見出し画像

#8 初心者でもすぐできる英語多読の魅力とやり方

英語上達に効果があることで多くの人が口をそろえて言うこと。
それは、

英語の上達には多読が効果的!!

でも、実際に自分で始める際や教室で生徒に対して行う際、どのように始めるのか、何をどのくらい読めばいいのかいまいちピンときません。

今回は多読の効果、実践法、おすすめの教材について、私の経験なども踏まえて書き留めたいと思います。英語学習法に悩んでいる方、多読に興味がある方の参考になれば幸いです。

☆この記事をさくっと理解したい方は「まとめ」を読んでください☆


《 1 》多読は本当に効果的?


もし多読の方法を早く知りたい!と思う方は、このセクションは飛ばして《 2 》から読んでください。ここでは、改めて英語多読とは何か、英語学習においてのインプットの大切さや英語多読の効果やメリットについて書いておきたいと思います。

まず、英語多読 (Extensive Reading)とは何か?

簡単に言うと、英語の本をひたすら読む!ということです。
学校でよく行われている精読(文章1文1文を訳したり調べたりする方法)とは異なり、内容を深堀せずに多くの本を読み進めることが多読の特徴です。英語の本があれば、だれでも始められます。

本当に読むだけで効果があるの?と思うかもしれません。

なぜ多読が効果的なのか?以前勤務していた学校で英語多読コースを担当していたこともあり、英語多読に興味があり、大学院でも英語多読の有効性についての記事をいくつか読みました。

その多くの第二言語習得研究(SLA)で実証されているのが、英語学習においてはとにかく英語に触れるためのインプットの量が重要だということ、そして英語多読による英語のインプットは語彙力が強化、読解力の向上、読むスピードの改善などにつながるといいます。

例えば、ある研究 (Aka, 2019)によると、半年間放課後の多読プログラムに参加した高校1年生と、参加しなかった高校1年生の生徒の英語力をプログラム参加前と参加後のテスト結果で比べると、文法、語彙、読解ともに参加した生徒には大きな成長が見られたという実験結果もあります。(実験前の英語力に差はなかったようです)

確かに、私が教えていた多読コースの授業でも、英検やTOEFLなどのReadingのスコアが長期的にみて伸びている生徒は、きちんと多読に取り組んでいた生徒だった印象があります。

英語を大量にインプットすること、ストーリーをもとに英語を英語で理解することに役立つ多読は、すぐには結果は出ませんが、長期的に見ると大きなメリットがあると言えるでしょう。


《 2 》多読の始め方


実際に英語の多読を始める時は、以下のステップを踏むとスムーズに始められます。

① 語彙数の目標を立てる
② 多読のルールを理解する
③ 教材を決める
④ 習慣化させる

① 語彙数の目標を立てる

では、まず多読を始める際、実際どのくらい読めばよいのか、ゴールをある程度決めておくことで読むモチベーションが上がります。

結論から言うと、1週間に3000語から始めることをおすすめします。

どのくらい読めば効果的か?というのは、とにかく読めば読むほど、出会う語彙数は上がるため、効果的と言えます。

Extensive Reading central (2012) という団体が、知らない単語と出会う単語数、出会う回数で統計をとった結果 、英語を始めたばかりの初級レベルであれば1週間に3000語程度、中級レベルであれば1万5000語程度、上級者であれば3万語程度読むのが目安だと述べています。

3000語と聞くと、うわーと思うかもしれませんが、一日に数ページを読めばよいし、勉強とは違って流し読みしてもいいので案外すぐ読み終わります。

ただ、多読の本質は、テストや義務から解放され、自分のペースで楽しく読書しながら学ぶ "pleasure reading"をすることが大事だとも言っています。

なので、私が思うには、どれくらい読めばいいの?に対しての答えは、自分の範囲内でできる限り読むというのが、最も正しい答えな気がします。なので、まずは、1週間に3000語程度読んでみることをおすすめします。そして、読むのが続けられそうであれば、年間で100万語読むことが英語を英語で理解するためには必要だと一般的に言われています。

② 多読でのルールを理解する

大体の目標がわかったところで、さっそくどんどん読んでいくわけですが、多読をする際には以下のことに気を付けることが重要です。

多読のルール
(1) 自分のレベルより少し易しい本を読む
(2)  辞書は使ってはいけない
(3) 興味のあるジャンルをどんどん読む

まず (1)
多読の目的は、とにかくたくさんインプットするなので、難しい本を読んでしまうと、先に進めなくなってしまいます。

どうやって自分にあったレベルがわかるのか?各出版社ごとに大体の本のレベルが書いてあるので、英検やTOEFL、TOEICなどを受けたことがあればそれらのスコアと照らし合わせてみてください。

もし何も試験を受けたことがなければ、私はまず1ページだけ読んでみて(大体300語くらい?)分からない単語が5つ以上あれば、それは自分にとって難しい本としています。5つ以内なら丁度良いと言えるでしょう。

そして(2)
多読は精読とは違うので、一文一文をかみ砕くというよりは、どんどん頭の中に入れていくということが大切です。わからない単語も文脈から読み取るかスルーして大丈夫です。(どうしてもこの単語がわからないとお話が進まない!という場合に限り調べてOKです)精読をすることも大事ですが、多読の目的はとにかくです。

次に (3)
自分の好きな本、好きなジャンルを読むと多読がはかどると思います。逆に興味がない本や、難しいノンフィクションや新聞記事を読んでしまうと、英語の言い回しも難しく、読むのに飽きてしまうかもしれません。

