ハシの身辺雑記part5
カルチャースクールも卒業の日が近づいていた。
同じクラスに、慶応大学でてるお兄さんがいて、よく品評会のあと、みなで飲みに行ったりした。
それはもう、凄まじい量の知識を持っている方で、会話していたら理解できない部分が、たまにあった。才能もあると講師の方に言われていた。
「ぼく大人になってもまだ身長伸びてるんですよ、整骨院で」
みたいなギャグを死んだ目で、たまに言っていた。でも顔立ちはハンサムで、背も高い、高学歴だし、カルチャースクールではちょっとモテてる感じだった。
で、飲みながら話していると、それはもう、ものすごい知識で、それをひけらかすというか、本人はそのつもりは当然ないと思うが、ポジショントークみたいになった。
で、お兄さんは、小説の知識を自然に引用して、ぼくが、「すいませんその本読んだことないです」というと、心から落胆したような目をした。
会話のレベルが合う相手がいなくて、困ってるみたいな感じに思えた。
なんか不思議やな、とぼくは思った。
その当時は、ぼくも子供で、社会をなんも知らないクソガキって感じだった。今思えば、みんな優しく接してくれていたと思う。
でも、ベルボーイの仕事があまりにもハードになりすぎて、休みの日は寝てるので、精一杯みたいな感じだった。
やっと寝れる、みたいな日にも、同じバイト先のレクサス乗ってて、インバウンド向けの会社を経営していて、そのマーケティング調査のため、観光ホテルでバイトしてる、という同僚みたいなんから「お前今日暇?」
みたいに来て、
「忙しい」と答えると、
「何の用事があるん?」
「いや、特にないけど」
とみたいなお茶を濁す会話してしまうと、「お前嘘ついたな!学生のノリのコミュニケーションすんな!」
みたいな謎の角度の電話が来て、「いまから難波のスポーツバーいくぞ、来いよ」みたいな感じで、しぶしぶ行くと、
スポーツバーの端っこで、踊ってるひとがいた。
踊るといっても、足を、というか、踵を支点に、足をキュッ、キュッと、足先を動かしているというか、それで、靴で音を鳴らしていた。
で、そのひとはポップコーンを持っていた。
「おかしいなー、クラブやったら、笑いながら女の子寄ってきたのに」
みたいな、感じで。ポップコーンをくれたりして、喋っていた。レクサスの意識高い系の同僚も、うまい具合に女の子を2人連れてきて、ぼくらは2対2で、座った。
片方は細い女性で、もう片方はめちゃくちゃ巨乳の女性だった。