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【編集後記】手つかずの楽しみを

「サマーフルーツ」のお題で冷凍みかんを語るのは、へそ曲がりが過ぎるでしょうか。

食にまつわるアレコレを語るマガジン『KUKUMU』。今月もトップバッターでエッセイを書かせていただきました。

土曜日より日曜日より、金曜日が好き。
お弁当のから揚げは最後に食べる。
デート当日よりデート前日がうれしい。

私は何かととっておきたがり屋です。とにかく楽しみは後にとっておきたいし、景気付けに好きなものを買うより、ご褒美として買うほうが好き。

言い換えると、嫌なことはさっさと済ませたいタイプです。夏休みの宿題は序盤に片付けたものでした。苦手な食べ物も最初の一口でやっつける。親知らずだって痛む前に抜く。
だけど季節ばかりはどうしようもありませんね。

夏が嫌いです。暑さにめっぽう弱いのです。
汗をかくし、食物は傷むし、体は薄らだるいし……。デフォルトでそのような不快感がのしかかるものだから元々苦手だったのですが、4年前に熱中症でパタリと倒れ、その後遺症に苦しめられて以来、忌避といっていいくらいに夏がだめ。嫌いというか、怖いというか。

そのとばっちりを受けて、春までなんだか苦手です。
同じ24℃の室温も、秋ならあんなに心地良くうれしいものなのに、春だとその奥に夏の気配を感じて眉をひそめてしまいます。

冬が好きです。寒さに身が引き締まり、頭の中も空気も澄み渡るあの季節が好き。
冬を運ぶので、秋もけっこう好きです。

……なんて思っていても季節は動かせないから、定まっている通り春夏秋冬を過ごします。
(自由にできるなら、さっさと一生分の夏を過ごし終えて、冬だけの余生を過ごしてとびっきり寒い日に臨終したいのですが)

今の時期はつらいです。夏にわかりやすく弱ってしまう私は、今年もきっちり一週間、病気にかかって寝込みました。こんな季節、やっぱり嫌いです。

だけどこうも思います。
手付かずの冬を奥に秘めている。対極にあるからこそ、寒さが最も恋しく思える。それもまた夏なのだと。
しかもけっこう好きな秋が、次に控えている。

皮肉なことに、私の楽しみを完全にとっておける瞬間というのは、このクソ暑い8月だったりします。

猛暑のピークは今。
あとは気温も下がっていくだけ。
お楽しみはこれからだ。

そんなときめきをふつふつと感じさせられています。
踏ん張る私に、耐え忍ぶ活力を少しくれるのが冷凍みかん。
だからやっぱり、私にとってのサマーフルーツは冷凍みかんなのです。


今回も読んでくださってありがとうございました。


……余談ですが、イラストの背景にちらちらしている青い結晶は、みかんのヘタをイメージしています。
気づかれないだろうなと思いつつ、こだわっちゃった。


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