最後に、どんな言葉をかけようか。――湊あくあ卒業ライブ「あくあ色に染まれ!」
人がバッドニュースを受容するのには、ある程度の時間が必要だ。突然の別れはあまりに悲しい。
彼女は最後の1日まで毎日「また明日!」と思い出を増やしてくれた。だから、卒業が告知されてから最後の一曲を歌い終えるまでの23日という時間は、十分すぎるとは言えずとも、きっと多くのファンが卒業を前向きにとらえられるようになったのではないだろうか。私もその1人だ。
進水式、つまり船が初めて港を出て大海原へと進む海の儀式では、シャンパンを割る慣習があるという。シャンパンはラベルがあくあ色だったのでモエのロゼにした。
これが門出の祝いなのか、平穏を祈るべきなのか、感謝なのか、彼女にかける言葉は何が一番適切か?最後まで迷った。
ここからは湊あくあさん(以下あくたん)の、卒業ライブ「あくあ色に染まれ!」の内容とそれに関する雑感です。
OP~インタビュー
かわいい。
受け答えの合間に何ともつかみどころのない独特な間がある。
ウン…ウン
ファーッ↑
これぞあくたん。
腹を割ってYAGOOと話す
Q. 私湊あくあはホロライブプロダク◎$♪×△¥○&?ホロライブプロダクションに貢献できていましたか?
A. ホロライブプロダクションというよりかはやっぱり、湊あくあさんというタレントさんが(中略)色んな若い人にとっての憧れの存在になれたんじゃないかなと思っています
↑ここがすごくよかった。
マネちゃんへお手紙~44.5
昔のあくたんはやっぱりめっちゃガキで尖っていて時々通じない日本語を使ったりしてたんだなあ。彼女を伝説のアイドルたらしめるのに、スタッフの尽力は不可欠だったのだ。
ところで、卒業ライブで30秒の尺をかけて体重測定するアイドルが他にいるんだろうか。
ライブ本編 コラボパート
①『帰り道は遠回りしたくなる』
2期生全員で。
Cメロ、あくたんと反対方向を見据えた4人が一人ずつ前に出て、語り掛けるように歌うとこが良かった。
②『ロケットサイダー』
あくぺこ。
前夜、落とし穴にハメたりホロライブ本社を爆破して喜んでた2人とは思えないよな。
③『ラブポーション』
母娘。
船長がハイトーンをめっちゃ頑張っていた。あくたんのキーに合わせたかったんだと思う。
サシの絡みはこのペアが一番好きだった。
④『Little Busters! ~TV animation ver.~』
フブちゃんと。
上手を向いてひとり虚空に歌うフブちゃん。
周りを見回したあと、下手から駆け寄って背中を叩くあくたん。
ここで泣いた。私にとっては原曲も刺さりすぎてて。
⑤『サマータイムレコード』
Startend。
2番、スクリーンのVJいいなーと思って眺めてたらサビでまた泣かされた。反則だって。
個人的に、Startendは甘苦い思い出だったからこそ今があると思っている。けれども、チャンピオンを獲ったあのスクラムのマッチがあって本当に良かった。そんなことを考えながら大サビを聴いていた。
Startendについては、語り尽くせないのでいつか記事を書くかもしれない。
⑥『キズナトキセキ』
ホロライブJP全員。
前夜にアップロードされた、JP全員と歌う曲。愛されてるよ…
手を振って扉の向こうへとめいめい引き返していくホロメン。そしてステージにあくたん一人が残される。もう旅立つ時間なのだ。
ライブソロパート
⑦『あくたんのこと好きすぎ☆ソング』
⑧オリ曲メドレー きらきら~あいわな~ヨーコソ! Sweet carnival!~エイムに愛されしガール~プリンセスキャリー~恋愛ストラテジック~君の最推しにしてよ!~未だ、青い~uni-birth~For The Win~海想列車
最後とは思えないほど、腕を振ってはしゃげるセトリだった。代表曲だけフル尺でやったって盛り上がる。でもどの曲も愛されていて、持ち曲数を考慮するとサビの全曲メドレーを選択したのは本当に英断だ。あの"特別な1曲"を殿堂入りとすると、私が特に好きなのは『あいわな』『プリンセスキャリー』の2曲なのだが、聴くことができて本当に良かった。
