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真っ白な世界
私の住むところに雪が降った。とたんに真っ白な世界の住人になった。雪はどんどん降り積もり、地を覆い、屋根を覆い、たくさんのものを覆い尽くした。
さぁ、これくらいでいいだろうかと、雪が降りやんだ時、私の住むところは天と地の境い目のない、真っ白な世界になった。
空は一日中白く、地も一日中白い。その間にいる私たちはぼぅっとした、夢見心地になっている。地から取れる作物も見当たらない。いつも歩いていた道、いつも運転していた道は見えない、仕事?今は行けない。学校?今は行けない。食べ物?なんとか、ある。いつも見ていた景色とは違う。なんだか、すべてのことから解放されて、楽になった。
そんな気分だ。
あたりはしんと静まり返っている。
新雪の中を歩く。きゅっきゅっ、きれいな真っ白な雪、ざっざっざっ、自分の歩く音だけが聞こえる。誰も踏んでいない場所に足跡がつく。鳥も飛んでいない。風も吹いていない。私だけの雪の世界。
雪の物語を思い出す。笠地蔵、ナルニア、ウッレスキーの旅、アナ雪、てぶくろ、。私もあの物語と同じ場所にいる。不思議なことは起こってもいい。こんな世界なのだから。
雪は溶けると私は知っている。だから今、ほんの少しの時間、雪の中で夢見心地でいたい。ここは不思議な世界。