#61 秋の幸せ/及川恵子
ねえもっとよく見せて
街を歩く人の、お洒落な服を眺めるのがとても好きです。
私には絶対に着こなせない服を着ている人のお洒落も、
自分の体型によく似合う服をわかっている人のお洒落も、
若い時にしか着れないような服を着ている人のお洒落も、
年を重ねたからこそ似合う色を知っている人のお洒落も
全部好き。
帽子があまり似合わない私にとっては、
ベレー帽やらニット帽をかわいく、そしてかっこよく自分のものにしている人を眺めるのも好きです。
じっと見るわけにもいかず、移動しながら横目でチラリと見たり、すれ違いざまに心の中で(かわいいいぃいぃい〜!!!)と叫ぶくらいだけども、
それでも私にとって、秋にしかないお洒落を眺めるのは何より幸せな時間なのです。
だけど何より幸せが極まるのは、
夏が戻ってきたような暑い日にも関わらず、全身を秋服でかわいくキメた女性を見ること。
早く着たいもんね、そのかわいいタートルネックのニット。
早く履いてみたいもんね、シンプルだけど形のきれいなブーツ。
かわいい柄のカーディガンも厚手のコートも暖色を用いたチェック柄のスカートも早く着たいし、穿きたいもんね。
わかるわかる…。
私の部屋にも、出番を待っているスカートやらフーディーやらニットやらがあるもの。
だからこそ、暑さに耐えてまでニットに身を包む女性の姿を見ては「ああお洒落最高お洒落って愛おしい」という気持ちがついつい高まってしまいます。
「好きな服を着て街を歩く」
当たり前のようなことだけど、どうして秋のお洒落はこんなに楽しいんだろう。
特に、最近なんだか何にも楽しさを見出せない私はお洒落を眺めることだけが救いなのかもしれません。
とはいえまだまだ気軽に街に出れないのが悔しいところですが。
及川恵子