【撮影解説】神宮 秋の西陽×宮海土
ずっとAPS-Cセンサー機を使ってきた私ですが、2021年春からフルサイズセンサー機を使い始めました。
そのカメラを使って取り組んでいるひとつが、思いっきり寄った画角にならない、望遠に頼りすぎない、ちょっと引いて、余白があって、それでも被写体が際立つ、綺麗な写真。
普段から様々な方が撮影なさるスポーツ写真を見ていて、やはり「引きで撮れる方は素敵な写真が多い」に辿り着くんです。
望遠は圧縮効果で色々とごまかせちゃうな、って思うこともありまして。もちろん、それで思い切りクローズアップして、雰囲気が伝わる素敵な写真もたくさん見てるのですが。
そんな訳で、今回はちょっと引いた視点で、秋の光を影を使ったピッチャーの作例です。
前年にも同じような光と影を使った写真の解説記事を書いてますので、下記も合わせてご覧ください。
今回の1枚
【球場】明治神宮野球場(バックネット裏、三塁側寄り)
【試合】2021.10.24 東京六大学秋季リーグ戦 明大2回戦
【選手】立教大 宮海土投手(営3・國學院栃木)
【カメラ】Nikon Z6
【レンズ】AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR II
【設定】300mm、ISO400、f/2.8、1/6400s
撮影想定
シーズン最終戦、最後に登板したクローザー宮投手。彼は表情豊かに投げるので、見ているファンとしても気持ちがこもって楽しいです。
そして彼は奪三振率が高く、三振した後は腕を伸ばす系のガッツポーズをする、それも左投手なので、投げ終わった流れで三塁ベンチ向きに体が向く傾向にあります。
ですので、ツーストライクまで追い込んでからは、特にマウンド上の様子を逃さないように集中してカメラを構え、連写しました。
球場環境
最終戦ということで、いわゆる「型物」(打席の構え、投手のモーションなど)は一通りベース付近などでそれまでに撮り終えているので、この日はベンチの様子が見える、バックネット裏のベンチ寄りの席をチョイス。
また、撮影した日時は10月24日15時26分。先に載せた中川投手の作例は10月25日15時24分なので、太陽光の再現性はほぼ同じような状況です。
この光は神宮球場のホームが球場の南南西に配置されているからこそ撮れる光。日本の多くの球場は神宮と逆の方角で造られているため、この写真は神宮特化型の作例であることをご承知おきください。
機材設定
普段は「サンヨン」を使うことが多い私ですが、この日はたまたま知り合いから「サンニッパ」(※)を借りていたので、それを使っての撮影でした。
物は試しで、やはり開放F値であるF2.8で撮ってみようと試行錯誤。もちろん絞った方がキリッと解像感も上がりますが、それだとサンニッパと普段使ってるサンヨンの差が出にくいかなぁと思い、開放で。近くの被写体を撮るには被写界深度が浅すぎて失敗もしましたが、良い勉強になりました。
今回はF2.8ということで、シャッタースピードは1/6400まで上げました。EXIF情報を見ながら反省してると、ISO感度を200にして、SS1/3200にしても良かったかなぁと思ってます(ISO感度は低い方が画像が荒れないため)(正直ここまで明るいと気にするほどの差は出ないけれど)。
補正作業
撮ったオリジナルの写真から、どこを編集したか公開します。
使用ソフトはAdobe Lightroomです。
オリジナル、これはこれで空気感があって悪くないですね。元のレンズの描写の良さが際立ちます。この時点でトリミングはせず、水平の傾きだけ合わせてます。
まずはライトの調整から。ここではコントラストを上げて明暗差をつけ、黒レベルを下げ陰になっている部分がよりはっきり暗くなるように調整しています。
続いて、夕陽を浴びている雰囲気を出したかったので、色温度を若干上げ、落ち着いた色味にするために彩度を若干下げています。最後に、外野のフェンスの色が目立ち気味だったので、青の彩度のみ大きく下げています。
なお、立教のユニフォームのストライプ、実は青色なので、より正確に反映させるのであれば、部分補正で被写体を選択し、その部分の青だけ彩度が下がらないよう追加作業する必要があるかなと思います。
別の解釈
私に東京六大学の撮影の楽しさを教えてくださった師匠(と勝手に慕っている)早大OB・神宮の杜の主さんが、全く同じシーンを三塁ベンチ付近から撮影なさっていましたので、写真をお借りしてご紹介。
背景に一切の影なく、顔が真っ正面を向いている姿。私が撮った写真と違い、訴えかけてくるものがあります、すごい迫力。味方ベンチに顔が向いて吠えているのも熱いです。
まだ日本青年館ビルが建つ前、2016年以前の秋の神宮のフィールドは、全面的にこの光で、それはそれで素晴らしい眺めだったことを思い出しました。
(今回の記事作成にあたり快く写真をご提供いただき、誠にありがとうございました)
終わりに
たまたまこのシーンは背景に野手が誰も写り込んでおらず、スッキリとした絵に仕上がりました。
冒頭で述べたような「ちょっと引いて、余白があって、それでも被写体が際立つ」に少しでも近づけていたら良いですし、野球以外の撮影でも意識していたいと思う部分だったりします。
さて、この試合、この奪三振で二死2、3塁となりますが、ここで迎えた明大・丸山主将に逆転サヨナラ打を浴び、涙を流した宮投手。
試合終盤を任せ続けられたのも、彼がここまで努力して結果を残してきたからこそ。次は、この試合の悔しさを糧に、さらに成長した姿を応援したい。4年生での活躍を願わずにはいられません。
参考になった方や、感想を頂いた方は、ぜひ私までお伝えいただけると嬉しく思います。それでは!
継続した撮影活動のため定期的に機材の点検修理を行っています。 もし私のご活動をサポートいただける方がいらっしゃいましたら、機材経費に充てさせていただけますと幸いです。