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《光の中へ…》
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《光の中へ…》
漆黒に溶け込みそう…
私は闇の淵で黒を見つめる
暗黒の中から
真っ黒い手が私に手招きをしている
私は
操り人形のように…
その手に踊らさせられる
黒い手の思い通りになる私の身体
くるり
くるりと
ワルツを踊るように
回る私の身体…
身体を支え合うパートナーも居ないのに…
悲しさと淋しさをドレスのように着こなして…
私の身体は回り続ける
回りながら闇の中心へと誘われる(いざなわれる)…
真っ黒な空間に生えた真っ黒い手によって…
回るうちに
私の心に開放感が広がっていく
疲れ果て
打ちひしがれた私の心…
縛り付けられて
ガチガチに固まり冷えた私の心…
そんな心にこべりつき
雁字搦め(がんじがらめ)になっていたシガラミが
遠心力で剥がれていく
心が軽くなる
闇の中で私は跳ね上がるようなステップを踏む
まるで
飛び立つ蝶のように…
優雅に舞う白鳥のように…
私は軽やかに踊り続ける
たとえ
この幸福感がまやかしだったとしても
私は止まる術を持たない…
全ては黒い手の内にある
私は三拍子のリズムで
ステップを進める
闇の中心に向かって…
私は笑いながら涙を流す…
休んで良いんだという安堵感と
多分コレで終わりなんだという感傷に悔しさ
そんな感情がこんがらがって
私の顔に
複雑な…なんとも表現しがたい
表情を作り出す
そんな心の更に奥で
別の私は淡々と…何を思うでもなく
無表情で淡々と踊り…回る…私を観ている
あぁ…もう何も考えられない…
あぁ…もう解放されたい…
何もかもから…
早く…闇の中心へ…
真っ黒な手が私に向かって無数に伸びる…
手を
足を
首を
腹を
胸を…
黒い手がつかんで離さない…
たくさんの手に掴まれて…私は闇の中心に
ぽっかり空いた穴へ…
光の存在しない穴の中へ引きずり込まれていく…
引きつった笑顔で雄叫びのような高笑いをしながら…
今日…私の人生は終わる…
そう…終わるはずだった…
私の手を白い手が掴んだ
力強い
その手は私を引き寄せて抱きしめた
私に群がっていた黒い手が消えていく…
闇の穴がしぼんで小さくなっていく…
僅かな時間のうちに小さく…小さくなっていく…
やがて見えなくなって…消えてしまった
黒一色だった世界に彩りが広がる…
あたりを照らす無数の光
赤 橙 黄 緑 青 紫 金 銀 白
たくさんの色が世界に散らばっていく
その光景に私は興奮を覚えずにはいられない
空から一条の光が差し込んで私達を包む
まるでスポットライトに照らされたように…
生まれて初めて
私は主人公になった気分になった
死の淵にいた私は我に返る
私を胸に抱くアナタは
私の大切な人…
どうしてココに?
顔を見て
私は死の呪縛から解き放たれる
温もりに触れて
希望が心に湧いてくる
私の身体が虹色に包まれる…
何をしても上手くいかなくて…
誰もアドバイスなんてしてくれなくて…
アナタの負担になりたくなくて…
一人悩んで…
挫けて…
気力を無くし…全てを終わりにしようとしていた私…
私は一人じゃないって思えた
そうしたら
生きていく勇気が湧いてきた
支え合うパートナーがいないだなんて
そんな事無かった
私の一人よがりだった
自分の殻に閉じ籠もって
周りを見ていなかっただけ…
傍にいてくれたアナタでさえも…
私は
そんな私を恥じて謝った
笑顔で
優しく抱きしめてくれるアナタ…
さっきまで
吸い込まれそうになっていたビルの谷間が輝き出す
真夜中のビル街に光が灯る
蛍みたいに
星空みたいに
小さな光が瞬きながら
無数に輝いている…
冬の街をイルミネーションが彩る
今日は
試験点灯の日
ココは立ち入り禁止の屋上
二人だけのイルミネーション
塞ぎ込み
様子がおかしい私に気付いてくれたアナタ
本当にありがとう
言葉では感謝を言い尽くせないから
これからの行動で示そうと思う
今日
私は生まれ変わった
今日は
新たな生を受けた記念日
私は
きっと
この人となら…生きていける
白くて
か細い綺麗な手が…
私の肩を
そっと抱く…