聞くべき声。
「歳をとると、何かをひとつひとつ諦めなきゃならない。」
そのくたびれたスーツのおじさんは言った。
「それが大人になるってもんよ。」
おじさんはグラスの焼酎の飲み干し、遠くを眺めた。
ある時の進路相談。
「芸術学部なんて行っても、その先就職なんてできないんだから、考えを改めなさい。」
時代遅れの肩パッドが入った薄ピンクのスーツを着た担任の先生は眉をひそめて言った。
独立、起業したばかりの時。
「今さらバリ島のウェディングなんてやめた方がいい。大手がもう何社も進出してるから、うまくいくはずなんてない。」
知人の紹介で会ったウェディング会社のお偉いさんはでっぷりと出た腹をさすりながら薄ら笑いを浮かべて言った。
バリ島ウェディングでトップシェアになった時。
「あんたみたいな会社はウェディングの事もバリ島の事も知らないんだから、そのうち潰れるよ。」
バリ島に長く住んでいるウェディング会社のおばちゃんは初対面にも関わらず、ベロベロに酔っ払って吐き捨てるように言った。
こんな経験は山ほどした。
反対する人、諭す人、怒る人、馬鹿にする人。
言われるたびに、悔しくて、悲しくて、ムカついて、心がぐちゃぐちゃになった。
それでもバラバラになった心のピースをひとつひとつ拾い集め、「俺は大丈夫。間違ってない。」って何度も、何度も自分に言い聞かせた。
何か新しい事を始める時。
必ずネガティブな事を言う人がいる。
しかし、僕が言われたこんなネガティブな大人たちの言葉は、結果的になにひとつ真実ではなかった。
僕は何も諦めずに楽しく生きているし、芸術学部に行ったことは、ウェディングを提供している今のビジネスに直結している。
大手がいても戦う方法はなんぼでもあるし、ウェディング組数では逆転してトップシェアになった。
そして、バリ島のことはまだまだ知らないことも多いけど、最高のインドネシア人スタッフ達と楽しく事業に取り組んでいる。
だから、もしこれから何かを始めようと思う人、進路や就職に迷っている人がいたら、「誰かの意見」に左右されないで欲しい。
あなたに「成功して欲しくない人」と「失敗して欲しくない人」の声に耳を傾けてはならない。
聞くべき声は、あなたに「成功して欲しい人」の声とあなた自身の胸の奥にある心の声。
それだけで十分だ。
勇気を出して、その声を聞きに行こう。
答えは必ずそこにあるから。
では、また。