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【都市伝説解体センター】始まりと終わりについて考えよう【ネタバレあり】
都市伝説解体センターはいいぞおじさん「都市伝説解体センターはいいぞ」
注意事項:ネタバレが大量にあるので未プレイ者は見ないようにしましょう。
本題
都市伝説解体センターをクリアして非常に面白かったので、自分なりに考えをまとめてみようという記事。
キャラクターの魅力とか、ドット絵の素晴らしさとかは他の方が語ってくれるだろうということで、この記事では、本編の謎を振り返りつつ、
都市伝説解体センターは何のために造られたのか?
エンディング後の都市伝説解体センター(再)は何をするつもりなのか?
に答えを得られるよう考えていきたい。
序章. 如月アユミと造られた人格達について
さて、焦点について考える前にこの都市伝説解体センターというミステリーアドベンチャーの大トロである部分、
如月努の妹である如月アユミ=SAMEJIMA管理人=廻屋渉=福来あざみ
という部分から考えていく。
まず、この4つの内、アユミ、廻屋、あざみーの3つの人格は多重人格者の主人格と副人格の関係にあると山入によって述べられている。
主人格がアユミで、副人格の廻屋とあざみーはアユミの意図により造られた。
多重人格者なので当然だが、エンディングであざみーとセンター長が入れ替わるシーンから、彼らの肉体が共通なのは間違いない。
そして、少なくとも廻屋とあざみーの関係から、副人格同士は互いに互いを別人だと思っていて、別の副人格が自分であると知覚できない。
※廻屋はあざみーの動きを把握しているが、これは廻屋が「自分には千里眼がある」と認識しているからであって、廻屋が別人格を理解しているからではない。
なお、SAMEJIMA管理人は副人格ではなく、廻屋の変装である。
あくまで人格は同じで格好を変えただけ。
これはあざみーが本編ラストで行った「SAMEJIMA管理人の正体は廻屋」という解体に対して「廻屋が正解という判定をした」ことから言える。
あざみーがSAMEJIMA管理人=廻屋として解体した。
そして、廻屋はそれを受け入れた。
つまり、廻屋には自分がSAMEJIMA管理人という認識があったということ
またこれ以外のこの3人格の特徴として、主人格は副人格からは気づかれることがないし、副人格に気づかれぬまま肉体的な動作にも介入できることも描写から分かる。
あざみーは最後まで自身がアユミの副人格であることに気づいた節が無いし、作中であざみーが現場でやったとしか考えられないけどあざみーがそれを自覚していない動作が多々ある。
また、主人格のアユミは、副人格に対して念視映像・現実映像ともにアユミの意志で見せたいものを見せられる。
※この辺りはいずれ別記事で全話の伏線も含めてまとめたい。
まとめ
・如月アユミは主人格であり、副人格のことは全て認識している。
副人格の行動、視界を副人格の知らぬままに操ることができる
・廻屋は副人格で、アユミのことは認識していない。
また、廻屋はあざみーの動向を認識しているが、それは千里眼によるもので、自分とあざみーは別人という自認である。
ただ、SAMEJIMA管理人が廻屋で、廻屋渉は如月努の弟という認識はある。
・あざみーも副人格で、アユミのことは認識していない。
自分と廻屋は別人という自認である。
2章.如月歩の目的について
如月歩の歩んできた歴史の中でひとまず事実だけを並べると以下のようになる
如月努の妹として出生
上野天誅事件に兄が巻き込まれる
上野天誅事件後、兄に対して都市伝説を語る人格(廻屋)が生まれる
誹謗中傷を苦にして兄が自殺する
上野天誅事件の捜査が打ち切られる
ナターシャ・サインを開発する
ハッピー777億円事件を起こす
アングラサイト「SAMEJIMA」が立ち上がる
グレートリセットを盲信する人が増え始める
都市伝説解体センターが設立され、動画をアップするようになる
ジャスミンが都市伝説解体センターに加入する
ジャスミンが調査員として調査をこなす
あざみーが都市伝説解体センターに加入する
以降はゲーム本編の通り
