「自分の幸せ」が人の喜びになるということ【ヒプノセラピー体験談】
「自分が幸せになる」ことが、
他の人の幸せにもつながるのだと
はっきり分かった、
そんな体験談です。
気づけば海にいました。
暑い地方の海です。
白い砂浜、青い海、
そして後ろには林……森?
私の白いワンピースは
濡れてボロボロです。
あきらかに海で濡れたこと
だけは分かりましたが
自分がどうしてそこにいるのか、
さっぱり思い出せません。
そこで私は、
幸せな時の記憶を
たどることにしました。
★夕日にそまる庭、あたたかい家族
夕日が見える庭です。
木々と花々、空と
遠くまで広がる自然。
揺れて楽しいなと思ったら、
木のブランコで遊んでいました。
私は、亜麻色の髪に
黄色いリボンをつけた
10歳くらいの女の子。
一緒にブランコで遊ぶのは、
2歳か3歳の妹。
「デイジー」
と、すぐに名前が出ました。
ぱっつんとした前髪で、
よく笑う小さな可愛い子です。
母の声が聞こえます。
「リューシー、夕ご飯よ」
私はリューシー(ルーシー?)
というようです。
大きなコリー犬がいます。
私によく懐いていて可愛いです。
妹も「お姉ちゃん(sis)、お姉ちゃん」と
ずっとくっ付いてきます。とても可愛い。
古い時代です。
父が帰り、四人で夕食後、
私と妹はマットの上で
くつろいでいます。
絵本を読んであげているみたい。
テレビなんかはない時代です。
父は背の高いイケメンで、
少し調子のいいところがあります。
今日も母に何か報告していますが
「でも、そんなの良くないんじゃない?危ないのでは」
などと心配されています。
★別れ
それから何日か過ぎた、
穏やかなある日のことでした。
家に、大勢の男性が
ドカドカと押し寄せました。
「なんですか?夫はいません」
と、母。
警官のような人たちなのか、
どうやら、父が捕まって、
今すぐ来いということらしいです。
父は、悪事というより、
儲け話に失敗し、
多額の借金を負って
しまったようなのでした。
しかし、家には
それを返せる財産などありません。
おそらく家も家財道具もすべて
差し押さえられたのでしょうが、
それでもまだ足りません。
妹はまだ幼い。
取り立ての人たちは、
決して鬼ではありませんでした。
けれども、返済が足りず、
「私」が売られることになったのです。
死ぬわけじゃない。
寂しくて辛かったけど、
いつかまた家族と会える。
そう信じて、私は
仲買人について家を出ました。
家では母も妹も泣いていました。
ところが。
船で目的地を目指した矢先、
嵐にあってしまったのです。
小舟は難破。
私は運よく
割れた船の残骸にしがみつけ、
子どもで体が小さかったのも幸いに、
そのまま流されたようです。
さらに運よく、
流れ流れて浜辺についたのでした。
★原住民の村
そこまで思い出し、
「このままでは死んじゃう」
と気づきます。
食べ物と水を探さなきゃ。
でも、暑い地方らしい森は
さながらジャングルで、
どんな毒蛇や獣がいるか分かりません。
襲われる恐怖と死ぬ恐怖を比べ、
私は慎重に森へ足を踏み入れました。
幸いすぐに綺麗な川を見つけます。
細い支流だったけど、
喉を潤し、そこで思いつきました。
「もしかして、この川をどこまでも辿って行けば、誰か住んでるところに着くんじゃない?」と。
そしたら、家族のところへ
連れていってもらえるかもしれない。
私は川を辿りはじめました。
そこはさらに運のいいことに、
無人島のような小島
ではありませんでした。
今思うに、どうも半島の先っちょのようです。
川はしばらくすると幅を広げ、
さらに辿ってずっと歩いていくと、
小さな村を見つけました。
村というにはあまりに小さな集落。
人が出てきました。
「肌が黒い人だ」と
驚いたのを覚えています。
