けていたのに、人生で初めて1ヶ月も家の中で生活をしている。仕事をしたり、計画を立てて目標にアプローチしたりすることに楽しみを見出していたけれど、正直、先のことは想像つかなさすぎて手帳の中はまだ白紙のままだ。
気力だけを持て余していて、思うように時間も身体も動けないことにもどかしい気持ちが全くないと言うと嘘になる。けれど、変わらず仕事を続ける夫の姿を見ながら妊娠中に感じていた正体不明の喪失感のようなものは次第に消えつつある。
たしかに、目先の機会やチャンスはたくさん諦めてきたし、これからも制限は続く。
でも、私はこの一ヶ月の中で、自由に時間を伸び縮みさせられることに気がついた。
ここ1,2年の仕事をする自分の傍らに、目の前の生活にじっくりと向き合う自分もいて、遠い未来の自分がいまの暮らしを懐かしく思い出している姿も見ることができる。
本当に、びっくりするほど赤ちゃんの成長はあっという間だ。1ヶ月、いや1週間前ですら顔つきや動きに変化があるなんて!
成長はうれしいことだけれど、いまのこの姿が見れなくなることはどこかさみしい。こんな身勝手な感情と目の前の赤ちゃんとじっくり向き合っていると、時間の感じ方が全く変わってくる。
家から徒歩3分ほどのドラッグストアまで気分転換に歩いて行くときの柔らかな日差しや、換気窓から入ってくるひんやりとした風や、冴え冴えとした冬空をこんなに間近に感じられるのも、目の前の時間にじっくりと向き合っているからだ。今日は久しぶりにゆっくりと料理をしてみたら、いつになく頭がすっきりとしてとても良い気分だった。
外向きの接点は確かに減ったのかもしれないけれど、この暮らしの中で確かに世界への解像度は上がっていて、時間の味わい方が変わりつつあるのを感じている。
そんなことを書きながらも、いつ何時、赤ちゃんからお呼びがかかるかわからないので、表面的には追われているような生活でもあるのだけれど。
そんなわけで、35歳の目標は敢えて具体的には立てていない。けれど、やりたかったことを次々忘れてしまいそうだから、やるべきことよりもやりたいことを書き残しておきたいなと思う。