【読書】タナハシ・コーツ「世界と僕のあいだに」
「世界と僕のあいだに」という本を読んだ。難解。アメリカで黒人として生きることのタフさについて、著者が自身の息子に語りかけるような形式で記された1冊。語り口は優しいが中身は難解であった。アメリカにおける黒人が置かれた状況についてはBLACK LIVES MATTER運動などで取り上げられているが、本書は著者自身が黒人としてアメリカを生きている人間であるという特徴がある。と同時に、自分が子どもの頃から過ごしてきたこの不利な境遇を変革することができず、自分の息子に再生産をせざるを得なかった無念さも感じられるように思われた。
黒人が法律によって守られないとするならば、彼らは自分で自分の身を守る必要性が出てくる。そうすると、アメリカは銃を持っても良い国なので法律という制度に頼るのではなく銃などの力に頼る者が現れてもおかしくない。そのため、ひょっとしたら相手が銃を持っているかもしれないと思って対応するのは、やむを得ないことであると考えられる。
しかし上記のプロセスで問題なのは銃を持っていることではなく、法律によって守られていない制度にあるのかなと思う。仮に白人が法律によって守られていない国があったとするならば恐らく白人のほうが銃を持つことになるだろうから、その人が黒人であるか白人であるかは恐らく本質的ではなく、法制度が誰を守っているか(守っていないか)にあるのだろう。
BLM運動によって上記の問題がどの程度解決されるかは分からないが、制度的な問題が対人関係を毀損するようなことは誰にとっても良くないことだと思うので、早くこうした問題が過去の話になってほしいなと思った。