【LAD】エース降臨 ブレイク・スネル
現地11月26日、ドジャースはジャイアンツからFAとなっていた先発投手 ブレイク・スネル (Blake Snell)と5年1億8200万ドルの契約で合意しました。
今季のドジャースは先発投手の獲得を最優先目標としていましたが、オフシーズン開始から1か月も経たないうちにFA市場No.2先発投手の契約することができました。
契約構造
現在までに判明しているスネルの契約構造は以下の通りです。
さすがドジャースといったところですが、正直に5年$182Mを支払うのではなく、契約の1/3程度を後払いにすることでぜいたく税対象額を圧縮、年換算で $36.4Mから$32-33M程度に削減されました
一方で大谷の後払いと異なるのは、契約金$52Mを初年度に支払うことで現在価値を向上させスネルに損がないようにしている点です。
また、スネルは州所得税0%のワシントン現住であり、州所得税14.4%のカリフォルニアに住んでいる時期の収入を減らすことで$10-20Mの節税にも成功しています。
投手 ブレイク・スネル
ここからは投手ブレイク・スネルを分析していきます。
キャリア概要
2016年23歳レイズでデビューを果たしたスネルはその後サイヤング賞2回、オールスター1回、キャリア奪三振率史上最高値など輝かしいキャリアを誇っています。2025年がキャリア10年目の32歳です。
最も成績が良かったのがレイズ時代の2018年で
31先発180.2回を投げ 防御率1.89, K%31.6と圧倒的な投球を見せサイヤング賞を獲得しました。
与四球をコストに犠牲にして奪三振で勝負するピッチャーで、2017-2024の期間でのK%は30.7%でメジャー5/64人ですが、BB%は10.7%で同選手群ではワーストとなっています。
また、耐久性の高いピッチャーとは言えず、フル稼働フルシーズンのキャリア7シーズンで平均130イニング程度、規定投球回に達したのは2回のみです。
奪三振を投球の基軸とするため、球数が増えてしまうことも多いようです。そのため1試合あたりのイニングが少ないという欠点もあります。
球種
スネルはフォーシーム、スライダー、カーブ、チェンジアップを投げます。
24年シーズンの割合としてはフォーシーム5割、カーブ26%、スライダー10%となっていますが、各球種の効果具合によって毎年微調整しています。
平均96マイルのフォーシームは高スピン、大縦変化でゾーン高めに投げ込み、ストライクカウント/空振り三振どちらも奪える万能球です。コペックなどと比べリリースポイントが高いため、判別しにくい球とは言えず空振り率は25%程度に落ち着いています。
平均81マイルのカーブはスネルの決め球と言えます。縦横共に変化量が平均以上で、ゾーン低めに投げることで空振りを量産し、2スイングに1回は打者から空振りを奪っています。
スネルはノーコンなのか
様々な媒体でスネルが紹介される際に目立つのは「支配力はあるが、コントロールが悪い」という言葉です。
確かにスネルについて奪三振率(K%)はトップクラスだが与四球率(BB%)はワーストクラスというのは前述した通りです。
しかしスネルの投球を掘り下げてみると、このナラティブは少し的外れと言えます。
まず、あるカウントでどれだけ理想的な場所にボールを投げられたか、を機械学習にかけて指標としたLocation+においてスネルは98と若干の平均以下に収まっています。他の投手と比べても極端に悪い数値か、と言われるとそうとは言えません。
Location+98(=それほどコントロールが悪いわけではない)、と与四球率ワーストクラス(=コントロール最悪)、この2つの仮説の間にあるものは何でしょうか。
Picher ListのKyle Blandは2023年シーズンにおいて、スネルのMistake%がリーグで最も低かったことを指摘しています。
Pitcher ListによればMistakeとはど真ん中のフォーシームのような投手にとっては大ダメージのもととなる球のことを指します。
つまりスネルは間違えてど真ん中に投げ込んでしまった、ということが少ない投手であるということです。
またDriveline Baseball もスネルのコマンドが実は良いほうなのではないかと指摘しています。Drivelineが開発したCommand+という指標においてスネルは114と平均以上でメジャートップクラスに位置しています。
