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#48 あれが足りない

得る筋肉、去る筋肉

私には、2つの筋肉が足りません。
ひとつは、私の体をつくる筋肉。
そしてもうひとつは、私という人間をつくる“らしさ”としての筋肉。

まずひとつめ。
文字通りの「筋肉」。
「私って、マッスル皆無じゃん…」と思った数ヶ月前。
その日から、細々とヨガ&筋トレを続けています。
始めたばかりの頃はどんなトレーニングでも「はい!もう無理!」とばかり言っていたのに、そのうち「つらい…」「くるしい…」の先に「楽しい!」が待っていることに気が付くんですよね。

そこからはもうなんかやみつきになってしまって。
ここ最近はなんだかお尻も少しずつ育ってきたような気がして、「よくやったねえ」と愛でております。
とはいえ、理想の体にはまだまだ、まだまだまだまだ程遠いのですがね。

そして、もうひとつの筋肉。
それは、人間力や私らしさ、生きてきた証拠としての筋肉です。

このことを考えるきっかけをくれたのは、南海キャンディーズ・山里亮太さんがバーテンダーを務めるオンライン上の会員制BAR「BAR赤眼鏡」で、作家の西加奈子さんがゲストに出ていたときの配信です。
(ちなみにこの会員制BARにハリウッドザコシショウがゲストで出ていたのを見たあとには「天才の在り方」について考え続けました)

私は山ちゃんのラジオをよく聞くのですが、蒼井優さんと結婚して以降、山ちゃんは「結婚が、芸人としての身を滅ぼすのではないか」といつも不安に思っているんですよ。
「妬み嫉みを言うことが自分の持ち味なのに、幸せを知ってしまうことで手札を失ってしまうのではないか」ともね。

そんなうだうだしている山ちゃんに、西加奈子さんはなんて言ったと思います?
「山ちゃんは充分に幸せである上に、妬み嫉みを言う力も衰えてないよ。ゴリゴリの筋肉を持ってるよ」
って言ってあげたんですよ。
目の前の人の現在を、全肯定。
しかも、「今まで蓄えてきた笑いのスキル、いわゆるあなただけの筋肉はまったくもって落ちてなどいないんだぞ」という力強い言葉で。

西加奈子さんのお人柄もあってか、なんだかその言葉がすごくあたたかくてね。
そこでふと、「はて、私の筋肉はなんだろう」と考えたんです。

もちろんここで言う筋肉というのは、人が羨むような素晴らしいスキルや見た目や、知能、さらには過去の栄光などを指すわけではないはず。
例えば最近の私は、年齢を重ねるにつれて虚栄や見栄から遠く離れることができたり、嫌なことを嫌だと言えるようになる、という変化があって、「これが40歳になる前触れかあ」とその過程にわくわくしている。
要は、自分に素直になる筋肉が発達してきているんです。

これが20代の頃なら、“自分を着飾る筋肉”が私の体にまとわりついていたんですよ。
それこそ、西加奈子さんが大好きな棚橋弘至選手のようにね。
あ、「相手が私をどう思うか」に囚われてしまう筋肉もあったかもしれない。
かつての私にはこうした硬くて分厚い、やっかいな筋肉に全身が覆われていたような気がします。

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でも、この先の私はどんな筋肉を育てていこうかな。
そして、どんな筋肉が似合う女になれるかな。
できることなら、私の周囲にいる人たちに優しい気遣いができる筋肉を身に付けたい。
それが、今の私に足りない部分なので。

どんな体になるか。どんな私らしさを持つか。
体と心の筋トレを、これからも続けていくつもりです。

及川恵子

※追伸
私は西加奈子さんのことを、世界一ショートヘアーと笑顔が似合う女性だと思っています。見てこの笑顔、本当にかわいい。
ちなみに一番好きな作品は「白いしるし」です。

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