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見えない友人
子どもの頃、ある一定の人たちは、想像上の友人っていうのをつくると思う。
いうなればイマジナリーフレンドというやつ。
最近、大人になってようやく僕にもそのイマジナリーフレンドというのができたのだと思う。
というと何か超自然的な何かを信じている人のように聴こえてしまうのだけれど、特別にそういうわけではなくて。
その友人は性別も、年齢も、職業もわからないけれど確かにそこにいたりする。
この頃、帰り道、駅前のTSUTAYAで漫画を借りることが多い。
大抵、借りるのは有名な少年漫画だ。
20代になってからそこそこの時間が過ぎてから急にすごく王道みたいなのが読みたくなってすごい勢いで読み漁ってる。
3ヶ月を費やしてジョジョの奇妙な冒険を無事読み終え(6部のラストの素晴らしさよ)、次はなんだかムズムズとスポーツ漫画が読みたくなってアイシールド21を読み終わった頃には、どうにか社会人からアメフトをはじめることはできないだろうかと初心者歓迎の社会人サークルを調べたりしていた。
それもなんだか落ち着いて、読む度に面白さが増えている気分になるハンターハンターを読み直すか、シャボンディ諸島で航海がとまっているワンピースを再開しようか悩んでいる時に、ふとTSUTAYAの本棚になぜ今まで読もうとしなかったのか不思議なほどの作品が目に入った。「スラムダンク」だ。
なんで読んでこなかったんだろう。あんなにみんなが面白いというのに、学生時代なぜだか読む機会がうまく巡ってこなかったことに少し驚きながら、1巻目を借りて読みはじめると、もう日々の生活のそれ以外の時間が次の巻を手に取るまでの待機時間に思えてしまうどハマってしまった。
仕事している時も友人といる時もどこかで、早く帰りたいな〜、次の巻読みたいな〜って子どもみたいなこと考えてしまうのも新鮮な経験で楽しく過ごしていた。
ある日、そんなふうにいつものように帰り道、スラムダンクの次の巻を借りようとしたら、お目当ての巻数とその次の巻数の13巻、14巻だけが本棚からぽっかりと空いていた。仕方なしに、でもかなり落ち込んでその日は家に帰る。少し日が経ってから、またいくと、その日は13巻と14巻はしっかりとそこにあるのだけれど、今度は次の15巻が抜けている。
僕はそこでやっと気がついた。
僕が住んでいる街には今、この瞬間に、僕とほとんど同じタイミングで「スラムダンク」にハマっている奴がいる!!
それからはなんだか、その目には見えない奴の読むスピードを歩幅を合わせながら物語を楽しんでいる。最初はどこかイライラしたが、いまはもうなんだか秘密の友人を見つけたような気分でいる。
奴はどんな人なんだろうって考える。年齢は? 性別は? 登場人物だと誰が好き? 僕は小暮!って話してみたい。たぶん、それは叶わないけれど、でもそれでいいかもする。
もう少しで、僕はこの物語を読み終える。
奴の方がおそらく一足早く読み終えるのだと思う。
たぶん、昔より繋がろうと思えば誰とでも繋がれてしまう世界で、決して繋がれない同士とも別れを思いながら、明日もあの本棚へ向かう。