蛇足だが、セトリに関して「カバーソング」と「自身のオリ曲」で固めたのもファインプレーだ。他ホロメンのオリソンや全体曲を入れてしまうとその曲に「卒業ライブで歌った曲」という意味付けがなされてしまい、これは必ずしも幸福ではない。
⑨『#きみいろプリンセス』
⑩『#あくあ色ぱれっと』
Junkyさんによる『#きみいろプリンセス』は同『#あくあ色ぱれっと』のアンサーソングであることが明言された。デビューソングとラストソング。
わためいとの私にとってはまた特別な想い入れのある曲だ。
デビューシングルでありながら不思議と、アイドル・湊あくあを最も体現した曲だったと思っている。
伝説になっていく彼女を、吹いていく風をつかもうと手を伸ばすような気持ちでうすぼんやりと画面を眺めていた。
偉大なる昭和の伝説のアイドル、山口百恵さんは、人気絶頂のなか引退を表明し、ファイナルライブでは深々と一礼をし、ステージの真ん中にマイクを置いて舞台の裏へと去っていったという。
あくたんはアイドルとしてツインテールを結ぶそうだ。ツインテールをほどき、満面の笑顔で、アイドル湊あくあの伝説の物語は終幕した。
おつあくあ。いってらっしゃい。
アフターライブの余談
名状しがたい感覚で胸が満ち、これ以上配信など観る気にもならず、お酒をあおって布団に向かった。彼女がいなくなった世界も時は流れていく。
これ以上の感情が入り込む余地などないと昨晩は思っていたが、もう少し筆を執って記しておきたいことが3つほどあった。
湖南みあ(ななしいんく)さんの卒業撤回。
敢えて8月28日の発表とした経緯と真意を推し量るのは難しいが、ななしいんくがまたしても大きな前例を作った。この柔軟さは本当にすごい。天音かなたさんの歌ってみた「青のすみか」が公開される。
かなたそはあくたんの密かなファンだったと明言していた。もっと絡みに行けばよかったとも。本譜の録音はかなり以前らしいので狙った選曲ではないようなのだが、歌詞は怖いくらいマッチしている。
前日でも一週間後でもなく8月28日に公開したこと、そして概要欄をみるに、やはり特別な感情がこもったのではなかろうかと推測する。22時から白上フブキさんが「RE:地獄銭湯」を実況配信。
最後に筆圧強めに書きたいのはこれだ。
フブちゃん(とおかゆん)だって心が動かされただろうし、このタイミングで配信を休んだって誰も何も言わない。逆に、配信することでいわれのないそしりも受けよう。でも、今晩配信することを選んだ。
私のように無音のなか布団にもぐった人もいよう。観たくない日は観なければいい。しかし、喪失感や空虚で沈み込んでいるファンだって多いはずだ。そこに日常の配信が転がっていることで、どれだけのホロリスが救われたか分からない。
配信のチョイスも秀逸だ。定番ホラゲメーカーの最新作。雑談やマイクラならきっとアンニュイな雰囲気になってしまうし、真剣に取り組むゲームも場違いだ。単発のホラーゲームならば初見さんでもとっつきやすい。
この狐はどれだけ度量が深いんだろうか。
待機所で他タレントの今晩のライブについて感想を述べた時、それは鳩行為に該当する。御法度も、いや強い言葉だって今日は赦すよと言うのだ。
今この行動が起こせるホロライブメンバーは、辛いも酸いも散々舐めてきた白上フブキのほかにいないかもしれない。感服してしまった。
愛したアイドルの卒業ライブ、すさまじいカタルシスだった。「ホロライブに入った時から、最後は輝いて終わりたい、って思ってました」。最後の灯を燃やし尽くすかのようなその明るい輝きに、後追い卒業が出てしまわないかと杞憂が脳裏をかすめてしまうくらいには。これはきっとホロライブにとっても大きな変化の一歩だ。
思い出はアーカイブに綴じてある。だから明日は新しい配信を開こう。
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