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だまることを知らないチキンやろう
ガチャガチャの前で、私は祈っていた。
「ピンクよ、来い……!」
みんな大好き「びっくりチキン」。カッと見開いた目に大きな口、細長いシルエットのおなかを押すと「gア”ア”ア”ア”ーーーー!!!!!!!」と叫ぶ、あのニワトリである。正式名称は「Shrilling Chicken(けたたましく叫ぶニワトリ)」というらしい。
そんな「びっくりチキン」だが、実はガチャガチャになっているのをご存知だろうか。その名も「だまることを知らないチキンやろう」。 バンダイが手掛け、現在シリーズは「6」まで進んでいる。しかも4月には「7」まで出るらしい。とんでもない人気シリーズだ。私が買ったのは2年ほど前だったと思うが、黄色・ピンク・白のラインナップだったので、たぶん「2」だろう。
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びっくりチキンといえば、黄色のボディに赤のアクセントというのが定番だ。手のひらサイズというだけでもかわいいのに、ピンクがある。回すしかない。そして運命の一回転の後、私は静かにガッツポーズを決めた。
ピンクが出たのだ。ありがとう、ガチャ神様。
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カプセルを開けると、中でチキンは折りたたまれていた。 そのせいか、しばらくはお腹がぺちゃんこだった。 やがて復活し、ふっくらしたころに、満を持して押してみた。
「・・・・・」
もう一度押す。
「・・・・・」
何回押しても、まったく鳴かない。
おまえは「だまることを知らないチキンやろう」だったはずでは?目の前のチキンは「沈黙の権化」と化し・・・いや、「しゃべることを知らないチキンやろう」と化していた。
しかし、だ。
私はこのチキンを気に入っている。 毒々しいピンクのボディ。間の抜けた表情。とにかく存在自体がおめでたい。 今では仕事机の前の壁に飾られ、相変わらず無言のまま私を見守っている。
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1970~80年代の丸大食品の広告に、「わんぱくでもいい、たくましく育ってほしい」というコピーがあった。ならば、私のチキンにはこう言ってあげよう。
「無音でもいい。おめでたく在ってほしい。」