小突き問題
ワシは中古ショップに行った。
長年溜め込んでいた、もう着ることのない服の山を売り払うためだ。
どこで売ろうが大した値段にならない服ばかりなので、古着屋でもない単なる中古ショップに行った。
今回、問題が一つござい。
とにかく量が多い。
査定をする店員さんにとっては迷惑な客であること間違いなし。
服がパンパンに入った袋を三つほど、申し訳なさそうに買取カウンターに載せたが、案の定店員さんに頭を小突かれた。
「お客さん、量多すぎですわぁ!」
「はは、すみません。」
「もう、しゃあないな。」
店員さんは腰に手を当てて、はぁ、とため息をつくと、もう一度ワシの頭を小突いた。
ワシは番号札を渡され、店内で待つように言われた。
商品でも見物していようと思い、店内を探索した。
そういえばワシ、お洒落な時計が欲しいんだった。
ワシは時計コーナーへ行ってみた。
良い時計が安く置いてないかなと思って眺めたが、気にいるものがない。
ちょっとがっかりしながらぼーっと立っていると、近くのおじさん二人組がこんな話をしていた。
「最近、めちゃめちゃ不漁らしいすわ。」
「あぁ、そうみたいですねぇ。うちの親戚にも漁師やっとる人おるけど、全然魚とれないって嘆いてましたわ。」
「へぇ、そうなんですかぁ。」
「ええ、息子さんも大学受験控えとって、何でも東大入れるくらい頭良いらしいけど、不漁で稼ぎもいまいちだもんで、金のかかる東京には行かせてやれんなぁ、って。」
「そんな頭良いのにもったいないわぁー!」
「そうそう。だから、東大行けたら後でなんぼでも元取れるやろ!って言ったんですけど、そしたらね。」
「うん、なんて?」
「そしたら…あ、すんません、嫁さんから電話。」
ワシはなんじゃそりゃと思って、おじさんの親戚が何て言ったのか気になって仕方ない。
あまりに気になって、スマホで『漁師 おじさん 話のオチ』で検索したけどもちろんヒットしなかった。
ワシはもう本当に気になって気になって、電話中のおじさんに話しかけた。
話しかけたはいいものの、よく見るとおじさんの顔はものすごく強面で、瞬時に緊張してしまってうまく喋れず変なことを言ってしまった。
「あ、あの、東大、オチ…オチ…。」
そうこうしていると、背後から急に査定の店員さんに声をかけられた。
「ちょっと、さっきから何度も店内放送で呼んでるのに何で来ないの?査定終わったぞ?」
「あっ、やべ。ワシったら…。」
「やべ、じゃないんだよ。」
店員さんはそう言うと、苦笑いでまた頭を小突いてきた。
ワシはふと冷静になって、頭を小突かなくてもいいじゃないかと思ったので、
「頭を小突かなくてもいいじゃないですか。」
と言ったら、店員さんは、やーかましい、と笑いながら言ってまた頭を小突いてきた。
ワシはまあいっかと思って買取カウンターについて行った。
「お客さん、査定の結果だけど、買取の品14756点で850円ね。」
ワシはまあいっかと思って850円を受け取った。
「服詰めてた袋、どうします?」
そう尋ねられたので、
「あ、じゃあ処分してもらっていいですか?」
と答えたら、店員さんは笑いながら無言で頭を小突いてきた。
明日はもう少しいい日になるといいな、そう思って帰宅するワシだった。
ワシのことを超一流であり続けさせてくださる読者の皆様に、いつも心からありがとうと言いたいです。