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移民二世の子供のリアル

「生まれも育ちもカナダです」というと、たまに「羨ましい、生まれ持ってバイリンガルなんて!」と言われる事があります。

誤解してない?

私たちだってなんの努力も無しにバイリンガルやってるわけじゃないし、二世って大変なんだからね!!

まず、わたしの両親は2人とも生粋の日本人です。そしてあまり英語が得意ではありません。家では日本語でしか会話をしておらず、周りに英語を話す知り合いもいなかったため、幼稚園に通うまで、私は英語がほとんど判りませんでした。

幼い頃に住んでいた町がアジア系移民が少ない田舎町だった事もあり、最初の”英語”とのエンカウンターは強烈なものでした。

同級生からはもちろん特に先生からのいじめが酷く、幼稚園から小学2年生まで、学校で一言も話せませんでした。家に帰ると話せるのですが、学校で言葉を発しようとすると、喉が詰まり、喋れなくなるのです。(こないだ調べてみたら、場面緘黙というそうですね。)

カナダの小学校は幼稚園から7年生まであり(*学区によって違うところもあります)8つの違う学年の子供達が通うのですが、私は「しゃべらない子」と有名になってしまい、更にいじめられるようになりました。上の学年の児童はかなり体格も違うので、怖かったことを覚えています。

なんで話さないの?と通学中に背後から急に背中を押されたり、先生が、私を最初にしゃべらせた子にはお菓子をあげると言い出して授業中に袋叩きにあったり。

太っていたので、シンプルに日本人?スモー!スモー!とどやされた事なら100回くらいあります。これは違うか。

頑なに喋らない私に痺れを切らし、先生に壁に押さえつけられたり外に投げだされた事もありました。

元来負けず嫌いであったため、今の発音ではきっと益々バカにされる、英語を完璧に話せるようになれば自信がついて喋れるようになるはず!と、家に帰ると毎日猛勉強をしていました。

というのも、親は英語が分からないので、学校の勉強は教えてもらえないのです。塾はカナダでは一般的ではなく、また貧乏だったので家庭教師なんて余裕もあるわけが無く、ひとりで黙々と机に向かっていました。

これは本当に移民の子供あるあるでよく他の移民二世の友達と話しては盛り上がるのですが、例えば、固定電話やインターネットの契約更新や銀行や保険の手続き、電話オペレーターと話したり病院に行く際など、英語のやり取りが必要となる場面では必ず子供が通訳として駆り出されます

子供も拒否はしません、何故なら必死で働いてくれているのに、英語を話せないというだけで店員や嫌な態度を取られる親を幾度となく見てきているから。

70~80年代のカナダへの移民は戦争から逃げて亡命して来たり、国の政権が変わり混乱の最中安定した生活を求めて来た人が多く、長年の友人から「実は私たち家族で亡命して来たんだよね〜」なんてびっくりな告白をされる事もしばしば。みんな今の平穏な生活に至るまで様々なドラマがあり、涙無くしては語れません。

ちなみにうちの親が移民したきっかけは、父が自由人すぎて日本の生活に馴染めなかったから、という大したものではありません。

それでも家族のためいつも頑張ってくれている親でしたが、学校の先生と会話できないためいじめの事も話せず、テレビや芸能人の話題も英語はわからないと切り捨てられ、兄の入院先でも「ご両親は分からないと思うから君に説明するね」と代わりに10歳の私が兄の病名と治療法を聞く事になったり、事あるごとに通訳係として駆り出される事に対していつしか英語が話せない親を恥ずかしい、日系人であることが恥ずかしい、と思うようになり、日本語を訂正してくる母親に「使う事なんて無いんだからいいでしょ!そっちは英語話せないくせに!」と怒鳴ってしまった事もあります。

この頃ようやく英語をマスターし学校でも普通にしゃべれるようになり、「さっさと日本に帰れ!」と椅子を蹴り付けてくるいじめっ子を泣かせるまで言葉で追い詰めるなど、自分で全てを対処できるようになっていました。

そして実感したのです。

言葉は私を守ってくれる武器だ。言葉が話せれば、馬鹿にされる事はない。

じゃあ、私が英語も日本語もめっちゃ勉強して、どっちも完璧になったら…?

そんなきっかけでしたが、私は更に勉強に励み、高校では国語の学年3位をキープ、日本語も小学生のうちに日本語鑑定一級(日本の中学3年生の国語に値するようです) を取得しました。

だけど、どんなに英語が得意でも、いくら周りの子供たちと同じ価値観を持って同じカルチャーを共有しているつもりでも、見た目はアジア人。比較的差別の少ないカナダですが、それでもやっぱり嫌な思いをすることはあります。白人だったら、と願ったことは数えきれないくらいあります。なんで親が移民ってだけでこんな理不尽を負わなければいけないのだろう、と親を恨むこともありました。

フランス、香港、台湾、フィリピンなど・・・他の移民の子達はたくさん仲間がいるからいいな。せめてもっと日系移民のいるハワイだったら良かったのに!なんて。

私が日本に来る決心をしたのは、ここならもしかしたら居場所があるかもしれない、と思ったからという理由もあります。

しかしもちろんそんな簡単には行かず、カルチャーショックの連続で、逆に日本語が達者すぎて誰も外国人として扱ってはくれず日本の常識を知らない変な日本人と見られることも多く、来日する前に母親から言われた「あなたは日本に行っても、日本人にはなれないよ。中身はカナダ人なんだから。でもカナダにいてもあなたをカナダ人と認めない人はいる。そういう考えだと、どこにいっても、ずっと宇宙人だよ。」という言葉が胸に突き刺さりました。

本当にそうだよな〜。

そういうわけで、私は自分を、日本人とは思っていません。だけど、写真でしか知らないけど、先祖がいなければ私はここにいないので、日本に対する敬意はあります。母国であるカナダへ対する愛も人一倍あります。なので、私はやっぱり、日系二世カナダ人です




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