#いつか我らが理想郷をつくるその日まで
1945年 7月29日 正午
辺りは一面…瓦礫の山、焼け野原であった。
米軍による本土空襲の激しさは、日本国民の多くにとって、
その生半可な想像を絶するほど、苛烈さを極めていた。
…真っ黒に焦げた…〔大きな人形のような何か〕が、
そこら中に転がっており、人々によって積み上げられていた。
…果たしてあれは、ただの人形なのか?
…それとも、焼き焦げた人間の屍にすぎないのだろうか?
この辺りに漂う、強烈な死臭を嗅いでみれば、
誰もが皆、明確な答えを生み出せるのかもしれない。
『…ウッ…ウッ…オェェッ!!』
僕は、その余りの不快な死臭と、見た目の気味の悪さに辟易し、
近くにあった草むらの中で、思わず嘔吐してしまう。
…ここの所、街を歩けば歩くほど、
同じような光景ばかりが目に入ってしまう。
そして…僕は毎日毎日、嘔吐した。
胸焼けが止まらなかったし、喉も燃えるように熱かった。
毎日毎日嘔吐していると、身体も慣れてくるのか、
嘔吐する癖のようなものが、ついてしまって、
それもまた、僕を嫌な気分にさせていたのだろう。
僕は口元のヨダレと、ダラダラと鼻の穴から垂れてくる、
鼻水を拭く事すら、面倒になっていく。
…あの頃の僕は、生き残る事に必死だったに違いない。
『…どうして…僕たちがこんな目に遭わなきゃならないんだ…。
…全部…全部さ…あいつらが悪いだろうぉぉぉ!!』
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