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【感想編】海外経験0のニートが一人で上海ディズニーに行ったら

上海ディズニーに行ってから1ヶ月が経った。準備〜帰国までの数ヶ月間「何をしたか」については書いたが、実際やってみてどうだったか、について今回は残しておこうと思う。実用的な事はほとんど出てこない、あくまで個人的な感想文である。
準備編/当日編は実際に行こうとしてる人向けだったので無闇にネガティブなことは書かないようにしていたけれど、今回は割と触れます(旅行中の事ではないのでご安心を)。


そもそもなぜ行こうとしたか。色々と理由はあるが、一番大きいのは「カッコいいから」だった。

今年4月、近藤史恵さんの『スーツケースの半分は』(海外経験の無い女性が、一人海外旅行を決行する話がある)を読んで、目を輝かせてしまった。初めてを一人でやってコンプレックスをひっくり返すの、かっこい〜〜!!

実際に行く手段を決める時に参考になったのは、たかさきももこさんの『女ひとりで海外団体ツアーに参加してます』と清川果林さんのyoutube。

特に動画がかなりの決め手で、「私にも出来そう!」と思い(単細胞)、一人で行くことを決心。

実は、大学生の頃から海外経験の無さがコンプレックスになった。
私の大学は、帰国子女という言葉の代わりに、そうでない学生を「純ジャパ」と呼ぶような環境だった。
純ジャパ差別は特にない。パスポートが無いのは若干引かれるし、大学に入って初めてちゃんと使うことになった英語は失笑の的だったが、嫌な経験は少ない。
それでも、皆の常識を自分が知らない、という経験を日常的に重ねていくうちに、そのコンプレックスは大きくなっていた。

だからこそ、初海外が非英語圏への一人旅(個人旅行)で何かがひっくり返る、という物語に強烈に惹かれた。上に挙げた人達のことは、めちゃくちゃカッコいいな〜と私自身が実際に憧れたし、大学卒業後紆余曲折を経てニートになった今、そのどんでん返しはより大きい気がしたのだ。


帰ってきてから1週間、病んだ。特に最初の3日は、ひたすら眠り続け、起きたらずっとさめざめと泣いていた。

その理由のひとつは、呆気なさだった。
入念に下調べをして、想定できうる限りの全てのシチュエーションに対応しようと努め、最終的には死ぬ覚悟さえ決めていった(これだけ周到に準備して死んだら馬鹿すぎるという理由で、帰国後まで準備編は公開できなかった)。
だが、死ななかった。想定よりかなりスムーズだったし、想定外のことが起こっても案外あっさり対応できた。

毎日のように見る殺傷事件や、体験談のトラブルを見ている限り、運が良かっただけだとは思う。

……薄々、気づいてはいた気もする。
大学同期(海外経験豊富)に話して、「いいじゃん」って言ってもらって、えへえへしてる時にどこかで「あれ、『凄い』は……?」とか思ってた。誰も凄い、って言ってくれない、尊敬する!とか言われると勝手に思ってた。一切言われなかった。

止めを刺したのは、帰国直後、姉(海外経験豊富)の「大したことなかったでしょ?」の一言だった。

悔しかった。本当に大したことなかったから。
「その程度でひっくり返るわけなんてないんだな」って、思ってしまって、急に楽しかった気持ちがしぼんでしまったのだ。

あと、素直に「自分そんなことしてる場合だっけ?」とも思った。
大したことじゃなかった、となったら今度は「私何してるんだろ?」と疑問が湧いてきた。私が本当にすべきは就活とか資格の勉強とかじゃないのか。1人で日帰りでディズニー行って帰ってきて「あぁ〜〜!頑張った!!」とか思うの、ダサすぎないか??
(実は渡航の準備と同時に一社だけ頑張って受けてみて、惨敗している)
何がひっくり返るだ、この間に皆はもっと大きなことをやり遂げてるんだよ。
……そんなことを考えてるうちに、「SNSで自慢して褒めてもらおう作戦」は実行できなくなった。その魂胆まで含めて恥ずかしすぎて。


現在では、そこから立ち直ってる。まだニートではある。そこから奮起して就活頑張ったとかではない。気持ちのありようがただ変わっただけなのだが、そこだけでも、私はかなり今回の挑戦をして良かったと思っている。

そう、私は忘れてしまっていたのだが、今回は「挑戦」なのだ。
大学卒業後は基本的に、何をやっても上手くいかなかった。自分の強みを理解して正当に努力を重ねてきたと信じていたが、驚くほどことごとく失敗だけをした。

だからこそ「新しいことをしよう」「できることを増やそう」と思っていて、今回の挑戦はそれの一環でもあった。
ずっと放置していたコンプレックスをひとつずつ自分で克服していく、という大きな挑戦の一部でもある。確かに、挑戦は成功しているのだ。

日帰りでディズニーランドだけ行く、という選択も、海外旅行の第一歩として凄く正しかった。ディズニーランドは、どこでもディズニーランドであって、その土地柄がそこまで反映されていない。非英語圏の割に英語が通じるし、かなり楽だった。
私がこの旅程にした時に思い浮かべていたのは、Creepy NutsのR-指定が昔ラジオで話していた、初めてのUber Eatsで吉野家の牛丼を頼んだというエピソード。
当時このエピソードを聞いた時は「意味ないじゃん」って笑ってたけれど、今回の目的は「海外に行くこと」だから、これでスモールステップの1段目がクリアした。

