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【LAD】WSのキーとなりそうな話


私はMLBデータ分析系のポッドキャストをよく聞くのですが、Eno Sarris、Derek VanRiper, 元メッツのTrevor MayがやっているRates and BarrelsというポッドキャストでWSのリリーフプランの話をしていたので、詳しく紹介したいと思います。
紹介なんていらない!自分でみる!という方はこちらをどうぞ。


加えて自分がよく聴くポッドキャストを以下に載せますので、よかったらどうぞ。(全部英語ですごめんなさい)

プレーオフでのブルペン運用で気を付ける点

皆さんはThird Time Through the Order Penaltyをご存じでしょうか。直訳すると"打順3回目のペナルティー"ですが、先発投手が打順を1回、2回と対戦していくに連れて成績が悪くなり、打順が3回目になると非常に悪くなるので投手を変えようね、という考え方です。
1試合1試合が大切なプレーオフシリーズではこれによって先発投手が早く降ろされる傾向にあります。NLDS最終戦で無双状態に近かった山本由伸が5回で交代したのは6回から上位打線の3巡目に回るからでした。

これはリリーフ投手にも当てはまる話のようで、Eno Sarrisによれば、同じシリーズで同じリリーフ投手に3回当たった打者のOPSは.800を超えるようです。絶対に抑えなきゃいけない場面で打者が全員トレイ・ターナーになったようなもので、あまり良いことではありません。
また後述しますが、ソト、ジャッジに関してはシーズンを通してどの球種もまんべんなく得意としており、1回の対戦でコツをつかんでしまう可能性もあります。例えばですが、フィリップスをGame 1で当てたら、次はGame 4で当たるくらいの間隔をつける必要があるかもしれません。

リリーフはソトと何回勝負するか

WSがGame 6まで続くとして、1試合あたりソトが4.5回打席に立つとします。4.5×6でソトは27打席に立つことになります。
先発投手の不足からドジャースは60%のイニングをブルペンが食っているので27×0.6 = 16.2、このうち大差で勝ち/負けている場合を想定して8掛けすると
結論としてざっくり13打席のソトをブルペンは"厳しい場面で"処理する必要があります。これは後続のジャッジ、スタントンも同様です。
ブルペンデーの予定が少なくとも1度はあるため、対戦機会はもっと増えるかもしれません。

ヤンキース予想ラインアップ(from Fangraphs)
1. 2B グレイバー・トーレス R
2. RF フアン・ソト L
3. CF アーロン・ジャッジ R
4. C オースティン・ウェルズ L
5. CF ジャンカルロ・スタントン R
6. 3B ジャズ・チズム L
7. SS アンソニー・ボルピ R
8. 1B アンソニー・リゾ L
9. LF アレックス・バーデューゴ L

ドジャースが持つカードは?

ドジャースブルペンにいる投手とそれぞれの特性は以下の通りです。

1. ブレイク・トライネン (SI/ST/FC/FF)
左右別を特に苦にしないが、対左打者にはカッターが機能する必要
2. マイケル・コペック(FF/SL)
ベストの球質もコントロールに難あり。選球眼のあるNYY打線が見逃してくれるか
3. エヴァン・フィリップス(ST/FF/FC/SI)
安定感が続くならNo.1リリーフ。スイーパーメインで左打者に苦慮
4. アレックス・ベシア(FF/SL)
左打者キラー。ソトに4回目当てるならこの人。故障中
5. ダニエル・ハドソン(FF/SI/SL/CH)
意外なジョーカー候補。2019WSを締めた経験あり
6. ライアン・ブレイジャー(FF/SI/FC/SL)
ミドルリリーフ向き。先発と後ろをつなぐ役割を期待
7. ブルスダー・グラテロル(SI/SL/FC/FF)
コンディション不良につき、信頼度低下。出るなら序盤で様子見必要
(その他割愛)

僅差の場面でソト、ジャッジ、スタントンに当たるのはトライネン、コペック、フィリップス、ベシアになるでしょう。

フィリップス vs ジャッジ/スタントン

このうちフィリップスは前述のとおり対左打者に問題を抱えています。もともとスイーパーという球種が右 vs 左の勝負において相性が悪い上に、中和剤となるカッターの調子が今季はあまり芳しくありません。ロバーツがNLDS最終戦において回途中にベシア→フィリップスの継投をしたように、マッチアップを考えて作戦を考える必要がありそうです。