また、途中で本がなんか面白くないな?と思ったら変えてしまっても大丈夫です。とにかく、自分が読みやすい本を楽しく読むというのが大事なのです。

③ 習慣化させる

英語の多読は長期間やることが大切なのだという研究もあります (Nakanishi, 2014) 大体1年程度は最低でもやることで、英語力の上達が見え始めるといいます。

そのため、多読を継続させるということがとても大切になってくると思います。

私の場合は、読書を習慣化させることで継続につながりました。
どのくらい読むのか決めて時間を確保する、時間を区切って隙間時間に読むなど計画するのです。

そして、ノートでも何でもよいのですが、できれば読んだ本や語数を記録しておき成果を見える化しておくと、どれくらい読んだか一目でわかり、モチベーションにつながると思います。

しかし、無理をしてしまっては継続は難しくなるので、読める時に読む、気が向いたら読む、最初は無理をしないことが肝心です。

④教材を決める

やり方がわかったら、どんな本を読むか決めます。基本的になんでもよいのですが、先ほど伝えたように、できるだけ簡単で自分が興味のあるものがおすすめです。私がよく使用していたものをいくつか載せておきます。

【初心者】
アルファベットがあいまいな方、単語もあまり覚えていない方などは、まず絵本や簡単な子供むけの本から始めることをお勧めします。Pearson出版社が出している本は、音声付きでディスニーなどお話の内容になじみのある本がたくさんあります。お話の内容をすでに知っているもので英語のものを読むのも話のイメージがつきやすくておすすめです ↓

【中級者】

中学校レベルの英語力であれば、Graded Readersという英語学習者向けに作られた小説を読むのがおすすめです。出版社事にレベル別になっており、なじみのあるストーリーから様々なジャンルの本があります。大体の場合は音声もあるので、聞きながら読むこともできます。

私のおすすめは、このBlack cat出版社がだしているシリーズです。
レベルはCERF別に分かれています ↓


【上級者】

上級者であれば、普通の洋書を何冊か読むだけで効果があります。私はつい先日、ハリーポッターシリーズを全巻英語で読み直しました。好きな洋書を手に取って読み進めてください。

よりアカデミックなものを求めるのであれば、ニュース記事やノンフィクションを読んでも良いと思います 。

《Japan Times》

《ノンフィクションの教材》



《 3 》教室でやる場合


教室で多読を取り入れるメリットも大いにあります。

教室で導入する場合で重要なのは、授業時間の確保、本の確保、そして生徒への動機づけや誘導が大事になります。実際、私も多読を教室でやった時には、環境の設定もそうですが、生徒の読書に対するモチベーションを保つのが大変でした。仕掛けを用意する必要がります。

しかし、一度始めてしまえば読書を楽しんでいる生徒もいて、英語力も上がっている実感がありました。具体的な実践法などはまた別の機会に記事にしたいと思います。


★☆まとめ☆★


✏ 英語多読はとにかく英語の本を継続して読むこと!
✏ 英語上達のカギはとにかくインプット!多読は大量のインプットを促す
✏ 1週間に大体3000語から読み始めてみよう
✏ ルール:①辞書は使わない ②無理なく読める易しい本を選ぶ ③興味のあるジャンルから読む(ノンフィクションや新聞記事は慣れるまで避ける)
✏ 多読の継続のコツは習慣化すること。いつ?どこで?どのくらい?読むのかをを決めておき、成果を見やすくしておく
✏ 英語学習者用に作られたGraded Readersの本がおすすめ。
✏ 教室でやる場合は、環境の整備、生徒への声掛けが重要

*****

最後に、Dr.Suesという有名な幼児向け絵本に出てくる名言を載せておきます。

The more that you read, the more things you will know. The more that you learn, the more places you will go!
Dr. Sues

まずは読めそうな本を手に取って、何も考えずに1冊読んでみてください。

☆簡単プロフィール☆
千葉県出身。幼少期、小4〜高校卒業まで海外で過ごす。国はラオス、ニュージーランド、ネパール、アメリカの計10年。日本に帰国後、教師という仕事に興味はあったが、教員免許は取らずに大学を卒業。その後、発達障害児サポートのベンチャー企業に就職。やっぱり教師という夢を捨てきれず、1年で退職。その後、塾で働きながら通信大学で教員免許を習得(中高英語)国際バカロレアに興味を持ち私立中高一貫校の英語教員兼MYPコースの担任&教科担当に。現在は夫の転勤でシンガポールに在住。TESOL修士課程を取りながら英語×探究のメソッドを深めるべく海外でできることを模索中。

参考文献:今回記事をまとめる際に参考・要約した研究やサイト一覧

Aka, N. (2019). Reading performance of Japanese high school learners following a one-year extensive reading program. Reading in a Foreign Language, 31(1), 1–18.

ER-central. (2012, November 22). How much reading? Extensive Reading Central. https://www.er-central.com/contributors/learn-about-extensive-reading-and-listening/how-to-do-extensive-reading/how-much-reading/

Davis, C. (1995). Extensive reading: an expensive extravagance? ELT Journal, 49(4), 329–336. https://doi.org/10.1093/elt/49.4.329

Nakanishi, T. (2014b). A Meta-Analysis of Extensive Reading Research. TESOL Quarterly, 49(1), 6–37. https://doi.org/10.1002/tesq.157

NPO多言語多読. (2022, June 26). 英語多読|多読・Tadokuの知りたいことすべて. 英語多読|多読・TADOKUの知りたいことすべて. https://tadoku.org/english/

いいなと思ったら応援しよう!