また、これは行く前の話だが、面倒な準備を沢山して、お金を沢山使っているうちにふと、「今だったら国内どこでも行けるな」と思った。国内は遥かに楽だし安価だ。都内の「ちょっと行くのが面倒」って渋っているような地域だって、片道1000円台で行ける。上海ディズニーには数万かかるのだ。
そうやって思うと、気持ちフットワークが軽くなった(なお、帰国後は以前にも増してひきこもりになった)。
これは、私が初めてやった「おひとりさま」が一人ディズニーだったことによって、他の「おひとりさま」行動が全部できるようになったのと同じ現象だと思う。
一番最初に一番大変な選択をしたのだから、次からはほぼパスできるという自信。


渡航前、私は完全に不安に支配されていた。最初はお気楽なものだったが、それを加速させていったきっかけは、周囲からの風当たりの強さである。

以下、言われたことと、実際行ってみての印象。
具体的には、親世代は中国へのヘイト/不安が結構強くて、同世代はどちらかといえば「わざわざ行く場所じゃない」という感じ

  • 中国は何があるか分からないし危ない
    荷物検査などは比較的ルーズな印象があったし、私は何も起こらずに済んだが、警戒しておいて損は無いとは思う。
    天安門で写真撮影した台湾人が拘束されたというニュースもあったし、情勢悪化や反スパイ法の施行などを考えると完全に否定はできない。

  • 外国人差別が強い
    言語が通じるか否かでの対応の差は多少あると思う。外国人に対して冷たいというより、自国民に対してフレンドリーで温かい印象。まあ日本でもあるレベルだと思う。ディズニーのキャストさんは皆優しい。

  • 上海ディズニーへの悪印象
    ちょうどSHDLに行った人の「現実」レポがバズったこともあり、「ゴミがやばい」「英語通じない」みたいな事を散々言われた。そんなことはほぼ無かった。上海が特別悪いというほどではない。

  • 東京のディズニーが一番だから、海外パークは行く価値がない
    アメリカ在住の友人から言われた、個人的に一番ショックだったコメント。
    特にそんなことはなかった。それぞれに「こっちの方が好きだなあ」みたいなポイントは多少あるけれど、あくまで好みの範疇な気がする。

私がこれらの言葉で一喜一憂して不安を加速させたのは、私が初めての海外で、世間知らずだという感覚があったからだ。クレカ2枚持ちとか、パスポートのコピーを控えることとか、全部知らなかった。そういうのを聞いて初耳!とリアクションするたび、周りからは失笑とため息が聞こえる。
だから、上述の事を言われるたび「私は何も知らないで間違っているんじゃないか」という不安がムクムクしていたのだった。

だが、中国に行ったことで確信したのは、誰も別に分かっていない
最初の情勢についても行った通り、自分の体験で全てを語れるわけではない。が、行っていない人間の言葉はもっと参考にならない。

散々私にアドバイスをしていた母親は、当日編でも触れた通り、時差の存在を忘れて「連絡が無い!」と、私が当局に拘束されたと信じて領事館に連絡しようとしていた。

誰にも「凄い」と言われなかったのも少しこれに関連していて、中国渡航に必要な準備等を誰も知らないのだ。「現金を使わないんだよね」みたいなこと言っても「クレカだけなんて楽じゃん」みたいに返される。
クレカはもっと使えないんだよ!!でも、行こうとしないと分からない。殺傷事件の多さも誰も知らない。

そもそも、そんな人たちの評価を「ひっくり返そう」と思ったこと自体が間違いだった。
実際にひっくり返ったのは、私側の彼らと自分への評価だった。私を「物を知らない子」と扱ってきた人たちが、別に私より上にいるわけでもない。
友人たちは率直に感想を述べているつもりかもしれないが、ただ単に私の出鼻を挫く内容だった。私が頑張っているという風にも、凄いとも思ってくれない。大したことないのに必死で大騒ぎしているとしか思わないのだ。

私のコンプレックスは海外経験の無さとかじゃなくて、こうやって悪意なく人が自分をうっすら見下している感覚、尊重されていない感覚なのだ。

私がそんな彼らに尊敬の意を抱かせられなくたって、どうでもいい。
私が私を尊重してあげなくてはいけないし、褒めてあげなければいけない。


最初に期待していたほど、大きく何かは変わらなかった。現実の状況は何もひっくり返らなかった。むしろ、人に会わなくてもいいやと思った時点で、後ずさっているのかもしれない。でも、なんかいいやと思った。彼らに依存して期待していたという時点で私は幸せになれないままだ。

noteを書くのは、そう言った意味でめちゃくちゃ良かった。自分がやったことを1から全部書いていく中で「私、結構頑張ったよな」と思えるようになった。誰にも伝わらなくても、私がそう思えたならそれでまずは良いのだ。


今は長年の夢だった寝台列車に乗ってみたいという気持ちが高まっている。

日本で乗ろうとすると、サンライズ特急が一番現実的な選択肢だが、ちょっと思っていたのと違う……と思いながらYouTubeを見ていたら、イギリスの寝台列車を見つける。そうか!海外の選択肢があった!!
行きたいのはヨーロッパだし、お金の面で実現はなかなか遠そうだが、また一つ、次の目標ができた。

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Hoshiduru
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