『イエスタデイ』(2019)ビートルズファンじゃないけどむかついた*ネタバレ
*完全に褒めてないです。怒ってる。
他のレビューサイトにも感想残したんだけど、文字数とか気にしてたら怒りが収まらなかったし、ネタバレをゾーニングしたら文章がつなげられなかったので、こっちでキレとく。(タイトルにもある通り私はビートルズファンじゃないです。知ってる曲も10曲に満たないんじゃないかなと思う。)
まあ、歌は良いよね(当然)。楽曲の出し惜しみが無いし、全体的に質が高い。「ビートルズだからね」って思ったとしても、それってとてつもなく凄いことじゃない⁇20曲くらい歌ってて、全部当たりって…。だから、「ビートルズすげぇ」とは思ったわけで。そして主人公の歌声もまた良い。
主人公のジャックはビートルズファンなだけでビートルズじゃないから、まあ盗作なんだけど、本人もそれに悩む姿もある。でも同時にビートルズがないこの世界のことを考えたら、もうすでに歌う意味、ってあるんじゃないだろうか。途中で謎の二人組も言ってたじゃない、「この世界にビートルズを教えてくれてありがとう」って。それが全てでしょう。
ラスト、ジャックは盗作を明かして音源を無料配布する。私はこの展開が嫌いだ。曲だけで売れたと思っているの?
「曲が良いだけでは売れない」描写は、現代を痛烈に表していると思う。有名アーティストの言葉とか、ジャケ写とか、そういうのにはどうしても弱い。(ジャックのオリジナル曲は宣伝不足ではない現実、苦すぎ)
でも、それだけだっけ。
彼は、彼自身の歌声であの曲を歌って売れたんじゃないっけ。
ジャックに言ってやりたい。私だったら、音痴だから、曲の良さなんて伝えられないよ。何も表現できないから、世に伝えることができない。
本当に曲だけの才能だと思われてたとしたら楽曲提供でしょう。曲や詞を書かないけど歌に感情をこめられる人は居る。ジャックがそうだったように。
ジャックは気が付くべきだと思う。タバコやハリポタが存在しない世界でビートルズを選んだ理由を。彼にその技術がある、ってことじゃないか。
だから凄くショックだった。歌手の存在を蔑ろにしている、と思った。「歌がうまいだけ」なわけないじゃん、歌手はその歌に命を込める存在なんだよ…。だからリリー・ジェームズ(役名忘れた)はついてきたんじゃん…。あの曲たちを歌い継ぐことの意義を思うなら、歌手としての自己肯定感も高めろよ。十字架を背負いながら、表舞台に立ち続けてよ。…というのはエゴなんですが。
もう一個完璧にむかついた話は、老レノンを出したことです。いや登場はむしろ切なさすら感じるファインプレーだったと思う。
口を利けない故人を登場させて、辿らなかった人生を「最高」だといわせるな。「これ以上の人生は無い」って、なんで言わせた?胸倉掴みたいよ。その世界のレノン自身はそりゃあ、その人生しか歩んでないよ。だから最高で良いんだよ。素敵だよ。でもさ、メタ的な視点を持つ観客がそれを観て、
「ジョン・レノンはビートルズにならなかったら幸せで長生きできたのに…」って思うことは考えなかったの?私は思ったよ。「ビートルズが無くても幸せ」とは読めないよ、だってジョンは亡くなったんだもん。死んだはずの人が生きてて「ポジティブな改変」はもうすでに行われている。
亡くなった実在の人間が亡くならなかった世界を描いて「『これより勝つものは無い』っていってます」。無理よ、流石に。ついでにビートルズ否定してるし、それ。ビートルズの曲や才能に対するリスペクトはあっても、個人へのリスペクトが見えない。
しかもこれ、主人公の転機として使われるシーンだものね…。だから故人の人生を勝手にゆがめて都合よくストーリーに利用するな。
故人への冒涜では?というレベルで私は無理だった。
……曲はいいし、歌声も最高だから、サントラは聴いちゃうんだよなあ…。