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w/Jo(2)

季節は変わって、冬。

雪国に住んでいるジョウに会いに行くために、新しくマフラーを買った。コートも買った。ブーツも買った。東京ではあまり必要ない、雪国用のブーツは裏に滑り止めの金属がついていて、なんだかごつい見た目だ。

そんな、雪国装備バッチリの状態で向かい、ジョウとの待ち合わせの場所には少し早く着いた。待ち合わせは、待っている時間すら愛おしいからできる限り自分が相手より早く着きたいと思ってしまう。

どこにでもあるチェーン店の、ドーナツ屋さんの前で待ってるねとLINEを送り、呼吸を整える。

ここに来て、「彼と今から会うんだ」という現実にしっかりと目を向けなきゃいけなくなって、緊張やら興奮やらで心臓がバクバクし始めた。

「久しぶり」

聞きなれた声の方に顔をやると、ジョウが立っていた。大好きな笑顔だ

「ほんとに来てくれるとは思わなかったよ!」と、恐らく嘘のない、迷惑そうな顔をせずに言ってくれたのが嬉しかった。内心、案内するよ、だなんて実は社交辞令なのではないかとも思っていたからだ。

インドアを公言する彼に少々不安を抱いていたが、その不安はすぐに消し去ることができた。

彼はまず、自分の大学を案内してくれた。私の通っている大学は、所謂トウキョウの都心にある、ビル型の大学なので彼の大学のような、広大なキャンパスには胸が踊った。

普段の勉強の様子や、学校生活の様子を丁寧に説明してくれ、時には(部外者が入っていいのかはよくわからないが)自分の学部の建物にも入れてくれて話をしてくれた。

そのあとは駅ビルで美味しい地元のスイーツを食べながら、会えない時間を埋めるように沢山沢山、話をした。

雪国の大学を選んだけど、雪は別に好きじゃないし、寒いのも得意じゃない。ただ、一人暮らしをしてみたかった。そんな理由を聞いて、なんか彼らしいなと思った。

そして最後に、夜景を見に行った。山の上から見るのだが、そこに行くまでには電車+バス+ロープウェイに乗って行かねばならない。

少し長い道中、目的地までの揺れるバスの中で、彼を好きだなぁと思った話がひとつある。

秋に家に泊めた時、映画の話をジョウとした。お互いの、好きな映画についてその理由やあらすじについて話したのだ。それを彼は覚えていたらしく、私と会うまでの間に見ていたと言うのだ。

私は「悪の教典」をおすすめしていた。彼はその映画について真面目に感想を語り、私が好きな映画だと言った理由が分かったよと言ってくれた。

内心、彼がオススメしていた「キングスマン」を見ていないことに罪悪感を抱きながらも「なんでここまでしてくれるんだろう」「ちゃんと話を覚えててくれたんだ」と嬉しくなった。

夜景は、日本三大夜景だか、日本新三大夜景に選ばれているだけあってすごく綺麗だった。鼻水がちょちょぎれるほど寒かったのも事実ではある。その時、山頂は-13℃だったのだ。2月の北国の、なんと寒いことか。

「今日会うと思ったら楽しみで仕方なくて、それですごく緊張した」なんてジョウが言うもんだから、もしかして告白でもされちゃうのかと思った。インテリ東大生もびっくりの、恋愛処女っぷりである。

周りにはカップルばかり、そもそも二人で夜景を見に行くなんていうのは、男友達とすることじゃない。無論、私の自論だが。

私に魅力がないからだろうか。それとも、セクシュアリティが違うとか、そういうのだろうか。今日じゃなかった、それだけなのか。

寒い寒い山頂で、告白をされることは無かった。

下山したあと、彼はワインを買ってくれた。今日の記念に、と。

辛口の白ワイン。これはどういう意味なのか、いや、意味なんてないんだろう、ジョウのことだ。あげたかったから、ワインをあげる。そういう男であることは、もう十分に分かっていた。

そのあとは私が泊まるホテルの前まで送ってくれた。最後は本当にさみしかった。好きな人でも友達でも、遊んだあとのお別れはいつもさみしい、いつまでも慣れない。

「また会おうね」と、嘘か本当かわからない言葉を交わして、ジョウとのデートが終わった。

#あの恋 #終わった恋の忘れ方

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