ゆがみ #3
母の過干渉については、ゆがみ#2にも書いたのだけど、今日はもうちょっと踏み込んだ内容をお話しさせてください。なお、性的なことを書くくだりもあるので、大丈夫な方だけ先に進んでください。
境界線のない親子関係
子どものフライバシー、という言葉を初めて聞いたとき、率直に「なんだそれは」と驚いた。
そんなことを考えてくれる親がいるとは。子どもを尊重してくれる親がいるとは…。生まれた時から今に至るまで、私にはプライバシーなど皆無に等しかったので、異世界の話かと思った。
学生の頃、私が母に学校での様子や友人の話などをしても、はかばかしい反応があったことはなかった。その代わり、お母さんは今日こんなことで褒められただのあの人に綺麗だと言われただのそんな年に見えないと言われただのを延々と話していた。私はどんな反応が正解なのかわからなかったので、ああとかうんとか言っていたら
「お母さんが綺麗なばかりに嫉妬してるのね」
と言われた。
そんなわけなかろう。
そのため、私に興味がないのかと思いきや、友人からの手紙や日記、携帯電話に至るまで、すべて母にチェックされていた。私は母の一部だから。
手紙や日記は、
「親に隠し事なんて許されると思ってるの?」
と言われ、携帯電話は、
「料金を払っているのは誰だと思っているの?」
という理由が追加された。
電話も盗み聞きされていることに気がついていたので、友人ともほとんどしなかった。したとしても当たり障りのないことしか話せなかった。
新しい恋とその弊害
父と母はいろいろな理由があり離婚したのだが、母にはじきに恋人ができた。母より10歳上の、弁護士だった。彼はとても良い人のようで、私は母が彼との恋愛に夢中になってくれるといいなと思った。そして、これで私に解放が訪れるのではないかと期待した。
しかし、私の予想は甘く、解放は訪れなかった。母は、優秀な恋人の遺伝子を残したいという思いに取り憑かれ、しかしそれを思いついた時はすでに、母にとっては遅すぎたのだ。彼女は50代の終わりだった。
当時20歳そこそこだった私に、母は
「あなたの卵子とあの人の精子で、子ども産んでほしいんだけど」
と頼んできた。
私は、そこに思い至る母の狂気に怯えつつも、同意できないのは母に対する愛情が欠如しているせいかとも思い、
「いや、冗談だよね…」
としか言えなかった。それ以降はのらりくらりとかわした。
娘の裸が見たい母
小さい頃から現在に至るまで、成長度合いを確かめるという名目でお風呂をのぞいたり寝ている間に服をめくられ性器や胸部を見られたりしていた。とても嫌だったけれど、
「母親が成長を確認しない方がおかしい。隠したいことでもあるのか」
と言われたら、当時は何も言えなかった。
ちなみに、アラサーになった今でも実家に帰ると同じことをしてくる。気持ち悪いからやめてと言ってもやめない母は、やはりおかしいのかもしれないと思う。ちなみに「ふざけてやった」というのが理由らしい。
これからのこと
実を言えば、私は今でも自分の母親がおかしいのか、おかしくないのかの判断がつかずにいる。彼女はお金を要求するわけでもないし、私のことを叩いたり殴ったりはしてこない。幼少期はごはんを食べさせてくれたし、学校にも行かせてくれた。母は、今回書いた全ての性的な行為が愛情によるものだと考えているらしく、色々と総括的に考えても「愛情いっぱいに娘を育てた母親」として誇りにすら思っていると思う。
私が同じように愛情を返さないどころか、距離を置いているので、大変に冷淡な娘だと言われる。
母はまだ生きているし、大きな病気にかからない限り、たぶんもうしばらくは元気だと思う。現在私は実家から飛行機の距離のところに住んでいるのだけど、未婚だからという理由で、気が重いのだが長期休暇のたびに帰省をしている。もうすぐ年末。今年も頭の痛い季節がやってきた。
絶縁する勇気もないし、どっぷりと関わりあう胆力もない。
中途半端な自分が嫌になる。