#65 懐かしさで胸がギュッとなった話/及川恵子
おばあちゃぁぁあぁぁあんん…!!!
父方の祖父母は私が幼稚園に入園する前には他界していて、
母方の祖父母も私が二十歳になる頃に相次いで亡くなりました。
大人になってから、「ああ、おじいちゃんおばあちゃんとあんなこともこんなことも話してみたかったな」と時折思い出しては、その度に切ない気持ちになります。(あえておじいちゃんおばあちゃんと書かせて)
特に大好きだったのが、母方のおばあちゃん。
見た目から優しさが溢れ出しているような人で、いつも穏やか。
野菜を育てるのが得意で、料理も上手。
港町で生まれ育ちあまり外の世界を知らないながら、それでも小さな幸せを一つひとつ大切にして生きていたような人でした。
そういえば、小学生だった私にイカの捌き方を教えてくれたのもおばあちゃんだったなあ。
それからずっと、私はイカを捌くのが得意です。
そんなおばあちゃんから、一度だけ手紙をもらったことがありました。
それは中学校の修学旅行で買った人形焼を送ったことへのお礼の手紙。
しかしそこに書かれていたのは誤字脱字のオンパレードで、私はその時初めておばあちゃんが読み書きが得意ではないことを知りました。
でもその文字には、グチャグチャなりにとても熱があったんです。
封筒の表面に書かれた「恵子さまへ」の文字も、
自分のことを「ば様」と呼ぶ文字も、
「お天道さまはどこへやら。作物が思いやられます」と、自分が育てている野菜の出来を心配する文字も、
暖かくてすごく愛おしかった。
今でもあの手紙を見返すたびに、
その文字を目にするたびに、
すごく懐かしくて暖かい気持ちになる。
そして、“ああ、また会いたいなあ”という気持ちになる。
海から歩いて30秒で到着するあの家で、またおばあちゃんに出迎えて欲しくなる。
そして泣けてくる。
毎日ダメダメで、グダグダで、ヘラヘラしてばかりの私のこと、おばあちゃんからどんなふうに見えているのかなあ。
また近いうちにお墓参りに行くか…。
及川恵子