フィリップスの成績
対左 xBA .271 wOBA .348 xwOBA .330
対右 xBA .224 wOBA .312 xwOBA .308

ソトを他でごまかしてジャッジ、スタントンにフィリップスを当てよう!
としたいところですが、そうは問屋が卸しません。
ソトの直後に控えるジャッジは今季スイーパーに対して
打率 .306 長打率 .816 と異常なレベルで打っています。
(他の球種も打ってるけど)
さらに横変化を15inch以上に絞ると
打率.444 長打率 1.222と跳ね上がります。
フィリップスのプレーオフでの安定感を考えるとフィリップス vs ジャッジ、スタントンは2回が限界で、それ以降は大惨事を想定したほうがよさそうです。

ベシア,コペック,(ハドソン) vs ソトは楽じゃないがマシ

ベシア、コペック、(調子よければハドソン)が対中核打線の先鋒となりそうです。
ところが、楽な戦いとはなりません。ベシア、コペックの投球の半分以上を占めるフォーシーム、それも浮き上がるようなフォーシームですが、ソト、ジャッジはメジャートップクラスでこの手の球を打っています。

フォーシーム(縦変化16inch以上)に対する成績(Baseball Savant)

ベシア、コペック2人とも困ったらフォーシームと気合で抑える投球スタイルで、これは非常に魅力的ですが、ボール球スイング率メジャートップのソト、ジャッジを抑えられるかは心配です。
どこかでつまずくことがあるかもしれません。

嬉しい話を

ここまで懸念点ばかりを上げてきましたが、ドジャースも一定の対策をしてくると思われます。ドジャースとヤンキースはアナリティクス部門の充実度において球界No.2,3を張るチームです。

またブルペンの選手層においてはドジャースの方が若干上のように見えます(贔屓目ちょっと入り)。ブルペンでは僅差の場面で出せるリリーフがドジャースはトライネン、コペック、フィリップス、ベシアといる一方で、ヤンキースはウィーバーとケインリーくらいです。

Source: Fangraphs
Source: Fangraphs

なので球数を消費させるなり、早々に打ち崩すなりして先発を消耗させて、ブルペンの中位層を引きずり出せば勝機は見えてきます。一番やってはいけないのはボール球を追っかけたり、なにも生み出さずアウトになるなどの淡泊な攻撃です。

ワールドシリーズを楽しむために

ここからは全く関係ない話を。
ドジャースのプレーオフでの戦いを見て山本由伸がメジャー志向を強めたのは有名な話ですが、我々日本人はどうしても雰囲気を楽しむのは難しいです。
今回のワールドシリーズはTV地上波での放送が決まり、自分はそれに否定的な見解を持っています。理由の一つは地上波のノリが嫌いだからと言う非常に個人的な理由ですが、もう一つはメジャー本場の雰囲気を日本人にもできるだけ感じてほしいからです。
ドジャースタジアムは熱狂的なファン、強力な音響システム、スタッフに支えられメジャーでもトップクラスのAtmosphereを生み出せる場所です。
次の映像を見ればそれが良くわかります。

自分が否定的な地上波中継ではどうしても万人にウケるエンタメ化を優先させるため、この魅力が上手に伝わるとは思えません。

前にツイートもしましたが、ぜひNHKの副音声(mlb.tvある人はそっちで)に切り替えて、シーズン最高潮に達したファンの熱気と音響スタッフの演出が作り出した雰囲気を味わってみてください(できれば音量を上げて)。タレント解説者の話より楽しいと思います。
さながら野球の試合ではなく、パーティーのようですよ。

また球界最高クラスの実況者Joe Davisの実況も楽しんでください。

ちなみにドジャースタジアム音響スタッフもXをやっています。
オルガン奏者 Dieter Ruehle @DieterRuehle
フィールドアナウンサ― Todd Leitz @TODD_LEITZ
スタジアム DJ  @djsevere


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