ジョーティシュの起源
ヴェーダを文字で記録したとしても、ヴェーダのほんの一部分しか伝えられません。ヴェーダの深い意味は、それを本当に理解した賢者や神々の間の秘伝であるのです。
ヴェーダそのものも「生きているもの」と考えることができます。長年ヴェーダの器として生きてきた師のもとにヴェーダの学習を求めやってくる弟子たちは、自らの心を生きているヴェーダに聞いて、その深い知識で満たされます。インドにはそうしたヴェーダの伝統がいくつか存続しています。
今日、生きている人たちの中には、ヴェーダに含まれている深淵な知識を本当に知っている人はほとんどいないでしょう。なぜならば、ヴェーダに秘められた深い意味を理解する鍵は、キリストが生まれたころにはすでに失われ始めていたからです。
優れた弟子が見つからなければ、その伝統は滅びてしまうのです。
ヴェーダが誕生した当時でさえも、それを完全に理解できるのはリシと呼ばれる賢者たちに限られていました。そのため、ヴェーダの天啓を受けた賢者たちは「ヴェーダーンガ(ヴェーダの手足)」と呼ばれるヴェーダの六つの補助学を用意しました。
ヴェーダを理解しようとする人たちは、最初にこの6つのヴェーダーンガを学習しなければなりません。
ヴィヤーカラナ(文法学):顔
チャンダス(韻律学):足
シクシャー(音声学):息
ニルクタ(語源学):耳
カルパ(祭式学):手
ジョーティシュ(天文学/占星学):目
どのヴェーダーンガもヴェーダと同様に「生きているもの」であって、師の導きがなければそれを修得することはできません。
これらの知識を学ぼうとするものは、その師が敬う神を崇拝し、師や神との親密な関係を深めて、師や神からの霊感を受けられるようにしなくてはなりません。
ジョーティシュは「ジョーティシー(ジョーティシュの教師)」から伝えられる「ジョーティル・ヴィドヤー(光の知識)」です。
ジョーティシュは太陽・月・惑星・恒星といった「光の支配者たち」のあらゆる面を研究する学問なのです。
(「An Introduction to the Astrology of India」 ー Hart de Fouw )
書かれた文字は、話された言葉よりも優れていると信じている人たちは、次の話を考えてみてください。これはエジプトの神であり王であるタムスが、アルファベットを発明してそれを喜んでいるトート神に話した言葉です。
「この発明は、それを用いる人たちの心に忘却を生み出すだろう。なぜなら、彼らは記憶力を使わなくなるからだ。彼らは自分自身の一部ではない外部の文字が生み出した記録を信じるようになり、自分の内側にある自らの記憶力を使おうとはしなくなるだろう。あなたが発明したものは、記憶の助けではなく忘却の助けとなるだろう。そして、あなたはあなたの弟子たちに真理を与えるのではなく、単に真理に似たものを与えることになるだろう」
(Quoted in de Santillana)