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2025年 中国エンタメ話~マネージャー編~

この話は私にしかできないかもと思ったので書いておこうと思います。忘れてしまうのが勿体無いのです。


中国エンタメ界にも業界人なら誰でも知っていると言われる名物マネージャーが数名いる。例えば、私が以前契約させてもらっていた会社の社長もその一人。彼女は俳優マネージメントの第一人者で、自身が元京劇俳優だったこともあり、契約する俳優たちを京劇俳優のジャンル分けの仕方で分けていた。例えば、「生」は男性役全般を指すが、若いイケメンを「小生」と言ったり、年配のイケオジは「老生」と呼んだり。女性役でいうと、「旦」が女性役を表すので、華やかで可愛らしい感じの女優さんを「花旦」と言ったり、落ち着いた大人の雰囲気を持つ女優さんを「青衣」と言ったりしていた。社長は「青衣」が好きだとよく言っていて、私はありがたい事にルックスがその「青衣」枠だったらしく契約にたどり着けたというわけだ。一度、なぜ「青衣が好きなのですか」と聞いたことがある。社長は、女性の俳優は寿命が短く、長く演じられるのは「青衣」枠がほとんどだから、と答えてくれた。
マネージャー目線、商品価値、そうだろうな・・・と苦笑した覚えがある。

社長のこと思い出したことがもう一つある。

マネージメントの契約後、私はいくつもドラマの仕事が入ってくるようになった。1年間で数本の作品に出ていれば十分だと思っていたのに、契約した途端に一気に5本決まった。どれも準主役クラスで、やってみたかった現代物も入ってきた。その中の一作品について、担当マネージャーが、共演者も監督も素晴らしいけど、ギャランティの低さだけがネック…とボソッと言ったのを横で聞いていた社長は、プロデューサーの名前を聞くやすぐに電話、私の目の前で2倍にしてくれた。それでも多くはないけど、これはやっておくべき仕事だと言ってくれた。確かにこれまでやった事のないコメディだった。もうすでに4本契約を終えていたから、この作品はお断りしようかという流れにもなっていたが、社長の電話で行くことが決定した。
役に関してはとても興味があった。真面目であればある程くすっと笑いたくなるような役柄だったので、やりがいがあり、とても勉強になった(そういえば、この役を演じる時にイメージしたのは松坂慶子さんだった)。撮影は相変わらずドタバタだったが、放送されたドラマは大ヒットして映画化もされた。

トップクラスの人の言うことは聞くべきだ。同じ事象を目の前にしていても、見えていることが違うのだろうなと思わされるからだ。

中国ではそんなことが度々あった。

先日会った方は歌手のマネージメントで有名な方。妹さんが歌手で、姉妹で長年音楽業界を引っ張ってこられた。

会った途端に、「りりは帰ってこないの?今、ドラマの準備しているのよ」と。
ついに音楽業界からドラマ界進出なのね、どんな話?
と聞く私。ここでストーリーを書く訳にはいかないけど、懐かしさ込み上げる。話す側も聴く側も大いに盛り上がった。

久しぶりだから、仕事の話の合間にプライベートの話も織り混ざる。
彼女の今のお住いが、私が北京で住んでいたマンションで、なんと隣の部屋だった。時期がずれているので実際にはお隣同士だった事はないけど、数年ずれたら部屋番号一つ違いだったのだ。
敷地内にあった餃子屋さんはまだあるの?とかSPAは?とか、あの頃通った店の現況を聞くと、SPAは無くなったとのこと。
「コロナでどこも大変だったよね」と言うと、
「でもその跡地を私がサロンにするから来てね」
と。

あぁ、この感じが私が知っている北京。

マネージャー業でその名を轟かせながらもレストランやホテルの経営をするのだ。しかも、タイにも経営しているホテルがあるらしく、スマホで全て監視&管理をしているのよ、とアプリを見せてくれた。予約客のチェックイン時、部屋のロックが解除され、再度ロックされた際に記録が残るのだという。すごすぎる。

話が準備中のドラマに戻り、誰が参加するの?と聞いたら知っている俳優さんばかり。その中の数人は俳優をしつつプロデューサーとして監督や脚本家を探して交渉しているという。

そう、俳優だってビジネスマンだ。エージェント制で鍛えられている。

そして、投資はどこが?と聞くと、地方政府や有名企業の名がずらり。
地方政府には、昔の街を再現するから場所を提供して欲しい、その街は取り壊さず残すから後は観光地にでも、と言ったと。
こういうやり取りを聞くのは本当に懐かしい。映像作品は時間がかかる上に、多くの人が集まるので、オフィスが必要になるのだけど、それも似たような方法で私が住んでいたマンションの一室を無償提供してもらうことにしたそうだ。もちろん彼女は自宅から徒歩圏内になるし、気が向いたら全員で上述のサロンに移動してミーティングの続きをすることだってできる。

交渉術!
仕事の仕方!!
懐かしすぎる。
何だか全てがダイナミックなのだ。

ドラマに関わりたかったらいつでも連絡していいし、今後中国の音楽業界とも関わるなら尚のこと絶対に連絡して!と。

言葉にできない程の温かみ・・・。
身内に対する優しさというか、自分事として考えてくれるこの感覚がとっても懐かしくて。
心強い。
知らない人はいないと断言できるくらい大物なのに、"絶対に”と何度も言ってくれて。日本とのビジネスは、正直あまり儲からないことも知っていて、それでもこうやって言ってくれる。
トップをひた走ってきた彼女たちは(今思い描いているトップマネージャーたち、皆女性!)、もうそのスピードを緩め、人生を楽しみながら気が向いたらドラマを作ったり、次世代を見守る立場になっているけど(とは言え、まだ60歳になってもいないという)、私の好きなリーダーの風格ってこうなの!!って思う。体育会系なとこやパワーゲームとか一切ない。
いや、むしろ掬い上げてくれるのだ。

自分に実力と余裕があるからなのよね、きっと。
周りにそんな人たちがいてくれて心から幸せに思う。
私もそうなれる様努力しよう。

憧れる人物像に思いを馳せつつ、彼女たちが築き上げた栄光をちょっと書き留めておこうと思った2025年1月でした。
新しい年、働く私たち、がんばりましょうね。



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