見出し画像

#67 私の地元のいいところ/及川恵子

40年目にしてわかることがある

転勤族の親の元で育った私にとって、地元とは一体どこを指せばよいのでしょう。
生まれた場所なのか、最も長く居た場所なのか、それとも今いる場所なのか。
私なりの答えは、「全部」です。
生まれた気仙沼も、最も長く過ごした石巻も、現在生活をしている仙台も、私の地元。(あとは郡山も。開成山公園大好き)
すなわち宮城の港町のほとんどは私の地元。太平洋は私の庭です。

それでも特に思い入れが大きい場所は「気仙沼」です。
生まれ故郷という大切な場所であり、ずっと大嫌いだった場所。
20歳前後に一時期気仙沼で過ごしたことがあったのですが、当時暗中模索な日々を送っていたこともあり、「こんな街さっさと出て行きたい」と思いながら生活をしていました。おもしろいと思える場所も、かわいい服が買える場所もほとんどない。当時は仙台まで行くにはバスと新幹線を乗り継いでいくしかなかったし。気仙沼が陸の孤島だった当時はとにかく都会が恋しかった。

しかしながらつい先日気仙沼に行った時、この景色を見て「美しい街だな」と思ったのです。やっと、思えたのです。

画像1

これは、安波山という市街地近くにある山から街の景色を撮影したもの。
この景色を見た私は、内湾から太平洋へと続く海の流れも、岸壁に連なる漁船の姿も、漁港の上空を飛び回るカモメも、震災前からずいぶんと変わってしまった街の姿も、すべて「あ、綺麗だな」とスッと思えるようになっていました。

40歳を目前に感受性が変わったのか、やっとその美しさを受け止められる余裕が生まれたのか、私の目が節穴ではなくなったのか。
どうしてあれだけ受け入れられなかったものをここにきてすんなりと受け入れられるようになったのか今はまだわかりませんが、ただただ海と空と山と島がつくる景色が本当に美しかった。陽が暮れかけた時間帯ではあったけど、海と空の青色が強くてハッとしました。

私の地元の気仙沼は、景色もきれいで魚は抜群においしい。
人は少々気難しい人が多いけど(「おかえりモネ」でもそんな部分がすごく丁寧に描かれていた気がする)、それだってまた味わいのひとつ。

これからは、「気仙沼は何よりこの美しい景色がいいところだ」といろんな人に言えそうです。
コロナが落ち着いたら、ぜひ気仙沼に行きましょう。おいしいお寿司を食べましょう。フカヒレ寿司もいいですね。昔ながらの喫茶店でおいしいイチゴパフェも食べましょう。気仙沼の端っこにある、水平線が見渡せる絶景だってご案内します。

及川恵子