【感想・映画】PERFECT DAYS
2023年公開 ヴィム・ヴェンダース 監督。
役所広司 主演。
予てから気になっていて、やっと観れた映画。2024年最後の日に出会えてよかったと思った作品です。
以下ネタバレを含みます。
まだ観たことない方は、ぜひ映画をご覧ください!
1.優しい映画
「なんと優しい作品なんだろう」
映画の冒頭ですぐに出てきた感想でした。
描かれるのは1人の「平山」というトイレ清掃員として働く男性の、素朴で、丁寧な日常。
「こんな生活素敵だわ〜、ほっこり」
だけれども、その丁寧な日常が、2回3回と繰り返し描写されるにつれ、潔癖とまで言えるぐらいの丁寧な日常に至った不穏な気配、苦悩が伝わってきました。
私は毎朝決まった上着を身につけ職場に向かい、自席につくとハンドクリームを塗り、お決まりのポシェットをつけて仕事を始めます。体を仕事モードに切り替えるための、これから始まる大変な1日に覚悟を決めるためのルーティンです。
映画の公式サイトにこんな一文がありました。
繰り返しの中に身をおくと 心は平穏になっていく。
きっと平山のこの異常なまでに丁寧な生活も、平穏を求めたくて決断した結果なのではないか。何かに苦悩し、覚悟した末のものなのではないか。そんなふうに自分の経験と重ね合わせながら観ていました。
苦悩を経験しながらも、なんともないかのように、自分の心の平穏が得られることに最大限の注意を払いながら生活する。(これはかなり、自分に寄せた勝手な解釈が入っています。)
私だけじゃないんだ、と思わせてくれるという意味で
「やっぱりこれは、優しい映画だ」と感じました。
2.平山と私の決定的な違い
そんな風に、自分を理解し、寄り添ってくれているような感覚になる一方で、
これは平山にあって私には無いものだな、と強く感じた部分がひとつだけありました。
トイレ清掃中の札が置いてあるにも関わらず、気にせず入ってきて、しまいには邪魔そうに出ていく利用者。
迷子を助けた平山が「トイレの清掃員」だと気づいたとたん、嫌そうな視線を送る母親。
これらに対して平山は全く動じないのです。むしろ、その時に見える木漏れ日や、子どもの無邪気な表情に対して、嬉しそうな微笑みを残すのです。
自分だったら、絶対見返りを求めて、イラッとしてしまう。ネチネチ根に持って、友人に愚痴を言いたくなる。
平山と私の違い。それは、きっと「自分の幸せを信じきれているかどうか。」
平山は、
自分が幸せでいるためには何が必要かを分かっている。
自分の幸せは他人がどんな評価を下すかには左右されないと知っている。
私はそう解釈しました。
3.やっぱり、優しい映画
最後の最後の数分間、とても印象的なシーンが映し出されます。
この映画を見たことがある友人は「このシーンだけ、不思議だった」と感想を残していました。
言語化不十分だった私は「ふむふむ」と聞いていました。が、改めて整理してみると、私にとってこのシーンは「安心感」「エール」に繋がるものでした。
これまでほとんどが無表情か微笑み(、一瞬怒り)だった平山が、コロコロと表情を変える最後の数分間。「自分にもこんな思いがあるんだ」「何も常人離れしているわけじゃない」「いろいろあっての今なんだ」「苦しくないわけではない」「だけど、そういうのも悪くないだろ」と平山が平山自身に言い聞かせているような、同時に私にも伝えてくれているような。そんなシーンに感じました。(と、同時にこれがプロの役者か…という感動。)
見る度に受ける印象は変わるのかもしれません。
見る人によっても変わるのだと思います。他の人がどんな感想を持つのか気になります。
これ以外にも細部を拾うとたくさんたくさん解釈が出てきます。細部に気づく度「ねぇねぇ」とお話したくなってしまいます。でも、ひとつの記事にしようと思うとこれが限界のようです。
この映画に出会えてよかった。
出会えてよかったと思える映画に出会えてよかった…