ジャンプラに掲載された外伝漫画はひとまず無視するとして、おおよそこのような順番と思われる。
SAMEJIMAと都市伝説解体センターの設立のどちらが先かは明言されていないが、より手間がかかるのはSAMEJIMAの方なのでこちらが先だろう
SAMEJIMA管理人は主に、
・イルミナカードの予言を広める
・如月努を神格化する
・グレートリセットの概念を広める
・サイト利用者との会話などを切っ掛けに、協力者に作り替える
などの活動をしており、「都市伝説解体センターを人気Bootuberにする」よりもはるかに時間と工数が掛かる。
さて、これらの行動から、如月歩が何を考えて行動していたかを推理する。
考えられる目的、それは兄の死に対する復讐
これは本編でもほぼ語られている通りなので間違いない。
ただ、誰に復讐するのか、どうやって復讐するのか、と言う点を考えた時、やっている事がいくらなんでも迂遠すぎるというのがやはり気に掛かる。
山入は「復讐の手段に兄の愛するオカルトを取り入れた」とは言うものの、サイバーテロのガワにSAMEJIMAが使われただけで、一般市民の個人情報の暴露にも、5ソサエティの拉致監禁にもオカルトは関係ない。
純粋にハッキングパワーと暴力で成し遂げた復讐であり、これがオカルトだとは誰も思っていないのだ。
改めて復讐計画を俯瞰してみると、
アユミから見て、兄の死に責任があり、本編中で復讐が行われたのは、
兄が冤罪を受ける原因となった真犯人。
兄の訴えを無視し、真犯人を見つけられなかった警察
兄に誹謗中傷をして自殺に追い込んだ世間。
この3つ。そして結果として、
5ソサエティは、事件の真犯人として正式に逮捕された。
警察も権威が失墜し、また管理者の関与が暴かれた。
世間に対しては無差別な個人情報・犯罪行為のバラマキがなされた。
このようになった。
・・・なったのだが、これらの復讐だけを考えると、都市伝説解体センターもSAMEJIMAも存在する必要性は一切ない。
だって、真犯人は5ソサエティであることは兄の死の時点で分かっている(ノートに書いてあるし、天才のアユミが気づかないわけがない)。
本編では犯行テープが残っていたが、あれはあくまで偶然の産物。
黒沢が処理していてもおかしくなかったし、黒沢が犯人であることさえ証明できれば父の所属する警察にも責任を負わせることはさほど難しくない。
※アユミは本編でも一般市民に対して「真実が暴かれることで被害を受ける」という方向性で復讐を果たしているので、ネットで煽動すればいい。
更に、一般市民への復讐についても、万能ハッキングツールであるナターシャ・サインが開発された時点で無差別な個人情報の公開は可能。
警視庁のサーバーへの侵入はドッペルゲンガー事件でのアレコレの成果だろうが、SAMEJIMAや都市伝説解体センター無しでは出来ないものには見えない。
よって、復讐にはSAMEJIMAも都市伝説解体センターも不要となる。
むしろSAMEJIMAに関しては、如月努を実態から掛け離れた姿に神格化し、如月努の意志から掛け離れたグレートリセットという言葉の信奉者を生み出し、さらにそれを使ってテロまで起こしたことで如月努への冒涜にしかなっていない。
都市伝説解体センターの方も(恐らくアユミか廻屋の関与もあって)5ソサエティ絡みの事件が立て続けに舞い込んだが、復讐自体に与える影響はほぼなく、あざみーはむしろずっと復讐を止める方向で動いている。
SAMEJIMAにも都市伝説解体センターにも、如月歩はとんでもない手間を掛けているが、結果として復讐が失敗するリスクが発生するばかりで、「兄の愛したオカルトを使って復讐した」感も全くない。
これはいくらなんでもおかしい。
というわけで、解決する仮説を考えてみよう
仮説1. 矛盾する心の表れであり、良心の呵責
SAMEJIMAは如月努と上野天誅事件自体が都市伝説化してしまったことに対する如月歩の怒りと復讐の具現。
対して都市伝説解体センターは、如月努の愛した都市伝説という文化に対する如月歩の敬意と愛情の具現。
あざみーは自分が行おうとしている復讐計画のアンチテーゼとして生まれた。
というように、アユミの計画とは関係なく、それぞれ矛盾した感情などとして生まれたものという説。
