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【時事】上海電力 事実検証

昨年からワイワイ騒がれている上海電力。論点が散らかりすぎて、デマの嵐になっていますので、一回まとめておこうと思っておりました。私見は最後に書きます。


01. 時系列 / 位置関係

01-01. 時系列

筆者作成

01-02. 位置関係


02. 事実確認

02-01. 落札業者は太陽光発電実績なし?

問題ありません。そもそも土地の賃借契約です。
※入札の実施要項は02に掲載します。

追記:実績ありました。
情報提供まさとさん(上海電力関係に非常に詳しいお方)


02-02. 入札参加資格を満たしていた?

問題ありません。入札参加資格は「納税に滞納がない事」です。


02-03. 予定価格が公開されていたのは?

土地の賃借は適正賃料算出のため、コンサルなどが前もって地価から算出して公示するのは特段珍しい事でもありません。予定価格+1円というのも同様です。


02-04. 入札そのものが非公開?

北村弁護士のツイート参照。

入札情報サイトに普通に掲載されていますね。


02-05. 実施要項配布から入札まで18日?

2012年11月16日から入札の12月3日までは18日で、スケジュールがタイトすぎるという指摘がありました。通常の競争入札の場合、公告期間は10日以上と定められています。そもそも18日程度の期間で入札を行う事は特段珍しい事ではありません。が、この件は余裕をもって10月10日には告知されていました。当日のツイートもあります。


02-06. ステルス参入では?

入札に参加していなかった上海電力がいつの間にか参加していた件。これを不審に思われる方も多かったようですね。これも問題ありません。

業態の変遷

・入札に参加した業者が契約締結後に業務提携
・民間企業+民間企業の提携に行政は関与せず

そもそも自治体は外資を拒絶できません。ですから「堂々と上海電力という名称で参加していたとしてもOK(ステルスにする必要がない)」です。
これについては後述。


02-07. 事業形態変更の届け出遅延

上記06の項目で上海電力が後発で参入してきていますが、この件を市に報告するのにタイムラグがあったようです。これに関しては高橋洋一氏が解説しておられます。大阪市からしたら「55万円の賃料を払ってくれてたら、多少遅れても問題ないよ」というところですね。

まあ、工事が遅れても、どこの会社が参入してきても、結局大阪市は痛くもかゆくもないし、納税者にも影響はゼロですしね。


02-08. 咲洲を中国に買われる?

ただの賃借契約で、20年の契約期間が経過したら更地で戻ってきます。契約期間は2013年1月1日~2033年10月31日までで、あと10年程です。
売却されたわけではありません。


02-09. 上海電力を大阪が招致?

ここに「招致いただいた」という文言があったのが問題視されました。これぞまさに「自治体が外資を招き入れた証拠だ」という論調ですね。
下記画像がそれです。

これは日本語で記載されていますが、では原文はどのように記載されているでしょうか?

「该项目由大阪市招标」がその箇所に該当します。「この事業は大阪市による入札案件」という意味となるようです。が、注意いただきたいのが「これに応札した」という意味の記述ではないとの事です。
(私も中国語はわかりかねますので、受け売りです)


02-10. 外資排除できない理由(会計法)

大阪市は「上海電力が仮に最初から入札に参加していた」としても、外資だからと言って排除は出来ないです。音喜多駿氏のブログから抜粋します。

音喜多駿ブログ

02-11. そもそも何故メガソーラーなのか?

歪な形であるのと、夢咲トンネルの上なので大きな建造物が建設できないからです。軽量の太陽光パネルなら負荷に耐えうるというところでしょうか。


02-12. 異常電流でブラックアウトの危険?

まあ、これはネタ的に。

ソーラーパネルだから発電量は天候次第。夜間や降雨、積雪で不足することはあっても、一気に負荷をかける「異常電流」を作り出す方法が無いです。


02-13. ペースメーカー異常が出る危険性?

