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息は、自らの心なり。
息という文字。分けてみると、自と心になります。すなわち、息とは自らの心だという一文に出逢いました。
確かに、息は人の心、感情に結びついていると感じることがあります。
私はこの20年間、取材のインタビューや打ち合わせの場で、数多くの方とお話する機会がありました。正確にはわかりませんが、恐らく1000人以上になるかと思います。
特に初対面の方とお話するとき、極力メモを取りません。許可を得て、ボイスレコーダーに録音するか、それが難しい場合は最低限のメモにとどめる。
それはなぜか。相手の呼吸を見て、感じるためです。
息を合わす、呼吸を合わす。相手と調子を合わせたり、動作や気分を一致させる意です。
呼吸を見て、感じると言っても、心拍数のように、具体的にわかるものはありません。
ただ、相手の呼吸、息を感じることを意識していると、話のふとした継ぎ目がわかるようになります。
そこで、話題を変える質問をしたり、こちらの反対の考えや提案を投げかけたりすると、すっと受け入れていただけることが多い。
話を遮られたり、反論を述べられたりすると、どうしても嫌な気持ちになります。だからこそ、相手の心を感じながら、その隙間にするりと入り込む。
たくさんの方とお話をすることで得られた、私なりの技のようなものです。
冒頭で、息は自らの心というお話をしました。緊張している時や、心がざわざわする時は、深呼吸をするとよいと、よく聞きます。
詩人の谷川俊太郎さんと、呼吸の先生 加藤俊朗さんの共著 『呼吸の本』(サンガ社)では、深呼吸と呼吸法の違いが語られていました。
深呼吸は、大きく吸って~、吐いて~というように、吸うのが先で、吐くのが後。一方で呼吸法は、吐くことが先で、吸うのが後とする方法だそうです。
その一番の違いは、胸が主導しているか、腹が主導しているか。吸うときは、胸。吐くときは、腹。面白いなと思います。
加藤先生は、どちらの方法でも気持ちが落ち着くとお話されていましたが、私は、吐いてから吸う、腹主導のほうが効果があるように感じています。
怒っているときは、腹が立つと言いますし、心配や不安が募るとお腹が痛くなる。
人の感情は、お腹と直結しているような気がするのです。
だから、負の感情を息とともに、まずは吐きだしてしまって、新鮮な空気を吸い込むことで浄化する。
ラジオ体操の終わりにするような深呼吸は、どちらかと言えば、身体を動かしたあと、物理的に呼吸を整えることに適しているように思います。
息の仕方、呼吸の仕方をちょっと意識するだけで、心が調う。いつでも、どこでも手軽にできる自分の調え方ではないでしょうか。
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