春はきたのか
今年の桜は早い。
もう咲いたとか、咲かないとか。
入園、入学式のころには葉がもりもりに出ているだろう。
2月の寒さはもの足りない寒さだった。吹き抜けのある我が家は、毎年寒い思いをするのだが、今年は例年になく暖かかった。
寒さにあてないと咲かない植物があるとか、ある一定の熱量で羽化する昆虫がいたりと、温度は生き物の大切な指針だ。
春は来ている。暖かいし、ウグイスも鳴いているし、つくしんぼも出ている。光だって明らかに強い。
なのに浮き足立たない世の中の雰囲気に、春はきたのか、と立ち止まる。
春は、闇の世界から光溢れる世界への通過点。あぁ、春がきた。と世界に向けて両腕を広げるようなイメージ。なのにあの、人との距離が近くて、カフェでたくさんの人々が話しているイタリアの街並みが閑散としている。夜に、イタリア人が各々の部屋の窓から歌を歌う映像を見た。もの悲しく感じる。
確実に、春は来ている。自然が一定のリズムで教えてくれている。
春は来ている。身の回りの友人と、家族と、同僚と、すれ違ったおじいさんと、犬と、電線のカラスと、ありふれた花が咲いたことを歓ぼう。太陽の暖かさに感謝しよう。光の季節のはじまりを心を開いて迎えよう。
そんなことを想ったお彼岸のはじまりの日。