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余韻嫋嫋(よいんじょうじょう)音楽雑記。#1
余韻嫋嫋音楽雑記。
#1 . まつりのあと / 奈都子
「海の記憶」より
私の大好きなシンガーソングライターであり、友人でもある奈都子ちゃん。
以下、「なっちゃん」と呼びます。
「まつりのあと」はなっちゃんが2013年にリリースしたアルバム『海の記憶』の中の1曲。
この『海の記憶』は私と彼女の関係性とかそういうものを抜きにしても、傑作中の名盤だと思っている。
なっちゃんみたいに叙情的な歌詞が書ける人を私はまだ知らない。
小説のようであり、詩のようでもあり、「歌詞」という枠を飛び越えて、読み物としても素晴らしいと思う。
CD全体を通しても、シンプルな構成でアレンジがされていて、なっちゃんの歌と言葉が際立つように創られている所が私はとても好き。
テクニカルな感じとか、凝りに凝って創られたサウンド・音色がほとんどなくて、各曲の楽器構成もアレンジも、ド直球、ど真ん中ストレート!って感じ。
大好きな人を目の前にして、一瞬もその人から目を反らすことなく、「あなたが好きです!」って言ってる感じで、とにかくエネルギーの強さが凄まじい。
なっちゃんの力強く繊細な歌声と言葉がストレートに響いてくる。
『海の記憶』の中の曲はどれも好きなのだけど、特に私が好きなのが「まつりのあと」。
なっちゃんにこの曲が好きだと言ったら、「この曲が好きってやばいね。ヤバい女だ。」と言われたことがある。
私からしたら、「どの口が言うてんねん」って感じである。
(なっちゃんにだけは言われたくないよ!って言い返した。笑)
あんなに赤裸々にというか、「抱かれた」みたいな直接的な表現を使って恋愛のことを歌ってる人って山陰にはあんまりいないし(特に女性の、弾き語りのシンガーソングライターで)、男性のことを「男」って書く人もいないのよ。
(私が知らないだけかも知れないけど。)
まぁそんな事は置いといて、この曲を初めて聴いた時、イントロからもう鳥肌ものだった。
たった4小節、しかも同じフレーズ2小節の繰り返しのイントロなのに、一気に祭りの情景が浮かび、その世界に引っ張られる。
ドラムのキリッとした淡々としたリズムに乗っかる絶妙なストリングスの音色。(柔らかいのに、芯があり、とにかく色っぽい。)
そして、お祭りの提灯や屋台、賑やかでキラキラな雰囲気を表すかののようにアクセントを加えてるギターのフレーズ。
・・・この部分の音色とフレーズに、私の心は一気に捕まれてしまった。
私が心を一気に掴まれてしまったこのイントロのフレーズ。
中間部やアウトロにも出てくるのですが、なんと、イントロと全く同じフレーズで出てくるのです。たった2小節のリフレイン。
それに新しい音色が足されたり、場面に合せてのダイナミクスの変化であったりと、効果的に音楽変化を付けることで、同じフレーズと思えないほど、色彩豊かに曲を彩っているんですな、これが。
それにより、「くぅう・・・良すぎる。。。」と私の心は更に鷲づかみにされる訳です。
ちなみに、この曲は
作詞:奈都子
作曲:古城洋次
で、アレンジも古城さんがされています。
メロディーが先なのか、歌詞が先なのか分からないけど、詩とメロディーの融和性が素晴らしい。
私は歌詞を書いたことがないから分からないのだけど、歌詞とメロディーを違う人が創る場合、どちらが先であってもすでに出来ている枠の中に歌詞だったりメロディーをはめないといけないから難しいだろうなぁと思うのだけど、なっちゃんと古城さんはそれを難なく、物凄く緻密に、高度な域でやっているのが分かる。
お二人の相性というか、音楽的な感性・感覚が合った、近いものがあったんだろうなって思うし、そんな二人の素晴らしい感性があわさってこういう素敵な曲が出来たという所に、私は心底感動したし、「素晴らしい曲を生んでくれてありがとう!!」って感じです。ほんと。
この曲の構成として、Aメロで登場人物の設定、状況説明、Bメロで情景描写に変わり、サビで心情、心の動きを歌ってて。
それに伴い、メロディーもサビに向って徐々に広がっていくのが、曲作りのお手本!みたいな感じで、ド直球どストレートで潔いし、見事なんだなぁ。。。
一つの小説を読んでいるような感覚になるし、自分を主人公に置き換えてしまって、いつ聴いても胸がキュッと締め付けられる。
それに、このAメロ→Bメロ→サビに向って徐々に広がっていくメロディーとアレンジが秀逸なので、とても自然に、スッと言葉が入ってくる。
この曲の中で特に私が好きなのが
「砂糖にも 戻れない 綿あめの あまさ」
「空の雲にも なれない 綿あめの かるさ」
という歌詞。
この詩を読んだときに、「あ、この人天才だ。」と思いました。
どういう事かと問われても、私の中にまだハッキリとした解釈はないのだけど。
永遠に分からないような気もするし、むしろ、永遠に分からないままでいたい、見つからないままにしておきたいって思った言葉たちです。
なっちゃんみたいなシンガーソングライターはこの先、山陰からは出てこないんじゃないかなって私は思ってて。
だからこそ、奈都子というミュージシャンに出逢えて、なっちゃんの全盛期というか、生でその歌声に触れて、間近でその世界を感じられた私は幸せ者だなぁと、最近、より強く思います。
この先も、大切に、大切に、聴き続けたい1曲です。
おわり。