17歳で40歳までのライフプランを立てていた美容師さん
前回の話はこちら。
子どもの話をし終わった後、Hさんに聞いてみた。
「Hさんのこと、聞いても良いですか?こちらを辞めた後はどうされるんですか?」
「はい、私、独立しようと思ってて。」
「そうなんですね!あれ、でも、この間もらったお知らせには、"しばらく別のことをしようと思ってる"って書いてあったような…」
「はは(笑)、そうなんです。当初はその予定でした。好きな洋服屋さんの、店員になろうと。でも、それを言ったら、昔からの友人に”は?何言ってるの?その間の私の髪、誰が切るのよ!”って叱られちゃって。」
Hさんは笑って話を続ける。
「"それもそうかぁ"って思って。実は私、17歳の時に40歳までのライフプランを立ててるんです。そのライフプランでは、"美容師として独立してお店を持つ"のは来年だったんで、それまでは他のことしてようって思ってたんですけど。」
「え!?17歳の時に40歳までのライフプランを立てたってすごすぎませんか!」
「へへへ(笑)。気持ち悪いですよね」
「そんなことないです!素晴らしいことだって思います!その話、もっと聞きたいです」
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「私、学校が嫌いだったんです。だから、高校は本当は行くつもりなくて。でも、母がどうしても"高校だけは出とけ"というので。母が言うならそうかなって、名前書けば入れるような高校に行ったんです。」
「でも、授業は聞いてませんでした(笑)。代わりに何してたかっていうと、これから先、私はどう生きていくか?ってことを真剣に考えてたんです。」
「"美容師"には小さいころから憧れがありました。かっこいいなぁって。高校になってから、”私は会社に所属するのは難しい人間だ"って気づいたんです。そしたら、美容師だったら手に職つけたら女性でも独立できるじゃん!って思って。これだって思ったんですよ。」
「高校卒業したら通信で美容師の資格とって、何年か勤めて、それから独立しようって、そう決めたんです。」
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「17歳でそこまで自己分析できて、将来のこと考えられるって、すごいですよね。」
「いや、全然勉強してなかったんで。そんなことばっかり考えてたんです。ダメですよね。」
「ううん。そんなことない。むしろ、そっちの方が大事だって思います。私はそんな、高校生の時にそこまで考えてなかったから。こんな方、いるんですね…って、驚きと感動でいっぱいです。」
実際私、ここで泣いてる(笑)
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「それで今私、独立に向けていろいろ動いているんですけど。店舗も良い場所見つかって、書類もろもろ準備して…。でも不思議な感覚なんです。自分で決めたことなんだけど、周りがもうそうなるように仕向けたっていうか。流れに身を任せてるだけって感じなんです。」
「っていうのも、独立するとなったら、家族にものすごく迷惑かけちゃうと思って、夫にはすぐには話せなかったんですね。でも、やっぱり長年の夢だったし、ライフプラン立てちゃったし。思い切って話したら、"そうだね。ライフプラン立ててたもんね"ってあっさり承諾してくれて。」
「親にも"ずっと前からそんなこと言ってたもんね。いいんじゃない。私たちも協力するよ”って言ってもらえて。土日は息子を預けることになると思うので。」
「するする物事が決まって行って、本当に不思議な感覚なんです。」
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Hさんには、うまく口に出して伝えられなかったのだが、「これってあるよな」と思った。
よく「書いたことは叶う」と聞く。
私も、今の夫と出会えたのは、「こんな人と出会いたい」と紙に書き出したから。
言語化して、具体的な目標を立てると、人間、自然とそっちに向かっていくのだ。
ただ、17歳にしてそれを実践して、ここまでその流れに沿って生きてきたっていうのは本当にすごい。
「40歳以降のライフプランはまだ立ててないんで、これからゆっくり考えようと思ってます。」
Hさんはにっこり笑ってそう話してくれた。
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あぁ、このタイミングだったんだろうなと思った。
子どものこと、自分の仕事に悩んでいる今の私。
Hさんと話しができて、いろんなことを聞いて、考えさせられた。
帰り際、「リコさん、本当に無理はしないでくださいね。お母さんがつぶれちゃったら、おしまいなんで。実際、つぶれちゃった人も見てきたので。」と声をかけてもらった。
Hさんの美容室は12月オープン予定とのこと。
美容室を替える予定はないけど、1年に一度くらいは、Hさんの美容室に行って、また話をしたいと思った。