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『三体』科学知識の深掘り①宇宙背景放射 CMB

『三体』という本を読み出し、今まで知らなかった科学知識を深く掘って、記録するシリーズ。

今回のテーマは『三体』の射撃手と農場主の章の一文から

"整个宇宙将为你闪烁"
「全宇宙があなたのためにまたたく」

『三体』

想像したらなんて美しい光景なんだと思いつつも、宇宙背景放射とはなんぞやから諸々掘っていく。


宇宙背景放射(Cosmic Microwave Background, CMB)とは

特徴を捉えて説明するなら、CMBはビッグバンの証拠の一つであると理解した。
花火(ビッグバン)が打ち上がった後に、空(宇宙)に残る煙(CMB)みたいなもの。

もう少し科学用語を使用して説明すると、
初期宇宙の非常に高温状態が、宇宙の膨張によって冷却され、
光子が自由に飛び出せるようになったタイミングに放たれた電磁波である。
と説明されるらしい。

特徴

だけど、結局なんぞや。
CMBは物理的にいうと電磁波の一つである。
という物理的な説明はさておき、
私が面白いと感じた特徴を3つ紹介したい。

  1. 宇宙全体を埋め尽くしていて、あらゆる方向から観測可能
    地上の観測装置や人工衛星を使って、どの方向を向いても検出される。宇宙のどの場所にも存在するという。

  2. 宇宙が存在する限り電磁波として残り続ける
    宇宙が膨張する限り、波長が伸びるため、観測できる温度やエネルギーはさらに低くなるが、消滅はせず存在し続ける

  3. 初期温度3000K、138億年かけて現在は2.725Kとなった
    論理的に絶対零度* 0K(-273.15℃)には到達しないが、宇宙の膨張とともに少しずつ冷え、マイクロ波として観測される。
    *これ以上冷やせない理論上の最低温度

今までCMBの存在すら知らなかった。宇宙の始まりを証明するものが永遠に存在し続けるなんて、なんてロマンと感動させられた瞬間。

CMB発見の経緯

そんなものが存在していると知ったなら、どうやってその存在が発見されたかも気になり、調べた。

  1. 理論的予言
    1940年代にジョージ・ガモフやその同僚たち(アルファー、ハーマン)が、ビッグバン理論をもとに、初期宇宙からの残光(化石放射)が存在するはずだと予言した。

  2. 偶然の発見
    アメリカの物理学者アーノ・ペンジアスとロバート・ウィルソンが、通信衛星向けの実験用アンテナを調整している最中に、方向や季節にかかわらず一定の雑音(ノイズ)が観測されることを発見した。
    最初は装置の不具合やハトの巣などの原因を疑いましたが、調べても雑音は消えず、実はこれが理論的に存在が予想されていた宇宙背景放射であると分かった。彼らはこの発見によってノーベル物理学賞を受賞する。

  3. 精密観測の進展
    その後、NASAのCOBE(1989年打ち上げ)、WMAP(2001年打ち上げ)、ESAのPlanck(2009年打ち上げ)といった観測衛星が打ち上げられ、宇宙背景放射の温度分布やスペクトルがより高精度で測定された。
    これにより宇宙背景放射がビッグバン理論と見事に合致する「ほぼ完全な黒体放射*1」であることが確認されるとともに、温度むらの地図から宇宙の年齢や、ダークマター・ダークエネルギーの割合など、多くの宇宙論的パラメータが推定されるようになった。

    *1 黒体放射: 現実では一番黒い物体でも光を反射するとされているが、反射せず完全に光を吸収する物体を定義すると、諸々仮説が立てやすいので、人間が便宜上仮想的に作ったモデル。
    *2 ダークマター: 目には見えないが、質量があると推測される物質のこと。宇宙を観察すると、目に見える物質の質量だけでは説明できないほど強い重力が働いているため、"発見"された。
    *3 ダークエネルギー: 宇宙の膨張を加速させる“正体不明のエネルギー”。

深掘りしていくと、木の根っこのようにいろな概念がつながって出てくるのがこの本、宇宙の魅力だわ。
久しぶりに心が躍った。

このテーマは一旦ここまでとし、また次のテーマを深掘りしていくとしよう。

※素人なため、曖昧な知識であることをご容赦ください。
※修正・補足があればご教示ください。

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