抗うつ薬離脱症状
恥ずかしながら離脱症状を経験したので一度まとめてみました。
離脱症状とは
離脱症状とは、反復使用していた薬剤を急に中止したときに起こる症状のことを言います。
急に中止したり飲み忘れたりして、急激に血中濃度が下がると、離脱症状と呼ばれる症状が起こることがあります。
抗うつ薬の他には、抗不安薬やアルコール、薬物依存などでも離脱症状は置きます。
抗うつ薬の中断では約20%の人が離脱症状を経験すると言われています。
離脱症状の起こる抗うつ薬
抗うつ薬にも色々種類がある中で、どの種類の薬が離脱症状を起こすのでしょうか。
まず離脱症状を起こしやすい条件としては、力価が高いこと、量が多いこと、作用時間が短い(半減期が短い)ことがあげられます。これは抗うつ薬に限らず、ベンゾジアゼピン系の依存でも同じですが、体への影響が強く、中断の影響も強く出るためです。
離脱症状は三環系抗うつ薬では少ないと言われています。三環系抗うつ薬では抗コリン作用が強いため、離脱症状も抗コリン作用の離脱となります。
一方でセロトニンの離脱が起こるSSRIが特に離脱症状を起こしやすいと言われ、その中でもパロキセチン(パキシル)がもっとも離脱を起こしやすいと言われています。
またフルボキサミン(ルボックス)は半減期が短いため、パロキセチンほどではないものの、離脱症状を起こすと言われています。
SNRIの中ではデュロキセチン(サインバルタ)が離脱症状を起こしやすいと言われています。これはカプセルしかないために、少しずつの減量が出来ないことが影響しているようです。
離脱症状
身体症状:めまい、頭痛、吐き気などの消化器症状、だるさ、しびれや耳鳴りなどの感覚異常、発汗やほてりなどの自律神経症状
精神症状:イライラ、不安、不眠や悪夢、そわそわ感
特にSSRIではイライラ感といった攻撃性や、耳鳴りやしびれといった感覚異常が多いと言われています。
ちなみにこの症状の覚え方があるようなのでご紹介します。各症状の頭文字を取って、"FINISH"
・Flu-like symptoms=インフルエンザ様の症状 (倦怠感、頭痛、関節痛、発汗)
・Insomnia=不眠、悪夢
・Nausea=吐き気
・Imbalance=平衡感覚異常、めまい
・Sensory disturbances=感覚異常(焼けるような、電気ショックのような感覚)
・Hyperarousal=過覚醒(不安、いらいら、焦燥感、攻撃性)
離脱症状の経過
一般的に、1ヶ月以上続けて服用した後に中断すると離脱症状が起こると言われています。
中断後1~3日してから認めることが多く、2週間ほどすると落ち着くと言われています。
重症の場合は2~3カ月続くこともあるようです。
離脱症状を起こさないために
薬の自己中断をしないこと、が一番大切です。
また、中止する場合には少しずつ減量していくことが大切です。
これ以上減量できない量になった場合は、隔日で飲むなども選択肢です。
他には、半減期の短い薬剤の方が離脱を起こしやすいので、まず半減期の長い別の薬剤に置き換えてから減量するのも効果的です。
離脱症状が起こってしまった時
症状が重くなければ、1~2週間で良くなることが多いので、経過観察でも良い場合もあります。
また、抗不安薬の頓服使用などでしのぐこともできます。
薬の自己中断の場合は、元の量にすみやかに戻すことで、症状が抑えられるでしょう。
参考文献
Gabriel M, Sharma V. Antidepressant discontinuation syndrome. CMAJ. 2017 May 29;189(21):E747. doi: 10.1503/cmaj.160991. PMID: 28554948; PMCID: PMC5449237.
普段児童精神科の診療をしていると、あまり離脱症状に出会うことが少ないので、改めてまとめてみました。
確かに児童ではレクサプロやセルトラリンなど、半減期の長い薬を、あまり多くない量で使っているため、漸減中止がそこまで難しくないから困った経験がなかったのかもしれないなと気付きました。