仕事を辞めないと決めた日のこと
今は気に入っている仕事だけど、どうしても辞めたい時期があった。
理由は仕事量の多さ。
入社して研修を終えたら、日々締め切りに追われる日々。わたしにとってその数字を達成するのは、とてもとてもむずかしいことだった。
リモートワークなのだけれど、わたしの働いている姿を見た夫に「俺の知ってるリモートじゃない」と言われた。
夫にとってリモートワークは「暇で楽」というイメージらしい。
しかし、そんなイメージとかけ離れたわたしの働き方。
休む暇もなく、苦しみながら文章に向き合う。休憩時間も削って必死に編集作業に取り掛かった。
このまま本当に働けるのかな?
このスピードで、今後もやっていける気がしない……。
書くことが好きで始めた仕事だったが、わたしは少し後悔をしていた。
そんななか、コロナの状況が少しよくなったので、ランチ会しようと数人で集まることになった。
入社してからほとんど出社してないため、ちゃんと会話をするのが初めての子もちらほらいた。
久しぶりに人とご飯。仕事や趣味の話など楽しい会話が続いた。
そして、いつしか副業の話になった。わたしの勤めている企業は副業が盛んなので、ほとんどの子たちが副業をしている。
ライター、カメラマン、アプリ開発、クリエイター……。
みんな、さまざまな副業をしていた。
そのなかでも、とくに活動を盛んにしている子が一人。彼はどっちが本業なのかわからないほど忙しく働いているようだ。
周りも彼の活動のことは知っていて、今の仕事だけでも大変なのにすごいなと思っていた。
わたしはたまたま彼の隣に座ったので「最近、忙しいんじゃない?どっちの仕事も大変そうだね」と声をかけた。
すると、彼は「思いのほか、忙しくなっちゃって……」と話し始めた。
でも、ギリギリまでこの会社で社員続けたいんですよね
その言葉を聞いたとき、少し驚いた。
わたしたちよりも仕事に取り組む時間が明らかに少なくて、彼はみんなより少し遅れをとっていた。
しかも、もうひとつの仕事は、側からみれば好調。すでに彼の作品のファンも多い。
こんなに忙しいのにどっちも頑張りたいんだ彼は……。
元々わたしも文章の仕事がしたくて、編集者になった。せっかく、好きな文章の仕事をしているのに、目先の仕事がつらいからと簡単に辞めようと考えている。
それってもしかしたら勿体ないかもしれない。彼のようにいい意味で会社に執着したい。
会社の人間関係や環境は悪くない。
仕事はそのうち慣れてくるかもしれない。だったら、少しでも長く続けてみよう。
その日から、辞めたい気持ちはどんどん薄れていった。仕事にも順調に慣れて、しっかり休みをとって定時に上がれるようにもなった。
あの日、彼の言葉を聞かなければ、諦めていたかもしれない。
継続することが100%正義ではないけれど、わたしは続ける選択をして本当によかったと思っている。
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