Command+とは投手が意図した場所に投げられているかの指標です。
つまりスネルは意図してゾーンに投げていないということです。
確かにスネルの投球箇所ヒートマップを見ていると真ん中を避けているように見えます。さらに空振りを奪ったボールだけに絞ると、ほとんどがゾーン外です。
以上をまとめるとスネルの四球が多いのは
ゾーンど真ん中を避けてダメージを抑え、ゾーン外で空振りを奪おうとする投球スタイルの結果である
ということです。
四球は積み重なっていきますが、その対価を払って有り余る量の三振・アウトが回収できているのです。
バーンズ、フリード、フラハティ―との比較
オフに入りトップFA先発投手のバーンズ、No2組のスネル、フリード、さらにドジャースとの再契約を希望したとされるフラハティ―の質問を多くいただいたので、この4人を比較しドジャースにはスネルがベストフィットであるということを説明したいと思います。
先ずフラハティ―ですが、将来性が非常に良くありません。現在29歳のフラハティ―は今後30代に入っていくに従い球速が少しずつ下がっていくことが予想されますが、今季既に93.3マイル、後半戦では一時期90マイル以下まで落ち込んでいました。球速全盛のMLBでこれは大きな危険信号と言えます。
また、全体的に球威が低いため成績はどれだけ良い場所に投げられるかに大きく依存します。ポストシーズンにおいて失点数が4,0,8,2,4と乱高下したのは試合によってコマンドがハマる時期とそうでない時期があったからだと考えられます。
次にバーンズですが単純に高すぎます。耐久性、支配力も素晴らしくStuff、Location共にエリートです。サイヤング賞を受賞した2021年からK%が大幅に低下していることが気になりますが、カネが無限にあるなら契約していたでしょう。
残るはフリードとスネルです。この2人は実力・年齢が同じくらいのため、様々な媒体でNo.2FA先発投手として比較されていました。
ドジャースにとってスネルが最適である理由はスネルの支配力です。フリードは素晴らしい投手ですが、球威が低く支配力はそれほど高くありません。7種の球種をフルに使って打者を翻弄し抑えていくタイプです。プレーオフを主戦場とするドジャースにとって、スネルの圧倒的な支配力は大事です。
What’s Next?
外野手補強
先発投手の補強がひと段落したところで次に必要なのは外野手です。FA市場No.1のフアン・ソトにオファーを出しているとされますが、NY2球団+レッドソックスの争奪戦に参加するとは考えにくく、契約はしないでしょう。
最も契約の可能性が高いのがテオスカー・ヘルナンデスです。多くの記者がテオスカーがドジャースに戻ると予想しており、その可能性は高いです。
契約額については交渉次第ですが、マンシーと結んだような2年($25M程度)+チームオプション契約が理想、最大限譲れるのは3-4年$80-90Mの契約だと考えられます。
テオスカーとの契約に失敗した場合はジュリクソン・プロファー、タイラー・オニールなどに方針転換するか、mlb.com 全体No.39プロスペクトであるドルトン・ラッシングをレフトでメイン起用することになります。
ブルペン
ブルスダー・グラテロルのシーズン半休以上が決まった状態で、出来れば計算できるリリーバーを1人は加えたいところです。
最も可能性が高いのがブレイク・トライネンとの再契約、残りはデイビッド・ロバートソンやカービィ・イエーツなど、とにかく単年(or2年)$15M程度で収まるレベルのベテランリリーフを加えると思われます。
先発
スネルを獲得しても依然としてギャレット・クロシェのトレード話が出回っていますが、緊急性はなくなったのであまり深追いはしないと思われます。
残りのオフシーズンで昨年のジェームス・パクストンのようにベテランの先発を連れてくる可能性はあります。
パクストンと似たような投手としては、ジャスティン・バーランダー、マックス・シャーザー、チャーリー・モートンなどの大物から、パトリック・コービン、ロス・ストリップリング、アレックス・ウッドなどのバウンスバック候補が挙げられます。
ラッキーなら佐々木朗希が獲れるかもしれませんが、マイナー契約なのでプロスペクト補給として扱い、補強戦略にそれ程影響はないでしょう。
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