同期スカート
ワシは大学1年生、同期たちのカラオケに誘われた。
まだそれぞれがあんまり親密ではない中で、グッと仲を深めるチャンスだわ。
二つ返事でOKしたのだが、ワシ、あまり流行の歌を知らない。
それどころか、一曲まともに歌い切れる歌が一つしかない。
なので、同期には、「全然歌知らないけどいい?笑」とラインをした。
同期は「ノープロブレム!笑」と言ってくれた。
みんなと仲良くなれるのが楽しみだ。
カラオケの時間になったので、みんな集まった。
それぞれが順番に歌っていく流れだ。
一人目の選曲は、‘unofficially脱毛サロン’ の ‘無理すんなー’ だった。
流行の歌らしく、みんな知っていて、盛り上がった。
ワシもみんなに合わせて盛り上がってみた。
二人目の選曲は、‘永徳’ の ‘聖水’ だった。
これまた流行の歌らしく、みんな口ずさんでいた。
サビはみんな一緒に歌ったりして盛り上がっていたので、ワシもなんとなくニコニコしておいてみた。
三人目で、ワシにマイクパスされた。
ワシは一つしか歌える歌がないので、もう少し後がよかったなと思ったけどしかたない。
ワシは歌いました。
「たとえ 火の中 水の中 草の中 森の中 土の中 雲の中 あのコのスカートの中!!キャーーー!!!」
みんな知っている歌だったようで、みんなそれなりに盛り上がってくれた。
ワシは安堵した。
なんだか、大学生デビュー成功しそうな気がしてきた!
その後も、‘ぱいろん’ の ‘ダディーホールド’ とか、
‘kong gyunyu’ の ‘徳光’ とか、流行りの歌らしいものが高らかに歌い上げられ、みんな大いに盛り上がっていたので、ワシも盛り上がっておいてみた。
しかし、そうこうしているうちにワシに二週目が回ってきた。
ワシの歌える歌はやはり一つしかなく。
ワシは歌いました。
「たとえ 火の中 水の中 草の中 森の中 土の中 雲の中 あのコのスカートの中!!キャーーー!!!」
みんなが、「またかよ!」とかなんとか笑いながら言ってくれて、それなりに盛り上がってくれました。
ワシは、優しい人たちで良かったなぁと思った。
ワシは嬉しくて、どんどん楽しい気持ちになった。
三週目が回ってきても、今度はむしろノリノリで歌った。
「たとえ 火の中 水の中 草の中 森の中 土の中 雲の中 あのコのスカートの中!!ギィヤアーー!!!」
みんながもう2回ずつくらい歌って、カラオケは終わった。
みんな優しくて、すごく仲良くなれた。
ワシは既に次のカラオケが楽しみになっていた。
それから二週間後くらいに、同期たちとの飲み会があった。
みんなワイワイと飲み会を楽しんだ。
二次会が終了したところで、次はカラオケでも行くのかな、と期待していると、同期の一人が言った。
「それじゃあ、今日はこれで帰ろうか!みんな気をつけてー!」
あ、カラオケはしないのか。
ワシは期待していたので少し物足りない気持ちだったが、節度のある遊び方にむしろ好感も持てた。
ワシは帰路についた。
歩いていると、携帯電話を店に置き忘れていることに気づいた。
いっけね、と思いながらさっきの店に急いで戻るとき、解散したはずの同期たちがカラオケの方に向かっているのを見つけた。
あれ!やっぱり、みんなカラオケ行くことにしたのか!
ワシは駆け寄っていくと、何やら話し声が聞こえた。
「あいつポケモンマスターの歌ばっか歌うからすげえ反応に困ったぜ!」
「さすがに5回連続はしつこすぎだよな!勘弁して欲しかったよ!」
「もはやあだ名はマスターだな!」
「まだ余裕で学部生なのにな!」
ワシは携帯電話を回収し、再び帰路についた。
たとえ 火の中 水の中 草の中 森の中 土の中 雲の中 あのコのスカートの中…でも、もう、同期の輪の中には行けないなぁ。
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