あれは電池で動いていますw


02-14. 外資がインフラを握るのは怖い

インフラはあくまで関西電力です。そこに電力を販売している形。言うなればメーカーと下請けの関係です。では、一応、関西電力も含めた大阪府の電力供給事情を確認してみましょう。

筆者作成 ※209箇所全部だと文字が小さくなるので上位70箇所

【大阪府全体】
 発電所数:209箇所
 出力合計:5989.65MW
【咲洲メガソーラー】
 順位  :63位
 出力数 :2.3968MW
 全体における割合:0.04%

そもそもメガソーラーなので「過剰に電力を送り出す」も不可能ですし、大阪府の0.04%の出力ですし、直接住民に送電されている訳ではなく「関電に送る」です。危険性ゼロです。


02-15. 大阪をモデルに上海電力進出?

2014年05月18日、奇しくもこの記事の日が「上海電力日本が大阪南港発電所の竣工式に出た日」ですが、この時点で福島県に既に土地が買われています。この年の1月のようです。比較しますと下記の通り。

大阪 / 咲洲:賃借契約、5ha
 福島 / 西郷:土地購入、59ha

上記は民間なので入札ではない、という反論もありそうですが、他の自治体も大阪より先に中国資本の太陽光発電を行っているケースはそこそこありそうです。


02-16. 国防動員法の危険性?

中国絡みの話の時に頻出の「国防動員法」も語られました。

中国には2010年に成立した国防動員法という法律がある。
・中国政府が「有事」と認定すると、全国人民代表大会(全人代)常務委員会の決定の下国防動員令が発令される
・国防義務の対象者は、18歳から60歳の男性と18歳から55歳の女性
・国務院、中央軍事委員会が動員工作を指導する
・個人や組織が持つ物資や生産設備は必要に応じて徴用される
・有事の際は、交通、金融、マスコミ、医療機関は必要に応じて政府や軍が管理する。また、中国国  内に進出している外資系企業もその対象となる
・国防の義務を履行せず、また拒否する者は、罰金または、刑事責任に問われることもある

国防動員法は2021年10月の全人代で、「国防に関する動員の決定や変更について法的手続きを不要にする」と改められ、さらに柔軟な運用が可能になった。国防動員法は中国国外に住む中国人や中国企業にも適用される。

Hanada Plus

……あそこの場所、無人なんですが。


02-17. 橋下氏「太陽光は儲かる」発言

この儲かる事業を外資に渡しているという論調のツイートも散見されました。では、どこが俎上に上っていたのでしょうか。

大阪市会議録検索システム

この画像の上部の箇所がよく取り沙汰されていましたが、下まで読んでみましょう。「此花区民の皆さんに還元をしていこうと思っています」とあります。

大阪市此花区→夢洲
大阪市住之江区→咲洲

単なる勘違い、誤読でしょう。


02-18. 橋下氏1人でやっている?

「いくら調べても、日本維新の会とか大阪維新の会の方が、この異常な入札に関与した形跡がない。橋下さん一人でやってる。橋下さんが、当時の大阪市の港湾局の幹部に指示をしたり、あるいは協力をさせたりして、この異常なことが起きているんだから」とおっしゃっていましたが、橋下氏本人も関与した痕跡がありません。


02-19. 副市長に責任を押し付けた?

これも某氏が「最終的には副市長案件という形にするのではないか?」という記載で物議を醸しました。これ、おそらくは「政治家が政治家秘書に押し付ける」イメージを持たれた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
実際は「膨大な決裁の役割分担」です。そもそも咲洲の件は小さい規模の土地の賃借契約なので、市長決裁までは必要なかったのではと。


02-20. 当時、副市長会議はなかった?

出所は木下市議、拡散元は山口敬之です。2012年時点で「副市長会議」は存在しなかった、それが出来たのは2013年4月1日という論旨です。

ばっちり議事録ありますね。おそらく「副市長会議」という呼称の制度はなかったものの、実務として副市長主体の会議そのものは行われていて、議事録も公開されていたのでしょう

追記:副市長案件情報追加
なぁさん、情報提供ありがとうございます。


02-21. 村上副市長が関与している?

