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スモールビジネスの必須思考法「ミッシー(MECE)」

ロジカルシンキングやクリティカルシンキングに加えて、スモールビジネスを行う上で必須の思考法が「ミッシー(MECE)」です。

MECEとは、英語のMutually Exclusive Collectively Exhaustiveの頭文字を取ったもので、「モレなくダブりなく」という意味。

MECE、物事を分解し、構造化して考える際、その完成度を確認するのに役立つ。例えば、トラブルを解決する場合、状況を調べて問題箇所を特定する必要がある。その際、いくつかのポイントに分解して考えることが重要になる。この分解にモレがあると重要なポイントを見落とすし、ダブりがあると効率よい分析ができない。

グロービス経営大学院

これは絶対に必要だと考えています。
この考え方自体は、マーケティングを行う上でセグメンテーションを検討する際、ごくごく一般的に活用する思考法だということは経験者なら非常にイメージしやすいかと思います。

しかしながらスモールビジネスにおいては重要度が全く異なります。
スモールビジネスにはそもそも有効活用できる資源が少ないためです。「今持ちうる資源をいかに有効活用できるか?」が非常に重要になるわけです。

例えば、私はハムやソーセージといった加工肉販売のスモールビジネスを行っていますが、自社では製造しておらず製造面は完全に外部委託をしているという観点から言うと、プロダクトありきの「Product- Out(プロダクトアウト)」型です。

さらに踏み込んで見てみましょう。
ベーコンにベーコンという商品名を付け、それを販売するだけでは一本槍型のリスクの高いビジネスとなってしまいます。
私はどうしているか?

ベーコンの「形状」に着目しました。
「原木」という片あばらサイズ(約3kg)の原寸大のものが先ずはベーコンとしての完成系です。
これをブロックにカットする、スライスにカットする。
ここまではスーパーマーケットや一般的なこだわり型のハムソーセージ専門店でも販売されています。
私はそれを一口サイズのキューブ状にも加工しました。
これでブロック、スライス、カットの3パターンとなりました。

職人さんの毎日の製造スケジュール上、土曜日にベーコンは完成します。
そこで今度は「鮮度」に着目しました。
できたてのベーコンは当然熱を帯びています。非常に柔らかく、機械を使ってスライスすることもできません。熱が冷めると硬く引き締まるので、機械を使ってスライスし、普段販売している形に加工できるのです。
私はこれを逆転の発想で「できたてベーコン」とし、土曜日だけ購入できる特別なベーコンとしました。当然できたてが一番美味しく、冬の気温が低い時期だと湯気が上がるわけです。「加工肉は年間を通じて変わらないもの」という印象を崩しました。

次に着目したのは「販売形態」です。
普段はブロック、スライス、カットの3パターンを規定の重量で個包装し、そのパック単位で販売しています。が、土曜日の「できたてベーコン」だけはご希望の重量に応じたオーダーカットをOKとしました。もちろん柔らかすぎて機械が使えないので包丁で手切りするのですが、手切りしかできないことで店側のオペレーションは1パターン増えるだけで運用は複雑化することがありません。

そして次に着目したのは「購入方法」です。
できたてで熱を帯びたベーコンは当然最も美味しいわけで、それがいわゆるベストな状態といえます。店に行くからそれを買って帰って自宅で「ほぼできたて」を食べることができます。小売店としての「テイクアウト」です。これをどうしているか。
店内の立ち飲みスペースで、ベーコンのお代だけでお好みのサイズを一口サイズにカットし、お皿にワサビと一緒に盛り付けて提供する「イートイン」方式を加えました。飲食店では業態によって席料や手間賃としてチャージ料や自動的に「お通し」による費用請求をしますが、それも一切しません。
また時間に余裕があれば、生食用として提供するイートインのできたてベーコンに加熱して味比べをしてもらえる、という「特別な無料サービス」も付与しています。

購入方法でいうと「イートインかテイクアウトか」にもう一つ、オンラインストアがあります。冷めた状態の在庫から小分け加工して発送するのが通常のオンラインストアでの購入方法です。が、私は「スピード感」に着目しました。
「できたて」の定義をはっきりさせたのです。
私は「できたて」を完成してから一度も冷蔵庫に入っていない状態と定義しました。要はできたての切り売り販売も、その日の営業時間が終わると冷蔵庫に収めて「いつものベーコン」へのスタートが始まります。できたてであるからこそフレッシュで美味しいわけですが、経過時間とともに「いつものベーコン」となるのであれば、完成当日に自社の冷蔵庫に収まる前に発送を完了させる「速達ベーコン」があっても面白いじゃないか、と考えたのです。これで通常のオンラインストアと、完成当日に発送を完了させる「速達ベーコン」の2パターンができました。

いかがでしょう。
目の前のベーコンが何パターンにも分かれました。訴求方法が変わればお客様のニーズにもそれだけ対応ができるわけです(もちろん制約や条件との折り合いが大切ですが)。

同じように、有店舗型だからこそそれはどのような活用方法が可能なのか?で考えると「販売場所」「倉庫」「加工場」「発送拠点」「ショールーム」「交渉場所」「飲食スペース」「スタッフ育成場所」など、様々な利用方法が見込まれます。

売上の立て方もそうです。私がコンサルする方に良く言うのが「陸・海・空」の考え方をしましょう。店舗経営をしているなら陸は来店客による売上、海は業務用売上、空はオンラインストア経由での売上というように売上を上げる方法は考えられますよね、という内容です。

そのようにして限られた有効資源(商品に限らず)をあらゆるパターンでもれなく・ダブりなく考えていくことで、非常にレバレッジの効いたスモールビジネスが可能になります。

ということで、また今度。

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