悪事の報復

夫は常々、、「死ぬまで極道をしたい。」と言っていました。
今から考えると昭和残侠伝ですよね。
極道が極道らしく生きられた時代だからこそ、そう思えたのでしょう。
時代が移り変わり人の考え方も変わり、人情よりも金銭優先になっていくと夫の考え方では極道が極道として生きられない世界になりつつありました。
そんな葛藤を繰り返す日々の中で事件は起こりました。
日本最大の組のナンバーワンとツーが殺害されるという大事件は起こったのです。
もちろん、夫は数人と共にヒットマンとして地下に潜りましたが、、相手に遭遇することができないままに事件の幕はおろされたのです。
その後、、二代目を決める組の中でごたごたが起きて、そのあおりの中で夫に絶縁状が出されました。
それは突然のことで青天のへきれきというのはこのことです。
理不尽なことだと思おうといったん絶縁状が出されたら受け入れるしかありません。
私はこの時に、この世界の汚さをいやというほど思い知らされました。
昨日まで、きょうだいと言い合っていた人間が「組の看板をおろせ」と言い放ち組に関連するものは全て剥奪して生きました。
もう極道をすることもなくなったのですから預かっていた武器関連のものはもちろんのこと看板もバッチも不要ですから引き上げて行ってもらってもなんら文句はありません。
しかし、、倒れたライオンに群がるハイエナのように若い者にいれた入れ墨代を払えとか難癖をつけて金銭を要求してきたときに私はこれほどに弱みに付け込む汚い連中の仲間だったのかと嫌気がさしました。
自宅も名義を変えるように何度言っても、、「わしの住んどる家にはだれも手はださん」なんぞと甘いこと言ってるから、家にまで手を出されて裁判したけど結局裁判の時に多くの組員が座って、証人に威圧感を与えるものだから証人が真実を話してくれず、結局最終的に家も出なくてはならず、、借金がある状態で堅気にならざるを得なくなってしまいました。
38坪の借家を借りて引っ越しをしたときに、次女が「こんなところで人間が住めるの?」と言った時には惨めというより汚い世界から抜け出す代償がこれなのだと自分を納得させたものです。
絶縁状が出されたことで私の極妻生活も終わりを告げ、、いったいどんな生活が私を待っているのでしょうか。
不安の中で始まった堅気の生活は私の未来を全く違う世界に誘うことになりました。

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