…と山口敬之氏は疑っていたようです。

では議事録を。一度も村上副市長の名前は出てきません。


02-22. 橋下氏「説明責任」ツイート

まずはこちらをご覧ください。これを読んで「じゃあ、説明責任を果たせよ」という論調のツイートが散見されました。

「政治家の失敗はもちろん本人が、そして役所の失態の場合でもトップの首長が責任追及を受けるのは当然」は、文字通り失態があった場合の話です。では、どこに失態があったか……?ないですよね?


02-23. それでも橋下市政に責任が?

それは自治体の方で「拒否」が出来ないです。立法府マターですね。「法的に問題がなければいいのか!」とおっしゃる方が時々いらっしゃいますが、逆です。「拒否したら違法」になるんです。

03. 事実確認 その他

03-01. 大小というアカウントは橋下氏?

これに関しては広本さんの記事を参照。面白いので是非w


03-02. ひろゆきVS百田氏

まあ、是非読んでくださいw


03-03. 完膚なきまでに勝っちゃう

勝ってもないし、チェックメイトでもありませんでした。


03-04. 情報の初出は有本氏?

有本氏が「このネタを掘り始めたのは自分」的なお話をよくされています。

一昨年も触れておられます。

引用元は有本氏が上海電力を掘り始めた「アンカー」という番組の事を書いていて、2014年7月2日の投稿です。では、これより前にメディアや言論人や雑誌などが取り上げていなかったか確認してみましょう。
2014年5月18日の保守速報です。これはツイートしている方の文面を読むとTV朝日の「報道ステーション」の内容を受けてのようですね。

こちらは大阪ではないですが…AERAは2014年1月20日に「今週号の内容」として福島の上海電力の土地購入についてツイートしています。


03-05. 脱法的スキーム?

有本氏は上海電力の参入を「脱法的」と表現しています。脱法とは「法律に触れないような方法で法律で禁止していることを行うこと」と定義されていました。

・入札に違法性なし
・入札情報も公募で開示されていた
・外資が携わるのも合法

「本来違法な行為を、うまく法の目を盗んで合法的に処理する」が脱法行為ですが、私的には「まったく違法性のないものを違法性があるようにミスリードさせる」表現だと思います。批判を受けたら「違法だとは言っていない」という保険にもなりますね。実に便利な言い回しです。


03-06. 山口氏、橋下氏と中国の繋がり断言

これ、責任取れるんでしょうか。文字起こしも貼っておきます。


03-07. 吉田康一郎、外患誘致罪を断言

上記動画を見ていましたところ、見逃しがちですがかなり際どい発言がありました。以下文字起こし。

twitterには「外患誘致罪」を気やすく使う方が結構いるんですが、区議がこれを言っちゃうのはかなりまずいと思います。

ベリーベスト法律事務所

合法的に参入して、国の制度でも制限できなくて、そもそも関与の痕跡すら出てきていないのに、外患誘致ってひどくないですかね。外患誘致、刑法では「死刑のみ」という刑罰ですし、その重さ故か「過去に1例もない」んですよね。

太陽光発電の土地を合法的に賃借して「死刑一択の犯罪者」扱いですか。
意味わかりません。


03-08. 今更乗ってきた吉野敏明

少しタイミング遅くないですか?しかも山口氏、まだ「大阪の電力を握られている」という論調で…引っ込み付かないんでしょうかね。


04. 私見

ざっくり書くと「橋下市長時代に、大阪のに中国の会社が発電事業で入ってきている、怪しい」を調べたところ下記の通りでした。

・入札は適正に行われている
・違法性なし、入札もオープン
・橋下徹は微塵も関与していない
・そもそも外資排除は不可能、そこは立法マター
・電力の出力も大きくないし、危険性もゼロ
・大阪以前も外資メガソーラーはある
・国防動員法も何も、あそこは無人

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