そこは、先住民の村なのでした。
★村で暮らす
その村の人たちは、
人が来るはずのない方角から
現れた私を見て、
非常に驚き警戒しました。
そりゃあそうです。
そのうえ、
肌の色も違うし、言葉も通じません。
私は身振り手振りで
懸命に事情を説明しました。
やがて通じたようで、
彼らは食べ物(とてもそうは見えなかったけれど)や衣服を恵んでくれました。
言葉がままならない中、
私はそこでしばらく
暮らさせてもらいました。
私が嘘を言っていないと分かると、
みんな本当に気安く、
親切にしてくれました。
優しい人ばかりでした。
それからどれほど経ったでしょう。
ある時、ある男性が、
私を妻にしたいと言ったのです。
彼はとても優しかったので、
身よりのない私を気の毒に思ったのでしょう。
でも、私の心にあったのは、
常に故郷の家族のことでした。
今、どうしているのか。
私のことを
心配しているのではないだろうか。
会いたい。無事だと伝えたい。
結婚してしまったら、
もう帰ることはできないでしょう。
私は男性に正直に伝えました。
片言ながら、懸命に。
彼は黙って聞いていましたが、
私のために食料を集め、
荷物にまとめてくれました。
「皆は自分が説得するから、行きなさい」と。
私は彼に感謝し、
言われた通り村を出て、
夜の間に歩き始めました。
★故郷は遠い
遠く、長く、辛い旅路でした。
道などはないので、
太陽の方向を頼りに、
言われた通りに歩きました。
彼が用意してくれた食べ物を
大切に食べました。
ありがたいと思いました。
道中、
素晴らしい花の群生を見ました。
白と青の世界でした。
朝焼けの中、
それは天国のようでした。
何日、何週間歩いたのか、
もう分かりません。
気が狂いそうなほど歩いたある日、
村が見えてきました。
言葉が通じそうな人たちでした。
彼らは私に驚き、
でも事情を説明すると
親切にしてくれました。
優しい独り身のおばあさんが、
「うちにおいで」と言ってくれました。
私は自分の住所を
知らなかったので、
故郷にどう帰っていいか
分かりませんでした。
そんな時、ある村人が
「新聞に載せたらいい」と
助言をくれました。
尋ね人、のような欄が
あるらしいのです。
皆が良い考えだと
喜んでくれました。
ところが、おりしもその頃、
戦争がはじまったのでした。
戦争がはじまると、
新聞はそれ一色です。
尋ね人なんて
載せられるわけがありません。
こうして私は数年を、
その村で過ごさせてもらったのでした。
★再会
数年後、おばあさんが亡くなりました。
おばあさんは私を
孫のようにかわいがってくれ、
財産を少し残してくれました。
私はありがたくそれを受け取り、
村の人たちにお礼を言うと、
また家族を探す旅へと出発しました。
数年の間に、私は
自分の出身地を調べ、
検討をつけていたのです。
また長い長い旅のすえ、
私はようやく、
自分の故郷に帰ってきました。
でもそこにあったのは、
変わり果てた我が家でした。
ただの木の残骸でした。
近所の人が通りかかり、
私に気づきました。
「リューシー!?お前、生きていたのか!?船が沈んだって聞いて……てっきり死んだのかと!」
彼らの話では、
私の父は早くに死に、
母と妹は仕事を探して
隣町へ引っ越したのだそうです。
「苦労をかけたのだ」
私はそう思い、
すぐに隣町を目指しました。
ほうぼう探し尋ねまわり、
ある通りで若い娘が
焼き菓子屋台の売り子をしているのを
見つけました。
デイジーでした。
私が名乗ると、デイジーは呆然とし、
驚き、泣き、喜びました。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん、生きていたのね!よかった!よかった!」
母は数年前に
亡くなったとのことでした。
