映画『推しの子』、の巻
アマプラのドラマは全話履修済みだったので、映画は絶対に見に行くと決めていました! 良かった、間に合った。ようやくみてきましたよ。
感想は基本的にネタバレ全開で書きますので、後ほど隠すようにしますが、その前に先にひとつ。
パンフレット!
パンフレットだけはどうにかして欲しかったぞー!
色々確認したり読みたかったから買ったけど・・・
ドラマ+映画のパンフレットだったので、ちょっと高めだったのは仕方がないと思う(1800円でした)
でも!
ドラマ部分のパンフレット、どうして一枚ずつバラバラにしたの・・・?
読みにくいんだよ~あと保存しにくい!!
凝ったデザインにしたいのはわかるけど、これはないでしょう・・・
バラバラになっちゃって気になって仕方がないです。
ドラマパートも映画パートと同じように、冊子形式にしてくれればいいのに・・・
読みどころはたっぷりあったので買ったことは後悔していないのですが、こんなところで変な気合い入れなくても・・・
というわけで、以下ネタバレ感想ですので、読みたくない方はここで引き返してくださいね。
ネタバレOKの方のみ、先にお進みください。
アマプラのドラマ版のできがかなり良かったので、映画はとても期待していました。
で、見た結果をストレートにいえば、
「もうこれを公式エンディングにしちゃいなよ」
ということでした。
この映画を撮ったのは、一昨年から去年の初めくらいだったようなので、当然原作のエンディングを知らない状態で作られたのだと思います。
もちろん、原作者のお二人から、「大筋こんな風になる予定です」というのは聞いていたのでしょう。
原作と同じく、アクアはカミキヒカルと一緒に海に落ちて死んでしまう訳ですが、
・死体が上がらない
・アクアはカミキを刺す振りをしない(むしろ第3者に刺されてる)
・ルビーは狙われるけど、アイの再現のように刺されそうにはならない
・アイからカミキへの思い入れについては特に語られない(だからカミキへの同情は生まれ得ない)
・カミキが絶対悪のような描かれ方をしている(同情される要素が少ない)
などの改変が加えられていて、それ故に見やすくなっていました。
これはドラマの方から続いていましたが、ツクヨミとか元のB小町メンバーのこともほぼ描かれていなかったので、物語そのものが散漫になりませんでしたしね。
もうそれだけで100点満点ですよ。
ドラマ+映画のなかですっきり伏線回収が終わっていましたから、「腑に落ちる」と「満足」の両方が、見終わったあとに押し寄せてきました。
そう、間違いなく満足がいったのです。
その理由のひとつには、やはり俳優陣の頑張りをあげたいです。
こと映画に話を集中させれば、私は、子供時代のアイを捨てた実母を、剛力彩芽さんが演じていたことに、心の中で大喝采をあげていました。
原作の中では、
「自分の娘が美人過ぎて、女過ぎた」
ことへの母親の葛藤が告白されていましたが、この映画の中の「アイの実母」は剛力さんで説得力が追加された気がしました。
そうそう。アイのお母さんなんだから、お母さんだって美人のはずなんだよ。原作だと、ちょっとくたびれた中年女、みたいになってたけど。
美人で、同じ女として娘に嫉妬して、男好きをやめられない・・・剛力さん自身がそうだ、といっているのではなく、
「幼いながらに美人過ぎたアイの母親」
に剛力さんははまり役だった。
あの数分間の彼女の演技がどれほどのインパクトを与え、そしてアイがどれほど母親に傷つけられ、それでもやがて母親の足跡を追うように嘘で固めて媚びを売るようになっていくかを説明していたか。
剛力さんの役柄の理解度はとても高かったと思います。
Netflixの「悪役女王」はまだ全部見られていないのですが、剛力さんの女優としての能力の高さに、私は感激しました。
あと、子供時代のアイを演じた子役ちゃんが、本当に美人で、「ああ、この子が将来アイになるんだなぁ・・・」と納得しかなかった。母親におびえる生活から、人に望まれるように嘘をつくようになっていく過程の表情管理とか、もう抜群だった。
その「表情管理」といえば、主演のアクア役櫻井海音さんの演技もすごかったです。
劇中劇「15年の嘘」でカミキ役をアクアが演じるのですが、そのカミキの表情が二宮くんの演技をトレースしているとしか思えなかったし、角度によっては海音くんと二ノがそっくりの顔をしていて、
「親子だっ・・・!!!」
と叫びそうになりました。
映画を見たあと、YouTubeで二ノと海音くんの舞台挨拶映像をみつけて見ていたのですが、海音くんの「二ノの演技をトレース」したように見えた演技、実際に二ノの演じるカミキをみる前に演じていたのだそうで。
曰く、
「俳優二宮和也さんの大ファンだったので、頭の中にある二宮さんの演技を思い出して演じた」
そうで・・・え?すごくない・・・?そんな、演じて再現できるくらい二ノの演技をみてきたのもすごいけど(ガチオタか?)、実際に再現してしまう、そのテクニックにも舌を巻くわ・・・
櫻井海音、恐ろしい子・・・!(私の中の月影先生が高笑いしてますw)
それを受けて立った二ノの演技も、いうまでもなくすごみがありました。
私が特に忘れられないのは、初めてアクアとカミキが対峙したインタビューシーン。
アップになったカミキ(=二ノ)が、涙を浮かべるんですが、「涙は流さない」んですよ・・・
うん、カミキは絶対に泣かないよね(人をだますために泣くことはあっても)。解釈一致だ。
というか、あれ、どうやってコントロールしてるの?
