1件につき50万円いただきます。
私は極妻として20数年生きてきましたが、その間に夫はと言えば
刑務所に出たり入ったりの繰り返しで娑婆にいたのは3分の1ほどだったでしょうか。
ですから夫のいない間の組は私が取り仕切っていました。
夫が残していくのは借金だけですから、夫が逮捕された瞬間から金策が始まります。
夫がいないからといって仕事ができませんでは組の存続はあり得ません。
夫がいなくても「どんな仕事でも構いませんから回してください。その報酬は一件につき50万円頂きます」
ホストに狂った奥さんがホストと別れるようにすることや、女性がらみの問題、家賃滞納者の追い出しなどの簡単なもの、とにかく50万円で引き受けますとお願いして夫のいない組を守っていました。
家賃滞納の追い出しは簡単だと思っていたら、ある時、滞納者がやっべえ~^組の人間だったことがありました。
その時には今回は「殺す(やるか)か殺されるか(やられるか)」腹をくくらねばならない物件がありました。
映画、仁義なき戦いのモデルになった組が相手ですから、若い者たちはビビッて、、「姐さん、、相手が悪すぎますよ。おやっさんもいないときですし断ったらどうですか。」
「バカ野郎、、親分がいませんから仕事引き受けませんなんぞ言えるわけがねえだろが・・」
みんな腰が引けてるから、、家賃滞納してるゲーム屋に行くのに二の足を踏むから仕方がない。
ゲーム屋の前で若い者を待たして私はひとりでゲーム屋に入っていきました。2~3人いた若いもんに「銭も払わんで商売できるほど世の中甘くはないだろが、とにかく一週間待つから、その間に荷物全部出しとけ。」
「一週間して来たときに荷物があったら全部ぶっ壊して放りだすぞ、ええな。」
家主さんには一週間が経つまでは相手がどう出るかわからないから気を付けるようにお願いして、若い者にも一週間は夜の街に出るのは控えるように言いつけて、私自身も組事務所にかちこまれたりなんかあってもいけないから事務所で気を張って過ごしましたが、約束の日にゲーム屋に行ったら荷物がきれいに片付けられていたのでほっとしたものです。
もう一つの忘れられない案件は、女がらみの件で簡単なものでしたが、そのときは簡単でしたがその後、その組の組長に会った時にぞっとした話です。
この組は武闘派で有名な組でしたが、いつものように一人で話に出かけました。
「尻軽女の戯言にびた一円も払う気はない。」私はきっちり理由を並びあげて向こうが言い返せないように話したけれど、それでも相手はビックリ、、しかし、話を聞けば私に頼んできた男も隠していたことがあったので、「お前、わしに隠してたことがあったから10万円はだせ。」といって「今回は10万円だけはお渡しします」というとしぶしぶ納得しました。
そこには別の組の副組長が同席していて、「姐さんは面倒やいう話は聞いていましたが、噂以上にめんどい人なんですね。」嫌味みたいなこと言われて
その話はついたのですが、数年後、その組の親分と夫が一緒に飲んでいるときに同席することがあって、「姐さんがうちに来たときの話ですが自分がいたら、あれでは済ませなかったですけどね」
と言われた時には、、ぞわあ~~としました。
さすが武闘派の親分です殺気が違います。
あの時に、、「この親分がいたら殺されるか殺すか、、どっちかだったろうな。」
私は自分の運の良さをつくづく感謝したものです。
1件につき50万円と言っても大きな案件には報酬500万円というときもありました。
こういう案件をいただけるのもどんなに小さなことや面倒なことでも引き受けて成功させたからこそなのです。
それには常に命のやり取りを覚悟せねばならないのはいうまでもありません。