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生物の左右性についておぼろげに語る

少し前に、ぼけ~っとテレビを見ていたところ、以下のような番組に出会いました。

中身の概要は身体の左右性は胚発生の段階で、行動の左右性は経験的に決定するという、専門家の皆さんならばよくご存知である内容を分かりやすく伝えていました。(母は全然わからんって言ってましたがw。)

実のところ、私も学生時代の研究はこの形態形成の左右性に関わる研究をしていました。そこで、色々懐かしい気持ちになったので当時の記憶を絞り出して記事を書いてみます。

※間違っていたらこっそりコメントで教えてください・・・


生物は左右相称なのか

私達ヒトの身体や他の様々な生物の身体は、一目左右相称なように見えます。一般的には目・耳・腕・足は二つが両側の同じ位置にありますし、鼻や口のような一つしかない器官は身体の真ん中にあります。

しかし、身体の内臓は左右非相称です。心臓は身体の左側にしか存在しませんし、腸も対称な形はしていません。(いい感じに使える図が見つけられなかったので理科の教科書を思い出してくださいw)

ということで、我々ヒトは左右で異なる身体の作りをしています。そして、この非相称な身体を作るための仕組みを左右性といいます。

これはヒトに限らず魚や鳥、虫なども様々な左右性を獲得しています。

左右性の仕組み

左右性を決めるメカニズムは生命が誕生してから身体が形成されるまでの胚発生の段階で起こります。胚はまだ脳や心臓などの器官がまだできていない、細胞の集まりのことです。

見かけ上はただの小さな細胞の群衆ですが、何回も細胞分裂を繰り返すことによってその細胞が将来どの器官に分化するかが決定していきます。これを運命決定と呼びます。

器官の形成には遺伝子の転写調節が上手くなされていきます。ゲノム上から適切な遺伝子を適切な量だけ読み取り、タンパク質を合成することによって細胞から器官へ分化しています。

ここまでは、高校生物の内容ですが、もう少し踏み込んでいきます。

遺伝子の役割は器官を形作るだけにはとどまりません。細胞内の様々な化学合成経路に関与してダイナミックな環境に対応するものや、それこそ胚発生に関与して様々な運命決定を決めるものまであります。遺伝子が他の遺伝子に影響を及ぼす・与えるような膨大な遺伝子ネットワークが形成されています。

即ち、左右性を破る機構の大元は遺伝子です。有名な左右性に関する遺伝子としてNodal, Lefty1, Lefty2などがあります。これらの遺伝子発現量は胚発生の早い時期から左右軸で異なる分布をとり、以降の運命決定において、遺伝子転写調節に関わることで左右性を生み出しています。

左右性を破る動き

ここまで読むと、今度はどのように遺伝子発現量の分布が変わっていくかが気になります。そして、これは最近まではよく分かっていませんでしたが、ヒトに近い生物(ここではウニなどの棘皮動物を含む新口動物とします)に関するものは分かってきました。

ここで鍵となるのが繊毛(厳密には一次繊毛)です。繊毛は細胞から一本だだけ生えている短い毛です。この毛が外部情報からのシグナルを受け取ったり、自身が動くことで水流を生み出して胚に配向性を生み出します。

この配向性によって遺伝子発現量にも勾配が生まれ、左右性の破れや運命決定を起こしていきます。

ということで、うろ覚えw分子遺伝学について書いていきました。スケール感は目に見えない、とてもとても小さいところですが、このような生命の神秘によって私たちの身体は始まり、成長し、日々過ごしているのです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

記事を読んでいただきありがとうございました。いただきましたサポートは自己研鑽のために活用し、さらに良質な記事を執筆するために使います。のんびり更新ですが、多くの方に役立つコンテンツを書いていきますのでよろしくお願いいたします。