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愛されるおばあちゃんになるために。

私は今入院をしています。
部屋は4人部屋で、私を除く3人は恐らく70代から80代のおばあちゃん達です。

毎日同じ部屋で過ごしていると、カーテンで仕切られてはいるものの大体の性格や気性、キャラクターが分かってきます。

まず一番高齢と思われるレイコさんはとにかく愛されキャラで、言葉が丁寧なおばあちゃんです。
丁寧な敬語を崩すこともなく、育ちというのか生きてきた環境の良さを感じさせる方です。

普段はとても静かな方なのですが、さすがにしんどかったのか先日手術の後に心の声を表に出していました。
「私は〇〇レイコと申します。〇〇トキオの家内です。」とか、
「トキオさん、どうして助けに来てくれないのですか」とか。
怒鳴ったり、叫んだりするのではなく静かに切実に何度も同じようなことを声に出していました。

看護師さん達からも癒されるとか、かわいいとかレイコさんのファンは多く、私もファンのひとりなのですが、学ぶところが多いです。

もう1人はヨシエさんです。ヨシエさんはどちらかと言うとクールなタイプでお年寄りにありがちなくどくどと自分を語るようなことはしません。
必要なことだけを言葉にするタイプ。言葉は少ないですが、その分嫌味や嘘が感じられず可愛らしさはありませんが、とても好感が持てます。
病状はあまりよくないようですが、我慢強く日々過ごしている印象を受けます。
レイコさんとは違ったタイプですが、看護師さん達の対応を観察しているとヨシエさんもなかなかの愛されキャラとお見受けしました。

よくお年寄りで、自分の半生をまるで絵巻物のように初めから現在まで個人情報を盛り込みに盛り込んだトークを展開している方を見かけます。
私もバスに乗っている時、何気なく話かけられたことをきっかけに、うっかり相手のペースにはまってしまったが最後永遠語られた経験があります。

ヨシエさんはその点ではとてもクールで客観的に周りを見ている気がします。
ヨシエさんもまた、歳とともに説明や言葉が多くなっているアラフォーの私にとって学ぶところが多いです。

最後は私のベッドの隣ホンダさんです。この方は看護師さんから苗字で呼ばれているので「ホンダさん」です。

結論から言うとホンダさんは看護師さんからは困った人認定を受けているように思います。

ホンダさんは看護師さん達に感じよく対応しているのですが、その言い方になんだか嫌らしさを感じるのです。本心で言ってない。恐らくずっとそんな風に生きてきた方なのかなとお見受けしました。「感じよくしておけばいいでしょ〜」みたいな言葉の響きを感じる話し方です。
なので看護師さんが来るのが遅いと待っている間に「早くしろよ」と独り言を言って、来たら「ありがとうございます」って嫌らしく言ったり、アイスノンを持ってきてもらっておいて、「こんなの冷えるからいらないのになんで持ってくるの」って看護師さんがいなくなるとぶつぶつ言ってます。

先日ちょと注意をされたことに腹を立て、まるで橋田壽賀子ドラマに出てくるキャラクターみたいに大声で泣き叫んでいました。「私のこと馬鹿だと思っているんでしょう」とかなんとか。
1人にしてほいと言って、なだめる看護師さん達を追い返し、しばらくすると下品な音をたてながらなにかを食べていました。
そして夕飯の時間になると、これもドラマのように「ショックで食事を食べる気になれない」といって電気を消して看護師さんを困らせていました。
私は心の中で「さっきなんか物凄い食べてたやん」ってツッコミを入れてましたが。

歳を重ねるということ。ままならない体の不調や痛み、そして不自由さ。
ほぼ共通の状況に置かれていてもこんなにも違うお年寄り達を見て、私は思いました。

愛されるおばあちゃんになるにはどうすればいいのか。

ホンダさんのようにただ言葉が多くて、その言葉に嘘や演技があってはいけない。歳を重ねたらなおさらなのかもしれません。
その年齢の分だけ嫌らしくその言葉が響いてしまうのでしょう。気をつけたいです。
本質や本物に近づきたい。そこから出てくる厳選された言葉を若い世代の人達に話したい。レイコさんやヨシエさんのように。
私はそんな風に思いました。

若い人達を脅かすような苦労話や病気の話、そんな話はしないお年寄りになりたい。
何事もいきなりはなれないから、やはり日々の積み重ねでその人はできあがるのだとつくづく感じています。

この日々の積み重ねをしていないと、結局歳をとって病院や介護施設の行ったとき最終的に嫌われるのかもしれませんね。
人に嫌われているということは、いくら取り繕っても本能が感じとり、不安がつきまとうものです。
その孤独感はきっと深いものでしょう。
でもそこまで歳を重ねてしまってからでは嫌われキャラが愛されキャラに変わることは難しく、きっと当の本人は自分がどうして愛されないのか、被害妄想が膨らむだけで気付くことはできないのかもしれません。真の孤独がそこにある気がします。

人間考察が趣味の私です。
病室でたくさんのことを学ばせてもらっています。

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