涙が浮かんで瞳を潤ませているのに、涙ひとつこぼさず瞳がまた乾いていくの・・・怖いって。
カミキの精神の底知れなさとか、安直にいえば「サイコパス」っぽさは、あのつかみで一瞬にして表現されていました。
二宮和也、さすがだわ・・・(私の中の月影先生が(以下略))
あともう一人、忘れてはいけないのは、これ以上ないほどゴロー先生だった成田凌くんです。
「この話はフィクションである。というか・・・」
から始まり、最推しへの興奮が押さえられない感じに終わる冒頭のナレーションは、声だけで100点満点のゴロー先生でした。
さりなちゃんとのやりとりとか、かわいかったなぁ。
アイが病院に来たときの動揺は、オーバーリアクションだよっ!と笑いたくなるコミカルさもあって、これから始まる悲劇をちょっと和らげてくれもしました。
原作よりだいぶイケオジになっていた、五反田監督役の金子ノブアキさんも、監督が短い邂逅でどのようにアイの気持ちをつかんだのか、語るに充分でした。
もう俳優さんたちのことを語ればきりがないのですが、見やすい・わかりやすい・腑に落ちる・破綻がない作劇と、俳優さんたちの表情を引き出した脚色と監督の方々にも拍手を送りたいです。
映画単独でもみられるよう、2時間の内半分くらいはドラマのおさらい+ゴロ-先生とさりなちゃんパートになって、わかりやすさに配慮されていたため、その分アクアvsカミキのパートが若干手薄になった感はありましたが、ほどよくドラマの内容を忘れていた私には、ちょうど良かったです。
総じて、ドラマ&映画版の「推しの子」は、原作の腑に落ちなさを払拭してくれた分だけ、評価が甘くなりがちですが、やっぱり面白かったです。
この映画がアマプラで公開されるようになったら、ドラマから続けて何度も見返しちゃいそうです。
「推しの子」はこれから、アニメの3期もあるのでしょうけれど、映画のエンディングがこれだけ綺麗に納まったのをみてしまうと、どうするのかなぁ・・・とちょっと思います。
これは別の難問ですね。
アニメはアニメで楽しみですが、映画をお手本にして、最終回がまとまればいいなぁ、と思いました。
(1月11日追記)
書き忘れていたことをひとつ。
映画では、有馬かなとあかねの出番がだいぶ減らされていて、その分女性キャストの中ではルビーがフォーカスされやすかったのも特筆すべき点だと思います。
さりな→ルビーの気持ちの連続性も自然だったし。
それ故に、アクアが死んだあと、さりな=ルビーにちゃんとゴロー先生=アクアから「自分らしく生きていく」というバトンがしっかり渡され、そして立ち直っていく様子にも不自然さがありませんでした。むしろ説得力もあったくらい。
ああいう描き方をされると、ルビーがちゃんとヒロインであることがわかるし、物語に破綻もなく、満足度も高くなるんだなぁ、としみじみわかりました。
アクアとルビーが転生した意味にもちゃんと説明がついた気がしました(アクアが死んでしまうのは残念だけれど、ルビーに彼の意思が受け継がれているのだと表現されると、受け手である私たちも救われる感じがするんですよね。それが嬉しかったのです)