あるいは自ら生み出したものに自分の計画を止めさせるためだったという説。
最初はこれで行けそうに思ったが、考えを進めていくとかなり厳しい。
理由としては、あざみーにはカウントダウンサイトの謎を解く役割が復讐計画の過程で明確に与えられていたこと。
また、良心の呵責としてあざみーが生まれたならば、善の存在であるあざみーが全ての謎を解体して完勝したのに復讐計画は普通に完遂されたのがおかしい。
本編の状況を脳内で天使と悪魔が戦い、天使がボコボコに勝った状態として見ることはまあ無理だろう。
一応、当初の復讐計画だと5ソサエティは皆殺しにして、一般市民も殺戮するレベルだったが、あざみーの勝利によりあの程度に抑えられた、と考えることも不可能ではないが、その場合は公安が何らかの処刑装置を見つけてると思う
仮説2.クローゼットへの侵入に向けた遠大な計画
まだこっちの方があり得そうという事で筆者としてはこっち推し。
まず、如月歩は兄の自殺の後、復讐を決意する。
そして、復讐に際して「真犯人である5ソサエティを調べるよう兄が直訴していたにも関わらず、警察が無視したのは何故か」に目をつける。
当然ながら、真犯人が分かっていれば「黒沢の父親が警察のお偉いさんなので揉み消したのでは?」という可能性に行き当たる。
ただ、確証はない。
そこで、如月歩は「揉み消されるような事件を実際に起こしてみる」というアクションを起こす。
それがハッピー777億円事件である。
果たしてこの事件は上野天誅事件と同様に揉み消された。
解決はしていない。
犯人は自分、如月歩で間違いない。
しかし、事件については口外されず存在しないかのように扱われる。
これにより、如月歩は「この国には存在する事件を無かったことにしてしまう『何か=クローゼット』があり、それが兄の死に繋がっている」と確信した。
しかし、本編で示された通り、クローゼットはハッキングできない。
そこで如月歩は追求のための遠大な計画を立てる。
ざっくりとした計画の流れはこうなる
・国家の危険分子を作る(=SAMEJIMAとグレートリセット思想)
・上記の危険分子に繋がりそうな組織(=都市伝説解体センター)を作り、『何か』の手がかりになりそうな政府の人間(=ジャスミン)を呼び込む
・政府の人間に協力する形で『何か』の真実に迫れる可能性のある善良な人物(=福来あざみ)を用意する
・実際に国家の危機を発生させ、その過程で善良な人物に捜査協力させることで『何か』の正体を得る
・『何か』、一般人、真犯人、警察への復讐を完遂する
となる。
このように、全てはクローゼットに福来あざみを送り込むため、クローゼットの真実を得るためのSAMEJIMA事件となる。
あざみーのクローゼット立ち入り時に絶対なんかアユミが仕込んでいると思う。
この説の長所は、エンディング後にまだ都市伝説解体センターを続けている理由が明確になることである。
なぜ、如月歩の復讐は終わったのに、都市伝説解体センターは続いているのか?
答えは、如月歩の復讐が終わっていないからである。
在るものを無いとしてしまう機構、非解決事件とクローゼットは健在であることはエンディングの山入とジャスミンの会話から明言されている。
上野天誅事件の真実は暴かれたが、
如月歩サイバーテロ事件はクローゼットに消えた。
兄・如月努の命を奪った根幹のシステム。
非解決事件とクローゼットそのものへの如月歩の復讐は終わっていない。
最後に映ったのは異国にそびえる都市伝説解体センター。
何をしているのか。
当然、次の復讐の準備だ。
クローゼットの情報は福来あざみが招かれた時に既に収集されている。
次こそは闇を全て明らかにするような大事件を巻き起こす。
国内ではどれほどの大事件でも消されてしまうならば、国家権力でも消せないくらい大きくて国際的な事件を起こせばいい。
そして、如月努の復讐を完遂する。
果たしてその大事件の内容とは。
そう、それこそがグレートリセット。
目覚めよ、その名はG R
すなわち、
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〜完〜
注記:クリアした勢いで書いたので、2周目プレイで矛盾を発見した場合、本記事はひっそりと解体されます