会えなかったことが本当に悔やまれました。
せめて無事だと伝えたかった。
妹も、相当苦労をしたに違いありません。
「今まで苦労をかけてごめんね。今度は私が一緒にいるからね。二人でがんばっていこうね」
そうデイジーと約束しました。
私はおばさんからもらった財産で、
ある古い店舗跡を買い取りました。
二人で力をあわせて、
商売をはじめました。
妹と一緒にお菓子を作って売るのです。
やっと会えた
可愛い妹との暮らしは、幸せでした。
たくさん話し、笑い、
二人で助け合って暮らしていきました。
★死
そのうちに、
妹が結婚することになりました。
とても優しい男性で、
きっと幸せになれるはずだと思いました。
妹が家を出てから、
私は店をやめ、
細々と暮らしていましたが、
しばらくして息を引き取りました。
まだ若かったのですが、
長年の旅の疲れは
たしかに体を蝕んでいたようです。
久しぶりに会いにきた妹が、
私の遺体を見つけて泣いています。
「お姉ちゃん、どうして一人で行ってしまったの。二人で頑張ろうって言ったじゃない」
そう泣いていました。
悲しませて申し訳ないな
と思いつつ、
妹は今後も幸せなはずだから、
それを嬉しいなと思いました。
★死後
死後、私は美しい花畑にいました。
あの日見た、青と白の花畑です。
リューシーは、
あの先住民の村にいた、
結婚しようと言ってくれた彼のことを
気にしていたので、
彼の意識を呼びました。
すると、彼はあの後、
別な女性と結婚し、
幸せに暮らしたと分かりました。
私が妹と会えたことを、
とても喜んでくれました。
ほっとしました。
「もう少し早く会えていれば」
リューシーは言います。
「そしたら母に会えたかも。妹ももっと楽だったかも」
でも……
「私(今の私)」には、
彼女が「自分の幸せ」を
全く考えていないような気がしたのです。
「ねえ、あなたのことも、もう少し考えてみない?」
そう尋ねると、少し考えて、
リューシーは言いました。
「そうしてみたい」
★もう一度、幸せを考える
戻ると、妹デイジーの結婚後でした。
リューシーは
妹が出て行った店の中で一人、考えました。
「私は、どう過ごすのが幸せかしら」と。
本や好きな物に囲まれて、
ゆったりと過ごしていきたい、
と感じました。
そこである日、妹に相談しました。
デイジーは喜んで答えます。
「お姉ちゃん!すごくいいよ!そうしようよ!私も手伝うから!」
妹は我がことのように
すごくすごく喜んでくれて、
リューシーは驚きました。
そのとき、ようやく気づいたのです。
妹夫婦が手伝ってくれ、
私は店を改装し、
本と小物の店にしました。
物好きなご婦人たちがときどき訪れる、
静かな店です。
ある日、上品な奥様が
話しかけてきました。
「ここはとても趣味がいいわ。ねえ、あなた本がお好きなの?」
私はぽつりぽつりと
身の上話を始めました。
すると、奥様は驚き、興奮します。
「あなた!そのお話は、本にすべきよ!そんな体験、めったにあるもんじゃないわ!」
その女性が出資してくれ、
私はほんの少部数、本を書きました。
それを読んだ人や、ふらりと訪れる人、
そして妹や気の合う仲間と、
楽しく幸せにその後を過ごし、
私は亡くなったのでした。
周囲は皆、私の幸せを
喜んでくれる人ばかりでした。
★あらためて
あらためて思うのです。
本当に大切な人同士なら、
「幸せにしてくれること」よりも
「相手が幸せでいること」を喜ぶのだと。
つまり、私、
いえ、あなたが幸せでいることは、
あなたを大切に思う人の幸せになる、
ということなのです。
あなたは、幸せであるべきなのです。
まずは自分を幸せにするのです。
そんなことを気づかせてくれた、
前世への旅でした。
最後までご覧いただき、ありがとうございます!